第196話 新しいスキルの確認
「お兄さーん! リザードマンさんたちから依頼されてた物が、概ね出来上がったよー!」
シェイリーの所から帰って来ると、少ししてニナが抱きついてきた。
「ありがとう。じゃあ、午後にでも持って行こうか……って、ニナ? どうしたんだ?」
「……えっ!? あれ? 鍛冶を頑張り過ぎたのかな? お兄さんに抱きしめられているのが凄く心地良くて……」
抱きついてきたニナを受け止めただけなのだが、そのニナが離れようとしない。
というか、寝て……はないか。俺の胸に顔をすりすり押し付けている。
近くで作物を採っていた、ユーディットの人形ユーリがその様子を見て、俺の所へ飛んで来た。
「パパー! ユーリも、だっこー!」
ニナが少し横にずれてくれたので、その隣にユーリが抱きついて来たのだが……あれ? 寝た!?
羽を小さく畳んだユーリを左腕で支え、ウトウトしているニナを右手で支えていると、
「アレックス様は流石ですね。拙者、一番下の妹を寝かしつけようとして、かなり苦戦した事を覚えておりますが、子供を一瞬で寝かしつけられるとは」
サクラが感心しているけど、寝かしつけというか、ボルシチからもらったスキルの効果じゃないのか?
俺は何もしていないぞ?
「に、ニナは子供じゃないもん! お兄さんのお嫁さん……すぅ」
「あらあらー。おにーさんは、もう子供が居たのねぇ。育児経験もあるみたいだし、私との子供が産まれるのが楽しみだわぁ」
「そ、その前に私だもん! アレックスの子供は私が最初に生むんだからー!」
ニナも寝そう……というか、寝てないか?
あと、エリーはボルシチに何の張り合いをしているんだよ。
一先ず、二人が眠ってしまったけど、どちらも小柄なのでそのまま家に連れて行き、寝室に寝かせると、
「おっ、アレックスはん。今からするんやったらウチも混ぜて……って、ニナはんはともかく、ユーリちゃんは未だ早いんとちゃう? アレックスはんのは大き過ぎるから、入らへんと思うんやけど」
レイが近寄って来て、物凄い勘違いをされる。
いや、寝室へ来ただけで、そういう意味にとられても……って、仕方ない気もしてきたが。
とりあえず、ボルシチのスキルの確認をしておこうかな。
「レイ。悪いんだが、少し実験に付き合って欲しい」
「ん? えーけど、ここで?」
「あぁ。何も考えずに、俺に抱きついてくれないか?」
「アレックスはん。そんな実験とか、一々理由を作らんでも、ウチの事は抱きたい時に抱いてくれて、えーんやで?」
そう言いながら、レイが抱きついてきたので、ニナの時と同じように受け止める。
暫くそのままでいると、レイが変な所を触りだした。
「レイ……何をしているんだ?」
「何って、もちろんナニやで? あ、ウチとニナはんだけやとアレックスはんを満足させられへんから、フィーネはんを呼ぼか」
「えーっと、レイは眠くなったりはしないのか?」
「全然眠くないけど? 強いていうなら、実験の疲れが消えた……かな?」
ふむ。抱きつかれたという条件は同じだが、ニナとユーリ、そしてレイとで差があるのは……年齢か?
しかし、ニナは見た目こそ子供だけど、ドワーフだと成人だしな。
「あ、アレックスさん。こちらに居られたんですね。今日の昼食は、いただいたミルクを使ったパスタに……って、ズルいですっ! 私も混ぜて下さいっ!」
「違うんだ。これは新たに得たスキルの確認で……」
「アレックスさん。ボルシチさんの母乳を飲まれたのですから、私のも飲んで下さい」
「いや、リディアは出ないだろ? ……って、脱ぐのが早いっ!」
「出るかもしれないじゃないですか。はい、アレックスさん。赤ちゃんみたいに吸って下さいね」
リディアが強引に俺の頭を抱きかかえ、胸を口に押しつけて来る。
「ほな今の内に、ウチは応援を呼んでくるなー」
「レイ……待つんだ」
「アレックスさんは、私の胸に集中してください」
なんていうか、スイッチの入ったリディアは強引だなと思っていると、
「お兄さん。ニナも混ぜて欲しいなー」
いつの間にかニナが起きていて、俺の足下に来ていた。
ユーリは……良かった。よく寝ている。
それから、レイがフィーネとメイリンを連れて来て……わかった。
もう、どうしようもない事はわかったから、せめてすぐそばで寝ているユーリを起こさないよう、静かに頼む。
あと、リディアはそろそろ諦めてくれ……。
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