第347話 エリラドの街に建てるもの

 翌朝。いつものように、ソフィ……ではなく、レヴィアの動きで目が覚める。

 分身たちは、マミやジュリ、ケイトやミーアと共に朝を迎え、俺と同じ動きをする影分身はレナとツキに抱きつかれていた。

 だ、抱きついているだけだよな? 変な事はしていないよな!?

 まぁレナとツキには、そういう事は禁止だと口を酸っぱくして言っているし、あくまでアレの採取だけだろう。


「……あれ? ジュリが一人で寝ているのか? ……じゃあ、分身と数が合わないぞ?」


 周囲を見渡していると、ジュリがスヤスヤと眠っているのを見かけたのだが、分身からは四人の感触が伝わってくる。

 レヴィアは俺の上に居て、影分身は俺と同じく寝ているだけ。

 自動モードの分身が四体居るのに、マミ、ケイト、ミーアの三人には分身が一体ずつしか居ない。

 もう一体の分身は……ん? んん!? 今更だが、知らない感覚が……


「って、ジスレーヌ!? な、何て事を……すまない!」

「ん? アレックスー、もう終わっちゃうのー!?」

「レヴィア、少し待っていてくれ。ジスレーヌ、大丈夫か!?」


 慌てて分身を解除してレヴィアを一旦離すと、分身に支えられていたジスレーヌがうつ伏せに倒れたので、大急ぎで抱きかかえる。


「ジスレーヌ! ≪ミドル・ヒール≫……大丈夫か!?」

「ご主人様ぁ! ……あ、朝!? よくわかんないですけど、凄かったです!」

「ジスレーヌ。本当に申し訳ない」

「どうして、ご主人様は謝られているのですか? ……んっ! 夜中にしていただいた事を、またしてください!」


 抱きかかえたジスレーヌからキスされてしまい……うん。自動行動の分身がした事とはいえ、感覚は俺と共有していた訳だし、責任は取ろう。


「アレックスー! その子ばっかりズルい! レヴィアたんにもー!」

「ん……アレックス。私にもするポン!」

「ご主人様! ジスはご主人様が大好きですー!」


 待たせていたレヴィアや目覚めたマミたちから抱きつかれつつ、全員で水浴びをして身体を綺麗にし、家へ。

 ベッドを見てみると、ジスレーヌを除いた少女たち三人と、ユーリがスヤスヤと眠っていた。

 良かった。暗闇の中で、知らず知らずの内に分身たちと一緒に居たのはジスレーヌだけらしい。

 これから本当に気を付けないと。


「あーっ! お父さん……昨日作っておいた解呪ポーションが空になってるー!」


 この土地はミーアの結界で守られているから、部外者に飲まれる事は有り得なくて……って、ジスレーヌしか居ないよな。


「ジスレーヌ。昨日、このポーションを飲んだのか?」

「あ……ご、ごめんなさい。ぶつかった時に倒れてきたみたいで、しかもそれがジスの口に入ってしまいまして」

「そ、そうか。なら呪いは解けているんだな」


 一応ユーリを起こして確認してもらうと、


「ん-、だいじょうぶー。ジスレーヌちゃんは、のろわれてないよー」


 ちゃんと呪いが解けていたようだ。

 ただ、昨日家に帰した二人の少女と同じで、魅了状態になってしまっている。

 とりあえず、俺から離れれば魅了効果は発動しないはずなのと、責任を取るため、三人の少女とは少し違う立場にしようか。


「ケイト。ジスレーヌは成人だという話だし、ケイトの補佐にしたいんだが、構わないか?」

「はい。私は問題ありませんよー!」


 ケイトは快諾してくれたので、次はジスレーヌへ説明する事に。


「ジスレーヌ。今、この土地にある建物を作ろうとしている。ケイトにこの建物を任せようとしているんだが、ジスレーヌにその補佐を頼めないだろうか」

「ご主人様がそう仰るのでしたら、もちろんやります! ……が、何を作っているのですか?」

「あぁ、ここには孤児院を作ろうと思っていてな。エリラドの街は、東西南北それぞれに街があると聞いている。なので隣接する街を含め、孤児が居たらここで暮らせるようにしてあげたいと思ってな」


 エリラドの街の闇ギルドは潰したが、子供の人身売買が多過ぎるので、まだ孤児が現れそうな気がしている。

 それに、近隣の街はまだ闇ギルドが蔓延っているので、同じく人身売買が行われているかもしれない。

 もちろん両親の許へ帰れるのであれば、それが最善だし、領主などが運営している孤児院があって、そっちに入れるのであれば、それで構わないと思う。

 だが、孤児院に入る事が出来ず、途方に暮れている子供が居たら、生活出来るようにしてあげたいと、闇ギルドで育ったケイトと話して決めた事だ。


「わかりました。ジスに出来る事であれば、何でも協力しますね!」

「あぁ、頼むよ」


 ケイトとジスレーヌに三人の少女たちの事を任せ、俺は東へ――シーナ国の王都へ向けて出発する事にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る