第664話 街へと続く道

「あら、女性ばかりで随分と大所帯だったんですね」

「あー、まぁその、これにはいろいろと訳があって……」

「いえ、わかりますよ。私も村での立場がなければ、貴方について行きたいですから」


 ここまでミオたちを運んでくれたスーサル村の女性たちが、ファビオラを残して自分たちの村へ戻った後、このサイディ村の次期村長だという女性に案内してもらって地下へ降りる。

 ちなみに、この女性が次期村長だと言われているのは、村の統治が世襲制で、母親が現村長だかららしい。

 一人娘のため、幼い頃から次期村長として育てられたそうで、俺より年下なのに、かなりしっかりしていると思う。

 そんな話をしている内に、街の中心にあった階段から地下へ到着した。


「あちらです。この扉の向こう側にある通路を行けば、一本道でラマスの街です」

「ありがとう。助かったよ」

「いえ。ですが、面倒な事が残っておりますので、もう少しお待ちください」


 そう言って、女性が小さく溜息を吐く。

 面倒な事とはなんだろうかと思っていると、女性が扉をノックし……扉の奥から、かなり大きな駱駝耳族の男性が現れた。


「村長のとこの一人娘じゃねーか。どうしたんだ?」

「私の友人にこの通路を使わせてください」

「へぇ。どいつだ? ……あぁん!? 人間族じゃねーか! いや、天使族のガキが居るな。あのガキをくれたら使わせてやるぜ」


 ……その言葉は、ユーリに向けて言っているんだよな?

 とりあえず、殴るか。


「お? 人間族の男……俺とヤる気か? その小さな身体で、何をどうするかは知らねーけどな」

「……ナニは大きくて凄かったですよ? こほん。二人とも止めてください。通行料が必要なのは承知しています。それは私が支払います」

「ん? 通行料を肩代わりするだと? どうして、その男にそこまで肩入れするんだ? ……というか、何か変な事を言わなかったか?」

「この方は私の大切な方ですので。それに、大きいけどナニは変ではないかと。他の方と見比べた事がないので、わかりませんが」


 いやあの……所々で変な話が混じってないか?

 一先ず、どうして通行料が必要なのかと聞くと、この道は目の前に居る男の先祖が作った私道らしい。

 それでも、熱い地上を行くよりかは遥かに良いし、大した金額でもないので、多くの者が利用していたと。

 ところが、この男の代から通行料が高額に値上げされ、この村としても困っているそうだ。


「そういう事だ。だが俺も鬼じゃない。俺が村長の立場になるため、お前が俺と結婚したら、通行料を従来に戻すと言っているだろう」

「お断りします。私はもう、心に決めた方が居ますので」

「……は、はぁっ!? い、いや待て! 今までは、『そんな理由で結婚は出来ない。好きになった人と結婚する』って言っていたじゃないかっ!」

「はい。ですから、好きな人が出来ました。何なら、子供も出来たかもしれません。凄く濃厚で、量も回数も凄かったですし」


 そう言いながら、次期村長の女性が顔を赤らめ、お腹を優しくさする。

 まぁその……結果はどうあれ、やる事はやってしまったので責任は取るが。


「アレックス様。私もきっと子供が出来ているかもです」

「わ、私は種族が違いすぎるから……いやでも、ワンチャンあるかも?」

「ご主人様。もっと子作りしていただきたいです」


 女性の言葉を聞いて、グレイス、ザシャ、モニカが抱きついて来て……次期村長の女性も混ざるのか。

 しかし、目の前の男が無視されたからか、顔を真っ赤にして、身体を震わせて怒っている。

 とりあえず、話を聞いてあげようか。


「よ、よくも俺の女を寝取ったな! ゆ、許さねぇっ!」

「え? 私は貴方の恋人でも何でもありませんが」

「いや、今まで何度もプロポーズしてきただろっ! それなのに……」

「プロポーズ……? 脅迫の間違いですよね?」

「違うっ! そのまま伝えると恥ずかしいから、表現を変えただけだっ! 昔から……十年も前からお前の事を愛していたのにっ!」

「あの……十年前って、私六歳ですよ? そして貴方は、十年前でも二十五歳くらいですよね?」

「だから、十年待ったではないかっ! そこの人間族の男……決闘だっ!」


 えーっと……何がどうなっているんだ?

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