第658話 獣人族の神
「アレックスさん。ここが私の家です。どうぞ」
ファビオラが家に招待してくれ、皆で休ませてもらう事に。
ただモニカは、もう少し身体を焼いて日焼けの跡を作ると言って、外で日光浴をしているが。
「ファビオラは魔族領が何処にあるか知らないだろうか」
「魔族領っていうと、魔族に支配されている場所の事ですよね? 噂に聞いた事はありますが、流石に場所までは……」
「そうか。では、大きな街はどちらへ向かえばあるだろうか。情報収集を行いたいのだが」
「大きな街……ですか。何処にあるんだろう? 隣の村なら、道はわかるのですが……」
なるほど。
海から来た訳だし、この村は西大陸の端にあたる。
一先ず隣の村という所へ行き、少しずつ大陸の中心へ向かって行って、大きな街を探す必要があるか。
「ファビオラ。すまないが、その隣村へ案内してもらう事は出来ないだろうか」
「もちろん、大丈夫です! ただその、少しお願いがあるんです」
「何だろうか。俺に出来る事であれば、出来る限り対応させてもらうが」
「で、では、アレックスさんの子供が欲しいですっ!」
そう言って、ファビオラが抱きついて来て……よし、一旦落ち着いてくれ。
……って、脱ぐのが早いっ!
「アレックスよ。この家に結界を張っておいたのじゃ。我らの声が外に漏れる事はないし、外から誰かが訪ねて来る事もないのじゃ」
「アレックス様! 私も混ぜて欲しいですのっ!」
「ここなら闇で覆わなくても良いよな? やっぱりアレックス様の凄いアレが目の前にあるのは見たいんだよな」
ミオもシアーシャも追随が早過ぎるっ!
あと、ザシャは何を言っているんだよっ!
結局、女性陣に押し切られる形になり、分身を出した俺は、隣の部屋にあったテーブルでユーリと遊ぶ事に。
まぁその、ユーリに見えないように、テーブルの下で結衣が頑張っているんだが。
「パパー」
「ん? ど、どうしたんだ? ユーリ」
「おままごとしながら、ときどきビクッてするのは、なーにー?」
「そ、そうか? 気のせいだよ」
「そっかー。あと、イスじゃなくてー、ユーリはゆかにすわりたいよー」
「こ、ここは砂漠の中の村だからな。郷に入りては郷に従えっていう言葉があって、遊ぶ時もその土地の風習や文化に倣った方が良いんだよ」
「んー、むずかしいけど、わかったー!」
そう言って、ユーリがテーブルに並べられた皿に、料理を乗せる真似をする。
テーブルの下に居る結衣を見られないようにする為だが、おままごとも、その地の文化に合わせてみるのも良いと思うんだ……きっと。
それから女性陣を満足させて少しすると、ユーリがウトウトし始めたので、改めて今後の話をする事に。
ただ、体力が有り余っているからなのか、ザシャが俺の所へ来て……いや、眠るユーリを抱っこしているから、そういう事は分身に頼む。
「いや、分身の激しいのも好きなんだけど、この大木のように悠然とそそり立つ貫禄と言うか、私の顔より長い不動のこれにご奉仕するのも好きなんだよ」
ザシャは本当に何を言っているかわからないんだが。
分身を解除するのが早過ぎたか?
いやでも、これ以上すると、全員気を失って話が出来なくなるのが分かっているからな。
まぁ現時点でもザシャとミオしか起きていないんだが。
一先ず、治癒魔法でファビオラを起こし、西大陸の話を聞く事に。
「ファビオラ。魔族領は知らないという話だったが、白虎について何か知っている事はないだろうか」
「白虎様なら勿論知っていますよ。獣人族の神様ですから」
「え? 知っているのか?」
「はい。少なくとも、この大陸に住む獣人族なら知らぬ者は居ないかと」
白虎について聞いてみると、数十年前に他の神獣たちと共に魔王を封印しようとした……という、シェイリーやランランと同じような話が出てきた。
しかも、金属の力を司るという話や、白虎の血を引くと言われている、虎耳族という獣人族が居るという事も。
「どうして白虎に詳しいんだ?」
「どうして……と言われましても、我々の神様ですし、幼い頃から聞かされておりますので」
なるほど。魔族領の話は聞けなかったものの、もしかしたら白虎の居場所は早く見つかるかもしれないな。
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