第771話 セオリツヒメの許へ
「セオリツヒメ……か。怒られた上に、神様なんだよな。不安しか無いが、力を借りる事が出来れば、白虎救出の可能性が高まるか」
ミオ曰く、凄い力の持ち主らしい。
ただ、シェイリーやランランたち神獣とは、神の種類が違うそうで、どちらが上とか下とかというのは無いそうだ。
「それは逆に言うと、シェイリーから頼んでもらったりは出来ないという事か」
「その通りなのじゃ。むしろ、シェイリーもランランもセオリツヒメの事を知らぬのではないか?」
「おそらく、知らないと思いますわ。私は海に関する力があるので、それに近しい川の神、セオリツヒメの事を知っていただけですし。とはいえ、知っているだけであって、私からセオリツヒメに頼める訳でもありませんが」
なるほど。天后からもダメか。
となると、自分で行って依頼するしかないな。
「わかった。では、セオリツヒメの所へ言って、直談判してくるよ」
「ふむ。では、我も行こう。勿論、セオリツヒメに力及ばぬが、何かあった時にアレックスを護るのじゃ」
「ミオ、ありがとう。だが、普通にセオリツヒメの所へ行こうとすると、かなり時間が掛かってしまう。だから、今回は俺一人で行って来るよ」
「む? 一人で……とは? どうやってセオリツヒメの所まで行くのじゃ?」
「いや、偶然ではあるのだが、モニカの転移スキルの行き先が、人魚族の村なんだ」
以前に第四魔族領から、このアマゾネスの村へ来ようとしてモニカに転移スキルで運んでもらったら、何故かラヴィニアのところに出た事がある。
あれから、モニカが転移スキルを使って、移動先を変更していなければ、すぐにセオリツヒメのところへ行けるはずだ。
「モニカ、ちょっと来てくれ」
「は、はいっ! す、少しお待ちを……レミ殿の薬の効果がぶり返してきたのか、聖水が止まらないんですぅぅぅっ!」
モニカを呼ぶと、聖水を垂れ流しながら変な走り方で近付いて来る。
どうしよう。見なかった事にして、レヴィアに連れて行ってもらおうか。
「アレックスよ。あの状態の乳女を連れて行って大丈夫なのか?」
「……だ、大丈夫だと思いたい」
「ご主人様ー! お待たせしましたぁっ! 二種類の聖水が流れ出ておりますが、私はいつでもオッケーですぅっ!」
そう言って、モニカがブリッジを……聖水を撒き散らすなぁぁぁっ!
「にーに。もーちょっと……もーちょっとだから、まだらめなのっ!」
「……アレックス。次はレヴィアたんの番」
「あなた。ツェツィの妹を作る為には、もっと回数が必要よー」
ディアナ、レヴィア、ナターリエがいろいろ言ってくるが、ひとまずモニカには普通に座って待ってもらい、ディアナが満足したところで、
「レヴィア。すまないが、三人で一巡したし、ひとまず終了だ」
「……やだ」
「いや、そうも言っていられない状況なんだ。わかってくれ」
「……じゃあ、分身で手を打つ。暫く消しちゃダメ」
「えぇ……し、暫くだぞ?」
大丈夫だろうか。
これ、またセオリツヒメに怒られる気がするんだが。
とはいえ、レヴィアが納得してくれないので、暫くは分身を消さないと約束し、モニカへ……いや、垂れ流しは困るな。
という訳で、モニカに後ろを向かせ、背後から……
「おほぉっ! ご主人様の……素敵です」
「それより、モニカ。転移スキルを頼む」
「え? 何故ですか?」
あ、モニカに説明するのを忘れてた。
「と、とりあえず頼むよ」
「はぁ……≪転移≫」
モニカを抱きかかえ……前回同様に水中へ。
どうやら無事に人魚族の村へ着いたようだ。
あとは、セオリツヒメにどうやって出会うかだな。
これまではセオリツヒメが不意にやって来たから、こちらから会う方法はわからない。
「あなたー! また来てくれたのねー!」
「きゃーっ! アレックス様が、またいらしてくださいましたーっ!」
「ま、待たれよ! 今、ご主人様は私と繋がっていて……まだ私の番なのだ! と、とりあえずご主人様。水中から出ましょう」
そう言って、モニカが水中で手を動かすが、器用に脚で俺をホールドしており、離す気がなさそうなんだが。
こんな状態で、どうやって泳ぐのかと思っていると、
「こ、これはっ!」
「モニカ、どうしたんだ!?」
「挿れていただきながら、腰を使うと、思っていたより速く泳げます!」
本気でどうでもよい報告がきた。
うん。とりあえず陸地へ上がろう。
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