第597話 玄武の呼び名

「~~~~っ! す、凄いの! アレックスの棒から出るのを飲んだら一気に魔力が回復する上に美味しいし、皆と同じように下からドクンって出されると、ふわぁーってなるし……アレックスのこれは、凄いんだねー!」


 はしゃぐ玄武の声が響いたところで、突然ソフィの大きな声が響き渡る。


「――っ! ま、マスター! い、イきましたっ!」

「えっ!? ソフィ!?」

「この第一魔族領を浮かべている魔力の核の許へ、私の魔力が到達したんです。これで、後は……いきますっ!」


 ソフィの声と共に、落下速度がゆるやかになり、静かに止まった。


「マスター! 成功ですっ! ただ、これまで以上に魔力が必要となります。今後は、私への魔力補給を最低でも一日一回はお願い致します」

「わ、わかった。ソフィ、ありがとう」

「いえ、マスターの為なら、これくらい何て事はありません……が、あくまでこの第一魔族領の維持が精一杯です。この魔族領を移動させたりは出来ないので、ご容赦願います」

「いや、それだけでも十分だよ」


 と思ったのだが、宙に浮かせる為の魔力の消費が凄いのであれば、ゆっくり着地させてはどうか? と話したのだが、ソフィからはあまり色よくない答えが返ってきた。


「マスター。この魔族領は、相当広いです。北の大陸に、この魔族領を降ろせる程の空き地など無いかと」

「くっ……そうか。では、海の上に降ろすというのは?」

「幸い今は海の上の様ですが、海水に浸けてしまったら、この魔族領が崩壊したりしないかが心配です」


 なるほど。すぐに陸地が壊れたりする事はないにせよ、いずれこの地が崩壊……というのは避けたいな。

 ひとまずソフィとしては、この地にしかいない珍しい魔物や植物があるので、暫くは宙に浮かせたままにしたいという話しだった。

 まぁシェイリーが転移の魔法陣を展開してくれたし、第四魔族領と一瞬で行き来が出来るようになったのは良い事かもしれないな。

 とはいえ、この魔法陣から第四魔族領へ行けてしまうので、魔法陣を守る担当を決めなければならないが。


「そうだ。とりあえず、無事に玄武を助ける事が出来たし、ちょっとシェイリーに話してくるよ」

「シェイリー? あー、青龍っていう名前だと堅苦しいから、呼び易くしたって誰かが教えてくれたよねー。ねぇねぇ、私にも付けてよー! そういう名前ー!」

「え? そ、そうだな。確かシェイリーはニナが付けてくれたから……じゃあ、ノーラ。玄武に呼びやすい名前を付けてくれないか?」


 俺としては玄武のままで良いと思うのだが……本人が希望しているので、ノーラに頼んでみると、


「んーと……じゃあ、ランランで!」

「ち、ちなみに、ノーラはどうして、その名前にしたんだ?」

「え? 何となくだよ?」


 玄武という名前に、少しも掛かっていない名前が出てきた。

 シェイリーは、青龍という呼び名から何となくそれっぽ……くもないが、ランランは良いのか?


「わーい! じゃあ、今日から私はランランって呼んでねー!」

「あ、あぁ。わかったよ。玄……ランラン」


 まぁ本人が気に入っているなら、良いか。

 先程話した通りで、一旦シェイリーの許へ行き、玄武が無事である事を伝える。


「……という訳で、玄武は無事に助ける事が出来た」

「そうか、良かった。アレックスよ、本当にありがとう。願わくば、力を回復させるためにも、我と同じく玄武にも好物を……と思ったが、既に玄武と交わっておったか。流石はアレックス、手が早いな」

「いや、ちょっと言い方……いやまぁ否定は出来ないんだが」

「そうだな。一応、服は着ておるが、見ればわかるぞ。分身が玄武を含む他の女性たちと楽しんでおる事が」


 シェイリーがニヤニヤと笑みを浮かべながら近付いて来るが、皆が分身の解除を許してくれなかったんだよ。

 特にソフィが、もっと魔力補給が必要だと言うし。

 で、今は結衣が頑張ってくれているのだが……シェイリーにはバレていたか。


「ほれ、アレックスよ。玄武や、他の者から得たスキルについて教えてやるから、早く我にもするのだ」


 結局こうなるのか……と思いつつ、分身たちが自動行動で第一魔族領で頑張る中、俺もシェイリーと結衣を満足させる事になってしまった。

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