第910話 ハヤアキツヒメの情報
「ふぁ~~~~! やっぱりアレックスは凄かったアル」
「満足したニャー! というか、腰がガクガクして立てないニャー」
「アレックスさんの、美味しかったです。あと、身体がふわふわします」
白虎やスダマたち、あとジネットも混ざっているが、ひとまず満足したようなので、気の力について聞いてみる。
「気の力? そういうのがある事は知っているけど、使い方は知らないアル」
「え? じゃあ、さっきのは……」
「白虎よ。ちょっと待つのじゃ」
困惑する白虎に、ミオが何か耳打ちし、顔を輝かせる。
「……あっ! そ、そうアル。気は体内で練る事が重要アル。これは、気を使う為の基礎訓練だから、毎日しなければならないアル」
「そうなのか?」
「そ、その通りアル。……そ、それよりアレックス。前に依頼されたアダマンタイトの盾が順調に出来ているアル。加工が難しい金属なので、もう少し日は掛かるけど、忘れずに取りに来て欲しいアル」
「わかった。ありがとう」
やはりミオの言う通り、気の力を身に付けるには、さっきの行為が必要なのか。
とはいえ、自ら参加してくれる者がいれば良いが、なかなか難しいな。
「……という事で頼むのじゃ」
「了解アル」
どうしたものかと考えていると、ミオと白虎が何かを確認していたようで、再び白虎が口を開く。
「こほん。……アレックス、さっきの気の力の話だけど、気の力は体内の精を練らなければならないアル。それには、生命力と身体能力に優れた、獣人系の種族が適してあるアル」
「獣人系の種族と言うと……兎耳族とかか? 確かにあの種族は凄いが……」
「そ、そうアル。だけど、ウチやミオも広い意味では獣人族アル。なので、気の力を習得する為に毎日来るアル。特訓アル!」
うーん。毎日来る必要があるのか。
しかし、またモーガンのような奴が現れた際に、皆を守れるようにしなければ。
「わかった。出来るだけ来るようにしよう」
「わーい! 嬉しいアル!」
「すまないが、特訓に付き合って欲しい」
「もちろんアル! 幾らでも突き合う……というか、突いてもらうアル!」
ひとまず白虎に気の力の訓練を依頼して、皆の所へ戻ろうとしたところで、大事な事を思い出す。
「そうだ。白虎はハヤアキツヒメという神様を知っているだろうか」
「ハヤアキツヒメ? うーん。残念ながら知らないアル」
「そうか。もしも、何か情報があったら教えて欲しい」
「わかったアル。情報を集めておくアル」
モニカを元に戻す鍵が、セオリツヒメと対を成すハヤアキツヒメだという事はわかっているのだが、水に関する場所に居そうだという事以外、何もわかっていない。
新たな情報を得る為にも、各地の水に関する情報を調べないといけない……そう思っていると、意外なところから声が上がる。
「あの、アレックスさん。ハヤアキツヒメって、あの水の神様ですよね?」
「ジネット!? 知っているのか!?」
「はい。といっても、正確な場所までは知らないのですが」
「いや、これまで何の情報もなかったんだ。知っている事があれば教えて欲しい」
「わかりました……と言っても、土竜耳族に伝わる話でしかないのですが、海底に空いた大穴を管理している神様だと聞いています」
海底に空いた大穴か。
セオリツヒメの話でも、水に流した穢れを飲み込んで浄化する神様だと言っていたので、海底の大穴と言われれば、信憑性が高い気がする。
「その穴が海のどの辺りかというのは……」
「流石にそこまではわかりません。ですが土竜耳族が暮らしているのは、東の地中深くだと聞いています。ですので、その辺りに大穴があるのかもしれません」
「なるほど。じゃあ、東大陸へ……第四魔族領へ一度帰ろうか」
エリーやリディアたちにも会いたいし、シェイリーに増えたスキルを確認してもらう必要もある。
その上、モニカも元に戻せるのであれば、是非とも行くべきだろう。
あと、結衣から二体のシャドウ・ウルフの莉子と美月に会って欲しいと言われているし、そろそろネーヴにも会っておかないと、また大変な事になりそうだ……って、ちょっとやる事が多いな。
急いで戻ろうか。
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