第911話 久しぶりのアマゾネスの村

「という訳で、一度第四魔族領へ戻ろうと思うんだ」

「うっ……私も行きたい。けど、このアダマンタイトを使った薬……もう少しだけ研究したい。どうしよう……かなり凄い効果が得られそうなのに」


 皆の所へ戻り、ジネットから聞いた話を伝えたところ、フョークラが頭を抱えだした。


「白虎のところには気の力の訓練のため、一応毎日来るつもりだから、すぐに合流出来ると思うぞ」

「そうなんですかっ!? でしたら、今日のところはこちらで薬の研究を続けたいと思います」

「あぁ、わかった。レミ、すまないが宜しく頼む」


 他のメンバーは、俺と共に第四魔族領へ戻るという話になったところで、レミの家に誰かが入ってきた。


「ただいまー。食料を調達……って、アレックス! えぇーっ! 来るなら教えてよー!」

「え? レミは知っていたが……」

「あー、メイリンママ経由でおとんが来るって知る前に、買い出しへ行っていたから……」


 大量の荷物を持ったザシャとシアーシャが買い出しに行っていて、戻って来たらしい。

 二人には白虎の護衛を頼んでいるから、出来るだけ離れないようにと、食料を買いに行く際は出来るだけまとめ買いをしているようだ。


「アレックス、早速しよう!」

「アレックス様。お願い致しますの」

「いや、すまないが今から移動するところなんだ」

「「えぇぇぇぇーっ!?」」


 ザシャとシアーシャが二人揃って叫びだしたが、明日も来ると言って、何とか説得した。

 流石にさっきの今だし、モニカがいる前でするのはダメだろうからな。


「うぐ……アレックス。明日……約束だからね?」

「アレックス様。しっかり身体を磨いて待っておりますの。必ず来ていただきたいですの」

「まぁ、そう言いながらアレックスは別の何かに巻き込まれて、来られなくなる事が多いのじゃがな」


 せっかくザシャとシアーシャを宥めたのに、ミオが余計な事を呟き……更に出発するのに時間が掛かってしまったが、今度こそ第四魔族領へ移動する事に。

 第二魔族領から地上へ上がり、近くの湖へグレイスに船を出してもらうと、まずは天后の力で北大陸にあるアマゾネスの村へ。

 ここにあるシェイリーの魔法陣から第四魔族領へ戻るのだが……


「アレックスさん。おかえりなさい。お待ちしておりました」

「……アレックス、早くする。我慢出来ない」

「アレックスー! 久しぶりに来てくれたんだから、ご飯くらい食べていってよー! もうご飯の準備が出来てるしー」


 転移してすぐに天后とレヴィアに抱きつかれ、メイリンの人形たちから聞いていたからか、トゥーリアが食事の準備が出来ていると言って微笑んでくる。


「今まで、なかなか来られなくてすまない。大掛かりな事件があったんだ」

「えぇ、アレックスさんの事ですから、きっと誰かを助けてきたんですよね?」

「あぁ。いろいろあったが、ひとまず目に見える範囲の者は助けられたと思っている」

「わかっておりますとも。アレックスさん。そんなアレックスさんを労う為にと、トゥーリアさんとルクレツィアさんが、海獺耳族の料理を腕によりをかけて作ってくれましたから」


 天后がトゥーリアたちの用意した料理を食べて欲しいと勧めてくるが、まだ昼食には少し早いという時間だ。

 とはいえ、既に用意してしまっているのであれば、無駄にする訳にもいかないし、せっかく作ってくれたのだから食べないという選択肢はない。


「みんなの分も用意しているから、沢山食べてねー」


 トゥーリアとルクレツィアが呼び掛けていくが、モニカが申し訳なさそうに頭を下げる。


「本当に申し訳ない。実は腹の具合が……」

「母上は朝ごはんを食べ過ぎなのです」

「そういう事なら無理はなさらないでください。休める部屋を用意してあるから、そちらで休んでください」


 モニカたちの話を聞いて、天后がモニカと付き添いのモニーを少し離れた場所へ案内していく。

 その一方で、俺たちはアマゾネスたちの長、サマンサの家へ招かれ、沢山の海鮮料理をいただく事に。


「……アレックス。早く早く」

「アレックスー、美味しそうだねー!」

「そうだな。では、いただこうか」


 何故か当たり前のようにレヴィアが俺の背中に抱きつき、とマリーナが俺の膝の上に乗っているが、それはさておき、早速目の前の料理を食べる。

 少しすると、マリーナのフォークが止まり、俺にもたれかかってきた。


「あれ……アレックス。マリ、身体が……」

「ん!? 確かに、何か変な……あっ!」


 そうだった。

 トゥーリアさんとルクレツィアの……海獺耳族の料理には、精力剤と同じ効果があるんだった!


「……アレックス。早く分身する」

「ふふふ……久しぶりの本気アレックス。いただきまーす!」

「我は程々で良いのじゃ。無意識の鬼畜アレックスに突かれたら、今の我には返って……」


 レヴィアやトゥーリアが俺にしがみついてきて、ミオが何か言いかけたところで……俺は意識を失ってしまった。

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