第99話 垣間見える人形たちの生活

「メイリンが作った二十組の人形たち四十体と、最初に産まれた四体の子供。それから、今日新たに産まれた二十体の子供で、合計六十四体か」

「はい。何故、一斉に子供が出来たのかは、未だ分かっておりません。あと、生まれた二十人は、全員女の子のようです」


 子供が産まれたのは、いずれもメイリンが作った人形であり、先に産まれていた四人の子供たちは産んでいないようだ。

 ……こちらは見た目が五歳児とかだからな。流石にそういう事はしていないのだろう。


「一先ず、子供が産まれた事は喜ばしい事だろう。あと、最初の四組は子供が二人になって、四人家族だ。あの小さな家では狭いだろうし、ノーラに頼んで、少し大きめの家を作ってもらおう」


 早速ノーラに依頼すると共に、ゴレイムへ木材を運ぶように指示する。

 それから何体かの俺の人形とリディアに協力してもらい、東エリアをさらに拡張して、家と畑を作るスペースを確保していく。

 何気に、街を目指す南方面よりも、東方面の方が遥かに伸びてしまっているのだが……まぁ仕方がないか。

 そんな事を考えつつ、一先ず拡張を終えた所で、


「あれっくすパパー! あそんでーっ!」


 モニカを幼くした女の子が抱きついてきた。

 その直後、


「あーっ! ダメなんだよー! おーさまは、いそがしいし、えらい人なのに!」

「えー! おねーちゃん、どうしてー? わたしたちのパパなのにー」

「ダメなものはダメなのー」


 同じくモニカを幼くした女の子が……って、こっちは確か一組目の人形たちの子、アニーだったな。

 お姉ちゃんと呼んでいるし、抱きついてきた子は、一組目の人形たちの所に産まれた、二人目の子供か。

 でも人形だからか、姉妹と言いながらも年齢は同じようだ。

 ただ、一卵性双生児のように瓜二つという訳ではなく、微妙に違いがある。

 産まれてきたのも全員女の子だったし、魔法人形の出産は不思議がいっぱいだな。


「えっと、聞きたい事が幾つかあるんだけど、おーさまって……あ、王様か!」

「うん。めいりんママが、あれっくすパパのコトは、おーさまってよびなさいって」


 いや、確かにメイリンは言いそうだけど、王様って呼ばれるのは違和感があり過ぎる。

 とりあえず、やる事は沢山あるが、偉い人というのは払拭したい。

 東エリアの拡張は終わったし、こんなに小さな子が遊んで欲しいと言ってきているので、少しだけ遊んであげる事にした。


「よし。じゃあ、遊ぼうか。何して遊ぶ?」

「え? いいの!? じゃあ、おままごとー!」

「お、おぅ……お、お父さん役で良いのかな?」


 しまった。

 妹ちゃんが言い出したのは、まさかのおままごとだ。

 相手は五歳くらいの女の子だし、俺の想像していた、鬼ごっこや隠れんぼにはならないのか。

 とりあえず、昔エリーとおままごとをした記憶はあるから、それを思い出すんだっ!


「た、ただいまー!」


 とりあえず、開拓作業を終えて家に帰ってきた父親……という事で、地面に胡座をかいて座ると、お母さん役の妹ちゃんが抱きついて来て、


「アナターっ! おかえりなしゃい!」


 思いっきりキスされたんだが。

 流石に唇と唇を重ねるだけで、それ以上はないが、アニーたちと暮らすアレスとモニーが普段からこんな感じなのだろう。

 子供を見れば、親の生活が分かってしまうものなんだな。

 相手は五歳くらいの幼女だし、微笑ましく思いながら付き合っていると、


「おまたせー。きょうのごはんは、しまいどんよー。おいしく、たべてねー」


 姉の方がトレーを運んで来る振りをする。

 ……すまん。妹がお母さん役じゃなかったのか? 姉は何役なんだ? 姉もお母さん役をやりたくなったという事か?

 あと、しまいどんって何だ? どういう料理なんだ?

 ハテナマークが頭の上に沢山並びつつも、相手は子供だからと、とりあえず父親役を続けていると、


「アナタ。こどもたちも、ねむったみたいだし、そろそろ、ふーふのじかんよね」

「ふーふの? ……夫婦の時間!?」

「もう、アナタったら。分かってるくせにぃ」


 そう言って、幼い姉妹が同時に俺の太ももの上に座り、左右から抱きついてくる。

 おい、アレスにモニー。

 娘に色々見られているぞっ!

 そういう事をするなとは言わないが、ちゃんと子供が寝てから始めてくれっ!

 とりあえず、どうやってこの状況から抜け出そうかと考えていたら、


「じゃあボクも! お兄ちゃん、抱っこー!」


 抱きつく人形たちを見て、ノーラもやってきたけど、もしかしたら、この幼女たちの方が色々と知ってしまっているのでは?

 ノーラは俺の背後から抱きついて来たけど、人形たちは変な所を触っているし……


「父上。昨日の続きを……」

「あの大きさ……挿れてみたい」


 って、サクラの人形たちっ!?

 どこから現れたんだよっ!


 ちなみに、幼女たちとのおままごとをずっとメイリンが見ていたらしく、サクラの人形が俺のを触りだした所で説教が始まり、その場は解散となった。

 サクラの人形は、まだ怒られているけど。

 ……昨日、既にサクラの人形たちの手で出されてしまった事は、黙っておく事にしよう。

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