第824話 メリナ商会
「モニカ、ミオ! この女性たちを頼む!」
「わかった! 貴女たち、こちらへ!」
「大丈夫とは思うが、万が一の時は任せるのじゃ」
ドワーフの女性たちを店に入れ、ブレアに加勢する。
「≪ディボーション≫」
「これは……?」
「パラディンの防御スキルだ。受けたダメージは俺が防ぐ! そいつらを倒すぞ!」
「何と……助かる! クケケェッ! 皆殺しだっ!」
殺すのは流石にどうかと思うが、ただやっていた事が事なので、積極的に止めるつもりはない。
ただ、然るべき場所で裁かれるべきだとは思うが。
「クケケ……行くぞっ! ≪ホーリー・クロス≫」
「おぉ、やはりクルセイダーはパラディンと近しいジョブのようだな。同じ攻撃スキルが使えるのか」
「クケッ! やはりアレックスは最高のバディのようだ! 何故か攻撃を受けても痛みを感じないし、私たちは最高のパートナーだっ!」
そう言って、ブレアが襲い掛かって来る人攫いが持つ剣を吹き飛ばす。
しかし、クルセイダーは攻撃重視のジョブだからか、防御を省みずに突っ込んでいるようだ。
パラディンの防御スキルでブレアのダメージを肩代わりしているから、俺の身体に小さな傷が幾つも付き……超回復スキルですぐに治っていく。
「くっ! 私も光魔法を得たから、アレックス殿と同じ攻撃スキルが……無い!?」
後ろで何故かモニカが悲しそうにしているが、別に同じスキルが使えなくても良いと思うのだが。
「ふっふっふ。我はアレックスと同じ結界スキルが使えるのじゃ。というか、我のスキルをアレックスに譲ったのじゃ」
「えへへ。アレックス様の空間収納スキルは私のスキルですー」
「ボクも、お兄ちゃんに木登りスキルをあげたよー! 一緒ー!」
いや、あの……誰からどんなスキルをもらうかは、俺が決めている訳ではないし、モニカからも冷気耐性スキルを貰っているのだが。
「えー! マリもアレックスにスキルをプレゼントするー! アレックスの身体が、マリの触手みたいに伸びると良いのかなー?」
「アレックス様は、既に身体の一部が物凄く伸びるというか、大きくなるので……というか、私もアレックス様にスキルを差し上げたいのですが、どうすれば良いんですかー?」
後ろでマリーナとフョークラが羨ましそうにしているが、既に二人からもスキルをもらっているはずなんだ。
まだどんなスキルなのかを聞いていないだけで。
……っと、そんな事を考える前に、人攫いだな。
逃げようとする人攫いはブレアが追撃し、ドワーフの少女たちを取り戻そうと店に向かって来る奴らは俺が倒す。
そんな分担で戦っていると、あっという間に人攫いたちを倒す事が出来た。
「ブレア。よく、あの馬車が人攫いの馬車だというのが分かったな」
「クケケェッ! 正義の勘が働いたのだ」
「え……勘!?」
「クックック。アレックスよ……今のは冗談だ。あの馬車にメリナ商会のマークが描かれていたから、とりあえず斬ってみたら、当たりだったのだ」
つまり、確証などがあった訳ではなく、運が良かっただけ……という事なのか!?
確かに道中でメリナ商会が怪しいという話をブレアにしたが、それだけで馬車を破壊するのは……ちょっと危ない気がするな。
今回は良かったけどさ。
「クケケケ。この街の騎士団を呼んでくる。悪いが、こいつらの事を頼む」
そう言ってブレアがこの場を去ると、ロープを巻かれた人攫いたちが凄み始める。
「チッ……まさか、こんな所に十字架のブレアがいるとはな」
「……やはりブレアは有名なのか」
「お前は……騎士には見えないが、ブレアに雇われた荷物持ちか何かか?」
「まぁそんなところだ」
もちろん荷物持ちなどではないが、こいつらへ正直に答える必要もないと流していると、
「なら取引だ。俺たちを逃がしてくれたら、報復対象から除外してやろう。どうだ?」
「報復? 投獄されるお前たちが、どうやって報復なんてする気だ?」
「ははっ、お前たちは別の国から来たのか? 言っておくが、この国の騎士や兵士の半分は我らメリナ商会の手の内だ。言っておくが、投獄されたところですぐに出て来るさ」
「だったら、取引も不要だろう? 投獄されても本当に出て来られるというなら」
「……わかった。報復対象から外す事に加え、金もやろう。出るには出られるが、金が掛かるし、何より時間を無駄にする。俺たちはブレアが逃がした奴隷たちを追いかけなきゃならんのだよ」
なるほど。
テュレアの街でもそうだったが、この国はかなりマズい状態のようだ。
「そういう事なら……」
「ふふっ、長い物には巻かれろ……早くロープを切ってくれ」
「とりあえず、殴らせてもらう! パラディンの名に懸けて、俺はお前たちメリナ商会を潰す!」
「はぁっ!? お前は一体何を……がはぁっ!」
当然取引などに応じる事なく、ブレアが連れて来た騎士たちに引き渡しておいた。
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