第197話 リザードマンの村交易責任者ツバキ
「お待たせしましたー! 今日の昼食は、卵とミルクを使ったパスタです」
色々あって、いつもより遅めの昼食となったが、これまでには無いクリーミーな美味しいパスタをリディアが作ってくれた。
……まぁその、朝にシェイリーの所でしたエリーがリディアたちに混ざらなければ、ここまで遅くはならなかったのだが、過ぎた話なので黙っておこう。
「さて、昼からはニナたちが作ってくれた鉄器をリザードマンの所へ運ぶから……ソフィ。前に荷物を運んでくれた、小型のゴーレム――シーサーをお願い出来るか?」
「は、はい……畏まりました」
「ん? どうしたんだ、ソフィ? 何か心配事か?」
ソフィにシーサーを使わせて欲しいと言うと、何故か微妙な表情を浮かべられてしまった。
理由は分からないが、困っている様に思える。
「い、いえ、何でもありません」
「いや、どう見ても何かありそうなんだが。遠慮せずに言ってくれ」
「では……シーサーは改良して、私やマスター以外の指示も聞くようにしておりますので、出来れば私は残って魔法装置の開発を続けたいなと」
「なるほど。それくらいなら、別に構わないと思うが」
「ですが、昨晩何故かマスターの魔力供給がされておらず、今朝も魔力をいただいておりませんので、開発もそうですが、シーサーを動かす魔力も足りなくなるかと」
あ……そうだ。
いつもは一晩中ソフィと分身が自動行動で動き続けているが、ボルシチの事があって、途中で分身を解除したな。
それから、シェイリーの所でも、先程の寝室でもソフィは参加していないから……別途ソフィにアレを飲ませないといけないのか。
しかし、そんな事をしていると、リザードマンの所へ行く時間が無くなってしまう。
とはいえ、しないと荷物を運ぶシーサーも動かないし……仕方が無いか。
「わかった。魔力は供給するが……リザードマンの所へ行く準備は別途進めておきたいな」
一先ず、荷車への積み込みを誰かに任せようかと考えていると、ネーヴが口を開く。
「アレックス。リザードマンの村と言えば、確かこの国の隣で、友好的な村だと言って居たな」
「あぁ、その通りだが、どうかしたのか?」
「いや、荷物の運搬に私が鍛えた守備隊を使ってはどうかと思ってな」
「ふむ……確かに、リザードマンの村までは一本道で迷う事は無いし、現れる魔物も強くない。だが、流石に人形たちだけという訳には……」
運搬と護衛という意味では、全く申し分が無い。
ただ何かあった時に、人形しか居ないというのがマズいので、リザードマン交易責任者とでも言えば良いだろうか。
そういう役割の者に同行して欲しいというのが本音だ。それも、出来れば戦闘職の者に。
なので、候補としてはエリー、モニカ、サクラ、ツバキ、ユーディット、ミオ辺りだろうか。
戦闘職と言う意味では、ビビアナも候補に入るが、流石に来たばかりで俺たちの代表をしてくれと言われても困るだろうし、今回は除外で。
そして何かあった際には、とにかく逃げる事を優先して欲しいので、機動力で考えると、サクラ、ツバキ、ユーディットか。
この三人の中から選ぼうと、相談しようとしたのだが、サクラとツバキが何やら話をしていて、
「アレックス様。では私が、守備隊と共にリザードマンの村への交易を担当致しましょう」
ツバキが自ら立候補してくれた。
「ツバキ……良いのか?」
「はい。アレックス様のお役に立てるのであれば、喜んで! それに、この村で手に入る布は、リザードマンの村から交易で得ていると聞きました。ですので、衣服を担当する者として、自ら布を選ばせていただければと」
「それはもちろん構わない。そして、非常に助かる。ありがとう」
「いえ、お気になさらず。ただし、一つだけお願いがありまして……」
そう言って、ツバキが俺の傍に寄って来て、耳打ちしてくる。
「その、私が交易に行き不在にしている間は、どうかサクラ姉をより可愛がっていただけないかと」
「……あー、感覚同期スキルか」
「その通りです。それならば、リザードマンの村に泊まる事になったとしても、アレックス様に抱いていただけるのと同じ感覚になれますし」
なるほど、サクラとツバキが話していたのは、これか。
まぁそんな頻繁に泊まる事になる訳ではないだろうけどな。
一先ずツバキの要望を了承し、ネーヴとツバキとメイリンとで選抜した六体の人形たちと共に、ツバキがリザードマンとの交易を担当する事に。
ちなみに、俺の人形が三体と、エリー、サクラ、ミオの人形が一体ずつという内訳だ。
あと、ツバキはリザードマンの村へ行った事がないので、初回はサクラが同行する事で話がまとまった。
「マスター。それでは、早く……」
話が終わった途端、ソフィにねだられ……って、どうしてサクラとミオが混ざろうとしているんだよっ!
あと、今日は異様にハイペースなんだが。
皆、それぞれの作業は大丈夫なのか?
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