第751話 対女性秘密兵器
少し説明が長くなる……と言うと、ドワーフの女性がお茶を淹れてくれるそうなので、戻って来たところで改めて説明する。
「……という訳で、俺のスキルでニナを救出し、西大陸までやって来たんです」
「なるほど。ニナさんを故郷へ帰す為に、ドワーフの道を使わせて欲しいと」
「えぇ。その通りです」
ドワーフの道を使用する為に、正直にニナや俺たちの事を話し、ニナもその通りだと同意する。
実際、その通りなので、これ以上話せる事はないのだが、ドワーフの女性が暫し考え……口を開く。
「今のお話であれば、やはりドワーフの道の利用は許可出来ませんね」
「えっ!? 何故ですか?」
「アレックスさんのお話では、ニナさんを故郷へ帰したいだけですよね? それならば、ニナさんだけがドワーフの道を使用すれば良い……違いますか? ドワーフの道は、ニナさんのみであれば許可なく自由に利用出来ます」
「いや、しかしニナはこれまでずっと一緒に旅をしてきた訳だし、ここで別行動というのは……」
「しかし、見た所ニナさんは成人ですよね? もっと幼い子供ならばまだしも、一人で行動出来ないというのは、どうかと」
俺からすればニナも目の前の女性も幼いのだが……ニナが成人だというのはその通りだ。
どうする? 白虎の……第二魔族領の話もするか?
だが、最初から話を出しておけば良かったが、断られてから魔族領の話を出しても、取ってつけたような感じで、信じて貰えないような気がする。
「待って! ニナはお兄さんをパパとママに紹介したいの! だから、一緒に家へ帰りたいんだよー!」
「紹介? 命の恩人だからですか。ですが、それならば先ずニナさんがご両親の元へ行き、ご両親と共にここへ戻ってくれば良いのでは?」
「えぇー! でも、パパとママからすると、義理の息子になる訳だし、家に招きたいと思うんだよねー」
「……義理の息子? どういう意味ですか?」
「ん? お兄さんは、ニナの命の恩人であると同時に、旦那さんなんだー! ニナ、お兄さんと結婚するんだー!」
ニナがそう言って俺に抱きつくと、目の前の女性が固まり……暫くしてから、絞り出すようにして話しだす。
「……あの。そちらのアレックスさんは、子供だと思うのですが」
「あー、これは年齢を変えるスキルを使っているんです。俺の身長ではドワーフの通路は低すぎて、普通に歩けないので」
「この天井よりも背が高い人間族の男性と、ニナさんが結婚……ですか」
「その通りで、ニナは俺の妻です」
「……なるほど。そういう趣味の方なのですね」
ドワーフの女性が小さく溜息を吐いたが、どういう趣味なのだろうか。
最後の言葉の意味はよく分からなかったが、何とかして認めてもらわなくては。
部屋の中を沈黙が支配したところで、ドワーフの女性がお茶に手を伸ばし、コクリと喉が鳴る音が響く。
女性はすました顔で、これ以上何も出てこないのなら、お帰りいただけますか? ……と、無言のまま目で訴えてくる。
仕方がない。ダメ元で白虎の話をするか。
「あの、もう一つ……」
「おとん、もう大丈夫やで」
「レミ? 一体何の話だ?」
俺が口を開くと、何故かレミに止められてしまった。
一体何が大丈夫なのだろうか。
目の前の女性は、先程と何ら変わらず無表情で……あれ? 何か様子が変だな。
頬が朱に染まり、薄っすらと汗ばんでいるように見える。
俺が炎無効化のスキルを持っているから、実は温度が上がった事に気付けていないだけか? だが、ニナやグレイスは何も変わった様子はない。
つまり、この女性だけが何か……って、小刻みに震えながら、トロンとした目で俺を見つめている?
「……って、まさか! レミ……」
「も、もうダメですっ! ニナさんの旦那さんだと聞いたばかりなのに……お、お願いします! わ、私を抱きしめてくださいませんか!?」
「ふっふっふ。面倒やから、この人のお茶にちょーっとだけアレを入れてん。いやー、流石おとんやわー。効果てきめんやねー」
やっぱりかぁぁぁっ!
いや、レミ! それって一服盛ってるじゃないかっ!
「あ、そういう事ー? お兄さん。いつもの事だし、ニナは構わないよー!」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
「なるほど。ご主人様! では、私も先程のカフェの続きを!」
レミがやらかして、女性の態度が一変し……当たり前のようにモニカたちも混ざって来てしまった。
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