第679話 残念スキル?

 シェイリーやフィーネたちの要望に応えて分身たちに頑張ってもらい、俺は俺でメイリンやユーディットたちと、ゆっくり話をした。

 ……いやまぁ話だけではなかったけどさ。

 ちなみに、皆が居る街や村が増えてしまったので、メイリンがもっと人形が必要だろうと言って、ニナやイネスに、ステラや俺の人形を何体か作り出してくれた。

 ただ残念な事に、逢瀬スキルで来ているから、連れて行く事が出来ないんだよな。

 特に、今は船が壊れてしまった事もあってニナの力を借りたいし、イネスについては言わずもがなだ。

 ……と、これまでの事を思い返しつつ、フィーネとテレーゼ以外は満足させたので、シェイリーにスキルについて聞く事に。


「うむむ……アレックスよ。ひとまず、分かったスキルだけでも伝えておこう」

「シェイリー、すまない。助かるよ」


 逢瀬スキルの状態で見てもらったので、シェイリーにもハッキリとは分からないらしいが、地上地形効果無効スキルというのがあるのだとか。


「端的に言うと、歩き難い悪路を普通に歩けるスキルだな」

「確かに、途中から砂漠の上を普通に歩けるようになったな」

「同様に、ぬかるみや氷の上も普通に歩けるであろう」


 これは、タイミング的にディアナから貰ったスキルのようだ。

 あくまで地上での話という事で、流石に元から歩けない場所……水の上などを歩けるようになる訳では無いらしい。


「他に見えたのは、土壁生成スキルだな」

「え……土壁?」

「うむ。砂や土があるところで、壁を作れるようだ」

「……俺は既に石の壁を作れるぞ?」

「それを我に言われても困るのだが。我が付与した訳ではないからな」


 それはそうか。

 シェイリーに文句を言っても仕方ないし、スキルを得るのに、俺が持っているスキルを考慮してくれる訳がないよな。

 駱駝耳族や羚羊耳族が土で出来た家に住んで居たから、どちらかの種族の女性たちから得られたのだろう。


「まぁ、防御と考えれば石の壁の下位互換に思えるが、意外に違う使い方が出来るかも知れぬぞ? ……たぶん」

「まぁ何か使い所があれば、使ってみるよ」


 それから、幾つかのスキルについて教えてもらったが、他に移動関連のスキルはなく、水に関するスキルもなかった。

 砂漠で大量の水が出せれば、住人たちも助かると思ったのだが、仕方ないか。

 ひとまず、シェイリーにスキルの事を教えてもらえたので、逢瀬スキルを解除して戻ろうと思うのだが、


「あ、アレックス様ぁ。もう少し……もう少しだけお願い致しますぅ」

「私も! これだけじゃ、少な過ぎるっ! あと、十回はお願いっ!」


 フィーネとテレーゼが分身を離そうとしない。

 もちろん、この状態で分身も逢瀬スキルも解除は出来るのだが、二人とシェイリーを除いて、大半の者は満足しているし、どうしたものか。

 俺の本体は本体で、ミオたちが待っているだろうし……


「って、しまった! ユーリやディアナと一緒にいる状態で、逢瀬スキルを使ってしまったんだっ!」


 分身たちがこの状態という事は、勿論意識の無い俺の本体も同じ状態のはず。

 さ、最悪だ!


「すまない。フィーネ、テレーゼ。緊急事態なので、これで終わり……」

「マスター! 魔族領に来ていると聞いて、飛んで来ました。早く魔力補給をお願いします。現在、非常に危険な状態です」

「アレックスー! 来るならちゃんと声を掛けて欲しいんよっ! とりあえず、第一魔族領の警護に戻るから、分身を一体……出来れば数体連れ帰るんよ」


 逢瀬スキルを解除しようとした直前に、第一魔族領に居るはずの、ソフィとヴァレーリエが現れた。

 しかも、ヴァレーリエはともかく、ソフィは今すぐ魔力を……アレを補給しないといけないらしい。

 とはいえ、ユーリとディアナが……くっ、やむを得ない!


「一旦戻ってすぐに来るから、少しだけ待っていて欲しい!」

「えっ!? マスター!? 魔力補給が必要なのは本当なんですっ!」

「アレックスー! ウチとも子作りするんよーっ!」


 一旦分身と逢瀬スキルを解除し、本体へ意識を戻すと、ベッドに寝かされた俺の隣で、ユーリとディアナがスヤスヤと眠っていた。

 おそらく、俺が動かなくなったので、眠ったと思って一緒に寝たのだろう。

 ひとまず、大惨事になっていなくて良かった……と思ったのだが、


「んふぅっ! あ、アレックスさぁぁぁんっ!」

「ファビオラ殿! 今、満足したな? 交代だ」

「ふぅ。やっと我の番なのじゃ。まだ三回目だからな。もっとペースを……」


 ファビオラというか、モニカとミオ……いや、皆列を作って何をしているんだよっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る