第750話 事情説明
「アレックス様ぁ! 必ず、また来てくださいねぇー!」
「……そ、そうだな。責任は取ろう」
「キャー! アレックス様ぁぁぁっ!」
カフェの奥の部屋……というか、部屋に収まりきらず、通路まで大変な事になってしまったが、ニナや白虎の事が解決したら戻って来ると約束して出発する事に。
三十人程いたドワーフの女性たちは、全員ニナと同じくらいの背丈だったけど、皆成人という事で、最悪の事態ではなかったので良しとしよう。
……いや、良しとして良いかも怪しいが。
「お兄さん。この国の王様は、この大通りの一番奥に居るんだってー」
「そうなのか?」
「うん。さっき、沢山ドワーフの人たちが来てたでしょ。お兄さんの順番待ちをしている人に聞いておいたんだよー」
無邪気なニナに何と言って良いかわからず、再び子供の姿になって、教えてもらった通りの場所へ行くと、国の入り口にあったような門があった。
「たぶん、ここじゃないかなー? 入って来た時と同じように触ってみるねー」
そう言って、ニナが門に触れる。
だが、入り口の門はニナが触れただけで勝手に開いたのに、ここは何も反応が無い。
「うーん。入口とは違って、手で開けるのかな? えい……って、開かない?」
「よし。ニナは下がってくれ。ここは俺が……」
「待って待って。私もこの場所へ来るのは初めてだけど、入り口の門はドワーフの魔力に反応するって言ったでしょ? ここは、たぶん許可された者が触れたら開く仕組みだと思うの」
ガブリエラによると別の場所にも似たような門があり、さっき教えてもらったような仕組みなのだとか。
ドワーフは自分たちの作った物に自信があるので、この門を門番代わりにしていて、兵士などを置いていないらしい。
あと、ドワーフは皆掘ったり作ったりするのが好きなので、誰も門番の仕事をしたがらないというのもあるそうだが。
「じゃあ、どうやったら入れるのかなー?」
ニナが門に触れながら首を傾げていると、
「ドワーフの少女と人間族に……獣人族でしょうか? 何の御用ですか?」
門から聞いた事のない女性の声が聞こえてきた。
「今の……この門から声が聞こえたような気がするよー?」
「私たちが……ドワーフが作った細工の一つですね。ちょっと離れた場所に居るのですが、こちらの声をその門から出していて、同様にそちらの声をこちらまで届けているんです」
「へぇー! 凄ーい! ニナにも作れるかなー?」
「これは魔力ではなく、単純に鉄を使った細工なので、頑張れば作れると思いますよ……って、あの特に御用がなければ、ここは立ち入り禁止なので引き返していただきたいのですが」
ニナが門と会話するという、ちょっとシュールな様子を眺めていると、話がどんどん逸れてしまい、ニナが慌てて本題に入る。
「あっ! 待って! 違うの! ニナたちは、ドワーフの道を使わせて欲しくて来たのー!」
「なるほど。ドワーフの道は、その名の通りドワーフ族であれば誰でも使えますが、一緒に居られる他種族の方も……という事ですよね?」
「うん! ちょっと事情があって……」
「わかりました。ではお話を伺いますので、中へお入りください」
女性の声と共に、門が勝手に開きだしたので、言われた通りにその中へ進んで行く。
少し進むと開けた場所に出て、大きな机と椅子が並んでいた。
「ここは、さっきのカフェとは違って木の机や椅子なんだな」
「ご主人様。王が居るような場所ですから、外から購入した使い易いものを使っているのではないかと。先程のカフェにあった石の椅子は固定されて動かせない上に、ドワーフ族のサイズに合わせられていたので、私やザシャ殿には少々窮屈でした」
「乳女よ。それはお主の尻がデカすぎるだけだと思うのじゃ」
モニカの言葉を聞いて、ミオがからかい……止めようとしたところで、奥から小柄なドワーフ族の女性が現れた。
といっても、ニナと同じくらいの背丈なので、今の俺よりは大きいのだが。
「お待たせしました。先程、門では姿をお見せせずに失礼致しました」
「いえ、こちらこそ突然押しかけてしまい、すみません。こちらのニナ……ドワーフ族の少女が話した通りで、ドワーフの道を使わせて欲しいんです」
「はい。要件は伺っております。しかしながら、先程お伝えした通り基本的にドワーフ族にしか使えないものですので、事情をご説明いただけますか? その内容次第では許可出来るかもしれません」
ドワーフ族の女性に真っすぐ見つめられながら、ニナと魔族領の話をする事になった。
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