第598話 玄武から得たスキル

「ふぉぉぉ~~~~っ! 久々に本物のアレックスを味あわせてもらったぞ。やはり、凄いな」

「当然です! ご主人様なのですから! あ、次は結衣にもお願いします」


 シェイリーが満足そうにペタンと座り込むと、ここぞとばかりに結衣が抱きついてくる。

 俺としては、そろそろ第一魔族領をどうしていくか、ソフィと相談したいのだが。


「あー、結構な時間が経つし、そろそろ第一魔族領側も止めてこようと思うのだが」

「そうだな。我も久々に堪能したし、そろそろお開きとするか」

「うぅ。こ、こんな状態で終わられたら、生殺しですが……し、仕方ありません」


 そう言いながら、結衣が動きを加速させ……ギリギリまで粘るようだ。


「ふっふっふ。すまん、冗談だ。とりあえず、アレックスは結衣の相手をしながらで良いから聞くのだ。玄武の事だ」

「――! 話してくれ」

「今、離すのは酷いですー! もう少し……もう少しだけっ!」


 いや、俺はシェイリーと真面目な話をしているのだが……って、そのシェイリーがこの状況を楽しんでいないか?

 とりあえず、話を続けて欲しいのだが。


「こほん。真面目な話だ。我ら四神獣のうち、アレックスは半分にあたる二体、我と玄武を解放してくれた。本当に感謝する」

「それについては、俺も力を貸してもらって居るからな」

「~~~~っ! ふゎぁぁぁーっ!」


 改めて考えると、真面目な話をするのに、この状況で良いのだろうか。

 ……あ、シェイリーはそのまま続けるようで、全く気にしていないらしい。

 結衣は余韻を楽しむというか、ピクピクと身体を震わせながらも、まだ続けるようだが。


「出来る事ならば、アレックスには白虎と朱雀も助けてやって欲しいのだ」

「その二人もシェイリーや玄武の仲間なんだな? だったら、助けない訳にはいかないだろう」

「すまないな。だが白虎も朱雀も、何処にいるのか我には分からぬのだ。玄武の位置が今までわからなかった事から、白虎と朱雀も、玄武と同様に封印されておるのだろう」


 確かに玄武は塔の中で、変な鎖に縛られて力を奪われていたからな。

 白虎や朱雀も同じ状態という事は十分あり得る話だ。


「アレックスよ。玄武の居る地から、南西へ向かうのだ」

「第一魔族領から南西へ? どうしてだ?」

「我も正確な位置は知らぬが、西の大陸に白虎の棲む山があったはずなのだ」

「西の大陸……それなら、わざわざ北の大陸から南西に向かわなくても、ここから真っすぐ西へ向かえば良いのではないのか?」

「……アレックス。今まであえて教えなかった事があるのだが……東西南北の四つの大陸の中心、つまりこの東の大陸から真っすぐ西へ向かうと何があると思う?」


 ここから西? 何だろうか。

 海がある事は間違いないと思うのだが。


「教えてやろう。魔王の城がある」

「魔王だって!?」

「うむ。我ら神獣は、四方向から魔王城を攻め……破れた。良いか? 先ずは四神獣を解放するのだ。我らの力を使う事が出来るアレックスであれば、白虎や朱雀の力を借り、魔王に勝つ事が出来るかもしれぬ」

「白虎と朱雀の力を……」

「そうだ。だから、それまでは決して四大陸の中心に行ってはならぬ。わかったな?」


 シェイリーの言葉に深々と頷き……俺の腕の中で結衣がビクンと大きく震えながら、背をのけ反らす。

 しまった。シェイリーの話に集中し過ぎて、結衣の事をすっかり忘れていた。

 ずっと出し続けているが、大丈夫だろうか。


「……ところで、どうして先に白虎なんだ? ここから南へ行けば、朱雀が居そうな気がするのだが」

「朱雀はちょっと性格が……げふんげふん。我は先に白虎の力を借りるべきだと思うぞ。棲家が山という事まで分かっておるし」

「なるほど。確かに、玄武の情報を得るのは大変だったからな」


 まぁ数十年前に、まさか空に昇っていたなんて分かる訳無いが。

 山というヒントがあるだけでも、探し易さは格段に違う気がする。

 それに、西大陸にこのシェイリーの魔法陣が展開出来たら、皆を家に帰す為の大きな前進になりそうだしな。


「わかった。では、俺はこれから西の大陸を目指す事にしよう」

「うむ。頼んだぞ……あ、忘れかけておったが、玄武から得たスキルについて説明しよう」

「あぁ、頼むよ。玄武からは凄い力を得た気がするんだ」

「玄武は我より年上だが、見た目も中身も幼いというのに、もう手を出しているとは……まぁそれでこそアレックスだが」


 いや、俺から手を出した訳ではなく、玄武が……いや、言い訳は止めておくか。


「よく聞くのだ! アレックスが玄武から貰ったスキル。それは……不老長寿(中)だ! 何と、寿命が五倍! 不老長寿(弱)と合わせて十倍になるから……エルフと同じくらいの寿命だな」

「えぇ……何か凄い力を得た気がしたのに」

「いや、凄いではないか。寿命が五倍だぞ!? まぁ玄武は亀だから、然るべき力な気もするが」


 ちなみに、玄武はシェイリーよりも遥かに寿命が長いが故に、永く生きていてもまだ幼少期らしく、幼い言動は素なのだとか。


「なので、玄武の年齢を人間換算すると、まだ、な……」

「じゃあ、シェイリー! そろそろ俺は戻るよ!」

「ご、ご主人様っ! 急に走られると~~~~っ!」


 何となく、玄武の年齢は知らない方が良いと思い、走って魔法陣へ入る事にした。

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