第429話 初めてのテイム?
エリーやユーディットたちの妊婦組を優しく満足させ、念の為ステラにも診てもらい……問題なしとの判断を貰った。
一先ず、安心したところで、早速ベイラドへ戻る事にしたのだが、コルネリアが抱きついてくる。
「えっ!? アレックスさん!? 何処かへ行っちゃうの!? そんなのヤダっ! 僕も連れて行って!」
「いや、すぐに帰って来るよ。特にコルネリアはここへ来たばかりで不安だろうしさ」
「うん。僕、アレックスさんと一緒に居たいよ。それに、今まで――奴隷にされていた時は使えなかった、ビーストテイマーの力も試してみたいし」
「そうだな。だけど、大規模な闇ギルドが悪事を働いている国があるんだ。俺たちは、その闇ギルドを潰す為に戦っていてさ。あと少しで、潰せそうなんだよ」
シーナ国の王都ベイラドの闇ギルドはカスミが潰したので、本部だという港町クワラドを潰せば、あとは小さな支部しか残らないはずだ。
「じゃあせめて一回だけ……一回だけテイムに挑戦させて欲しい。アレックスさんが居ない間、テイムした子を訓練しておくから」
うーん。コルネリアは、これまで暮らしてきた場所と全然違う場所に来て、不安なんだろうな。
その上、呼んだ張本人がすぐに居なくなるというのは無責任か。
「お願い。一番近くに居る魔物で良いから」
「じゃあ、少しだけだぞ?」
「うんっ! 僕、頑張るねっ!」
コルネリアの要望を聞くため、二人で宿の外へ。
そのまま一番近い壁に向かい、少しだけ壁を消す。
「うわー、凄い! 物凄く広い場所なんですね! 地平線が見えるー! 僕、初めて見たかも!」
「そうか。それより、魔物が来たぞ。俺が倒してもコルネリアがテイム出来るのか?」
「うーん、どうだろ? 僕が自分で戦えば、とどめをさせる必要はない……というか、とどめを刺しちゃダメで、魔物よりこっちの方が強いぞって示す事が出来たら、テイムが成功するんだ」
なるほど。つまり手加減して攻撃すれば良いんだな。
となると、攻撃スキルは使わない方が良いという事か。
いつも聖属性の攻撃手段ホーリー・クロスを使って倒していたが、スキルを使わずにシャドウ・ウルフを倒す事が出来るだろうか。
まぁ無理そうなら、安全優先ですぐにホーリー・クロスを使おうと思い、向かって来るシャドウ・ウルフに対して剣を構える。
「えっ!? あ、アレックスさん!? 僕、もっと小さくて弱い魔物をイメージしていたんだけど、あの黒い狼みたいな魔物は、ちょっと大きすぎない!?」
「まぁ身体は大きいが、そんなに強い相手ではないよ。とりあえず手加減して戦ってみよう。まぁ倒そうと思えば一撃で倒せるから心配しないでくれ」
「……あ、アレックスさんっ!? き、来たよっ!? お、大きいっ! こ、こんなのが本当に倒せるのっ!?」
コルネリアが俺の背中に隠れて震えているが、先ずは安心させる為にも、一体普通に倒すか。
二体向かって来ているし、一体倒した方が丁度良いだろう。
そう思って、スキルを発動させようとしたところで、
――KUUUUN
俺の目の前にやって来た二体のシャドウ・ウルフが突然地面に寝転がり、腹を見せる。
えーっと、何だこれ? こんなの初めての事態なんだが。
「……あの、アレックスさん。これはどういう事なの?」
「いや、俺が聞きたいくらいなんだが」
「えっと、片方の黒い狼が地面に顔を擦り付けながら近寄ってきて……頭を撫でて欲しそう」
「ん? それはテイムに成功したという事なのか? だが、まだ戦ってすらないのだが」
「そ、そうだよね。でも、これはどう見ても服従……あ、僕じゃなくてアレックスさんに服従している感じだね」
「どうして俺が? 俺はビーストテイマーでは……いや、テイムスキルをもらったんだったな」
テイムが成功したのは良い事なのかもしれないが、まだ剣すら振っていないというのに……何故だ?
とりあえず、コルネリアの言う通りシャドウ・ウルフの頭を撫でると、嬉しそうに尻尾を振っている。
……うん。ウルフというより、犬だな。
コルネリア曰くテイムが成功しているらしいが、壁の内側に入れて、俺が留守の間に何かあっても困る。
そのため、この西の地を更に石の壁で囲い、テイムした魔獣用のスペースに。
このスペースと居住地との間には、俺やコルネリアは通れるが、大きなシャドウ・ウルフは通れないくらいの狭い通路を作っておいた。
「じゃあ、僕はアレックスさんが戻って来るまで、この子たちのお世話をしておくね!」
「……テイムが成功したのは俺という話だったが、良いのか?」
「うん。先ずは魔物に慣れるところから始める事にしたんだー。それに、アレックスさんに服従しているから、その奥さんである僕にも懐いてくれているみたいだもん」
コルネリアは大丈夫だと言って居るが……念の為、後でメイリンに話て俺の人形を警護に付けてもらおうか。
魔族領に新たな一画が出来たところで、モニカにスキルを使ってもらい、ベイラドへ戻る事にした。
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