第139話 睡眠の異常耐性を持つソフィ

 翌朝。いつものようにフィーネに起こされ、色々と済ませて皆を起こしに行くと、


「……どういう状況だったんだ?」


 広い寝室の中で皆が眠る中、何故か半透明のクリスタル? みたいな物で、首から下を固められたまま眠るツバキが居た。

 フィーネと顔を見合わせていると、唯一起きていたソフィが口を開く。


「マスター、おはようございます。昨晩、マスターたちがお風呂を上がられて暫くした後、こちらの女性が外からこの家の中を伺って居りました。ところが、皆様がいつものように突然眠りだした際に、この女性も眠ってしまったようで、外に落ちていたのを拘束致しました」


 なるほど。風呂上がりに、フィーネがスキルで皆を眠らせた際に、部屋のすぐ傍に居たツバキもスキルの効果範囲に居て眠ってしまったと。

 で、ソフィがこのクリスタルみたいな物で拘束して、部屋に置いておいたという訳か。


「……ん? という事は、皆が眠った時に、ソフィは起きていたという事か」

「はい、そうです」


 という事は、ソフィはフィーネの……サキュバスのスキルが効かない?

 以前にスキルで皆が寝たからと、フィーネと思いっきりしてしまった事があるのだが……もしかしてソフィに見られていた?


「ソフィ。前に……」

「はい、何でしょうか?」

「……いや、すまない。何でもない」


 あ、危ない。俺とフィーネがしていた事を聞いてどうするんだ。

 しかも、眠らせるスキルの事を話せば、フィーネがサキュバスの血を引いているとバレてしまうかもしれないし、余計な事は言わない方が良いだろう。

 一先ず、ソフィが起きている事には触れず、話題を逸らす。


「この半透明のものは?」

「私が開発しておいた、対象を無力化するためのマジックアイテムです。実は空気を通すので、麻痺や睡眠といった効果が効かない相手でも、安全に動きを封じる事が出来ます」


 なるほど。ソフィが作ったマジックアイテムか。

 まぁ既にツバキは眠っているのだが、念には念を……という事だろう。


「マスター。完全に無力化に成功していた事と、夜にフィーネ様とお二人で何かされているのを邪魔しない方が良いかと思い、報告をしていなかったのですが……」

「いや、問題無い。大丈夫だ。ありがとう」


 えーっと、これはつまり、今までずっとソフィはフィーネのスキルで眠っておらず、俺とフィーネがしている事がバレて……いや、でもソフィがその行為の意味するところを理解していなければセーフなはず!

 そう、セーフ! ギリギリ……ギリギリセーフなんだっ! ……たぶん。

 とりあえず、フィーネにこっそりスキルを使ってもらって皆を起こすと、


「んー、アレックス。おはよ……って、あれ? サクラさんの妹さんのツバキさん……何してるの?」


 先ずはエリーがツバキの存在に気付く。


「……えっ!? な、何なのっ!? 身体が動かないっ! こ、これも貴様の妖術なのかっ!?」

「ほぉ。おそらく、夜中に忍び込んだものの、この中の誰かに見つかり、動きを封じられたといったところか? ふふ、ツバキの考えている事は全て分かるぞ。拙者の子供たちが房中術を実践している所を見て、アレックス様に使ってみたくなったのだろう?」

「は? ちょっとサクラ姉、何を言って……」

「拙者は姉だからな。ツバキの考えは手に取るように分かるのだ。あぁ、アレックス様の大きなアレで貫かれたら、一体どんな気持ちになるのだろう。そう考えたら居ても立っても居られず、ここへ戻って来たのだろう?」

「違っ! 私は、その男の寝首を掻いてやろうと……」

「さぁ、アレックス様。ツバキは完全にアレックス様のアレに夢中です。拙者が保証するので、この不可思議な拘束を解いてくださいませ。きっとツバキ自ら、アレックス様のアレを求めるはずですっ!」

「サクラ姉! 話を聞いてってばっ!」


 サクラが一方的に喋っているが、とりあえずツバキが可哀想なので、ソフィに目配せをして、拘束を解いてもらう。

 その直後、


「わ、私は本当に、その男を倒すつもりで来たのにーっ! サクラ姉の……バカー!」


 ツバキが叫びながら、逃げて行った。


「あ、あれ? おかしい。昨晩メイリン様から伺った話では、子供たちの行為を見ていたと言うし、ツバキもしたくなったからアレックス様の所へ夜這いに来たと思ったのに」

「メイリン。すまないが、人形たちの誰かから、ツバキちゃんに朝食を差し入れしてやってくれ」

「畏まりました。昨晩ご指示いただいた、作物についても、併せて渡しておきます」


 一先ずツバキの事はメイリンと人形たちに任せ、昨日モニカから頼まれた事もあって、俺たちはリザードマンの村へ行く事にした。

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