第912話 離れてくれないレヴィア
「……アレックス。まだダメ。本気を出す」
早めの昼食をいただいたあと、レヴィアの声で意識が戻ったら……大変な事になっていた。
レヴィアを除いて元気なのは、竜人族のオティーリエに、海獺耳族のトゥーリアとルクレツィアくらいだろうか。
村のあちらこちらで女性がぐったり倒れており、その中には天后やジネットも含まれている。
そんな惨劇を、レヴィアに抱きつかれながら窓から眺めていると、
「むっ! ようやくアレックスが正気を取り戻したのじゃ。やっと我らの番なのじゃ」
「そうだね。見ていて羨ましくはあったが、流石にあそこまで激しいと、お腹が心配だからね」
「あ、サマンサ様。あちらに、空いている分身さんがいるので、参りましょう」
ミオと、妊娠しているアマゾネスの二人……サマンサとジェシカが屋敷の奥から現れ、分身を連れて戻っていった。
どうやら、ミオが結界で二人を守ってくれていたようだ。
「……アレックス。まだ続き。レヴィアたんもアレックスの子供欲しい」
「いや、俺たちは第四魔族領へ行かないといけないんだ」
「……じゃあ、このまま分身を消さずに行く。どうせあっちに行ってもこうなる」
いや、そんな事にはならない……と言えない所が辛いのだが、確かに一理ある。
大半のメンバーが気絶していたり、分身から離れてくれなさそうなので、どのみち待つ事になりそうだ。
ならば、早くモニカを助ける為にも……このまま行ってみるか。
「んっ……歩きながらは、ありかも」
「ジネットには申し訳ないが、ついてきてもらうか。ハヤアキツヒメの話になるかもしれないしな」
という訳で、レヴィアにしがみつかれたまま、椅子に腰掛けて気絶しているジネットを抱きかかえて魔法陣へ。
白い光に包まれると、目の前に……幼いティナがいた。
「ティナっ!?」
「アレックスさん! お久しぶりです! メイリンさんの予想では、今夜戻られるはずだという事で、皆さんが何か準備をされていますが……」
「そ、そうか。いろいろあって、あまり時間がなくてね」
「そうなんですね。ですが、一体何処へ行ってらしたんですかっ!? タバサ先輩から何度もアレックスさんをお呼びするように言われたんですよぉー!」
「ティナ、待ってくれ。今は近づいてはダメだ。少しだけ待って欲しい」
冒険者ギルドの見習い職員であるティナは、まだジョブを授かっていない未成年だ。
幸いジネットを抱きかかえているから、ティナにはレヴィアが抱きついているようにしか見えていないはず。
何とかして、このまま変な所を見せずにやり過ごせないだろうか。
「~~~~っ!」
「ん? 青い髪の女の子は大丈夫ですか? よく見れば、そちらの女性もぐったりされていますし」
「そ、そうなんだ。すまないが、ステラを呼んできてくれないだろうか」
「わ、わかりましたっ!」
そう言って、ティナが一生懸命走り出す。
すまない……だがこれは、ティナに変なのを見せないようにする為なんだ。
ひとまず場所を移そう。
俺が第四魔族領へ戻ってきた事が皆に知られるのも時間の問題で、その後の展開をティナに見られる訳にはいかない。
今居るシェイリーの魔法陣から見て、ティナは南へ……妊娠しているエリーたちが過ごしている建物へ向かって行った。
「ここから東に行けばメイリンの人形たちの家で、北はシェイリーが作ってくれた森があるから、伐採作業をしているかもしれないし……一旦西へ行くか」
やはりレヴィアが満足して離れてから来るべきだったと、今更ながらに反省しつつ、ジネットとレヴィアと共に西へ走る。
「――っ!? ~~~~っ!?」
レヴィアが何か叫んでいるような気もするが、とにかくティナに見つからないようにするため、西へ向かうと、
「あれ? ……アレックス様ぁぁぁっ!」
幼い女の子が……小人族のコルネリアがテイムしたシャドウ・ウルフの莉子と美月にご飯を与えていた。
そうか。西エリアはテイムした魔物のエリアにしていたんだったな。
「アレックス様! お久しぶりです! 今夜に来られるというお話でしたが……あっ! レヴィアさんもいるし、僕も混ぜてくれるって事ですね!?」
「コルネリア!? ちょっと待っ……」
「ダメです! だって、全然来てくれなかったもん! その抱えている女の人もレヴィアさんも……もう! 既に溢れるくらいしてもらっているじゃないですかー。二人はこちらの干し草に寝かせて、次は僕の番ですよー!」
いつの間にかレヴィアが満足していて、コルネリアがササッと用意してくれた乾草のベッドに、ジネットと共に寝かせられたのだが……すぐさまコルネリアに抱きつかれてしまった。
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