第260話 行方不明の二人

「ふぅー。アレックスの猛獣モードっていうのは教えてもらえなかったけど、相変わらず凄かったポン! 満足したポン!」

「当然なんよ! アレックスは凄いんよ。……後は、早く子供が欲しいんよ」

「こ、これだけ沢山出されていたら、そのうち出来ると思いますよ。量も凄いですけど、アレックスちゃんのは濃厚ですし」


 マミとヴァレーリエ、それからジュリが意気投合し、二人がウララドの街へ帰って行く。

 とりあえず、全員で身なりを整え……思い出した!


「レイ。本来は先に渡すべきだったが、レナからプレゼントだ。ウララドの街へ残るから、代わりに渡して欲しいと言われてな」

「え!? えぇのん?」

「もちろんだ。レイが作ったマジック・ポーションをレナが交渉して売ってくれた訳だからな。これに関しては、俺は何もしていないし、何よりレナがレイの事を考えながら選んでくれたのだから、貰ってあげた方が良いだろう」

「うんっ! いやー、流石ウチの人形やな。好みがドンピシャやわ。このエメラルドのカットとか、めっちゃ綺麗やん」


 そうか。レナが選んだという事は、幼い頃のレイが選んだというのと同じ事だからな。

 途中で趣味が変わったりする事もあるだろうが、レイはそのままだったようだ。


「早速着けてみよーっと! ……うん、えぇ感じやわ!」

「良かった。レナもきっと喜ぶだろう。それから、そのマジック・ポーションの事なんだが……」

「あ、メイリンはん経由で聞いてるで。とりあえず、主要な材料は変えずに、配合の割合を変えたりとか、他の薬草とかを混ぜて魅了効果を消してみるわ。ただ……うちは、一人で数十本飲んでるけど、何ともないんやけどなー?」

「まぁ向こうは鑑定スキルを使っていたし、間違いないと思う。済まないが、頼む」


 今回でも材料――俺のアレをいつの間にか回収していたレイが、ご機嫌で家へ戻って行く。

 他のメンバーも、それぞれ自分たちの作業へ戻り、俺はメイリンの所へ。


「ほぉ。レナが妾の為にと……うむ。良い娘を持ったのだ」

「そうだな。メイリンに似合う物を……と、一生懸命選んでいたぞ」

「ならば、身につけぬ訳にはいかぬな。……旦那様、どうだろうか」

「あぁ、よく似合っているよ」

「ふふっ、では今夜も可愛がって下さいな」

「そ、そうだな」


 あー、メイリンはさっきのに参加していなかったか。

 ……最近、ウララドの町ではともかく、魔族領ではこういう事しかしていない気がしてきたんだが。

 そんな事を考えつつ、気付いた時には夕食の時間になっていたのだが、


「あれ? レイとメイリンが来ていないな。レイは時々薬飲んで開発に没頭し過ぎて、気付いていない事もあるけど、時間をきっちり守るメイリンは珍しいな」

「では、メイリン様は私が探して参ります」

「レイはニナが呼んで来るねー」


 サクラとニナが、それぞれ二人を呼びに行ってくれたのだが、


「お兄さん! レイが居ないよっ!」


 レイの部屋を見に行ったニナが大慌てで戻って来た。


「メイリン様を探して参ります!」

「私も行くわ。ナズナちゃんも行くわよ」

「は、はいっ!」


 ニナの話を聞き、ツバキたち母娘もすぐさま姿を消す。

 ……いや、ナズナだけはパタパタ走って行ったが。


「何故、レイとメイリンが? ユーディットのように、天使族の村へ行ったりはしないだろうし……」

「あ、あれは、お母さんが悪いんだもん!」

「いや、すまない。ユーディットを責めた訳じゃないんだ。二人が何処へ行ったのかを考えていただけなんだ」

「けど、レイとメイリンが二人で行動するなんて珍しいよね。レイはリディアとよく一緒に居る所は見るんだけどね」

「そうだな。リディアは薬草を生やす事が出来て知識もあるから、レイがよく相談しているが……それにしても、二人が一緒に居なくなるなんて」


 ユーディットの言う通り、二人一緒に行動するというのは考えにくい。

 しかも、メイリンはよく人形たちと一緒に居るが、レイは基本的に自室に居る事が大半で、外にはあまり出ないんだよな。

 とりあえず、人形を呼んで来てもらい、


「お待たせしました。メイリン様に呼び掛けておりますが、返事はありません」


 一瞬でツバキ……じゃない。カスミの人形が現れた。


「そうか。悪いが、引き続きメイリンに呼び掛けながら、捜索を頼む」

「御意」


 そう言って、再び姿を消したのだが……真剣な時のカスミは凄いな。

 速過ぎて目で追う事すら出来なかった。

 それから、俺も捜しに出ようとした所で、


「アレックス様。メイリン様とレイ殿を発見致しました。現在、母と姉が動きを封じておりますが、お二方とも様子がおかしく、来ていただけませんでしょうか」

「わかった。すぐに行く。念の為、ユーディットも来てくれ」

「うん! わかったー!」


 ツバキが報告にやって来た。

 何でも、前に作った未使用の南の休憩所の傍に、二人揃って居たらしい。

 一先ず、俺と同じく治癒魔法が使えるユーディットと共に、急いで向かう事にした。

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