第608話 クリスティーナのスキル?
突然クリスティーナという女性が入って来たかと思うと、服を脱ぎ始めた。
正直言って意味が分からないが、見る訳にも行かず、逃げるようにして風呂場へ行くはめに。
テイムしてしまった全裸の姉妹もついて来てしまい、どうしようかと思っていると、
「アレックス様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
数人の女性が風呂の傍で待っていた。
流石に服を着てくれていて良かったのだが、変な板を持っているし、一体何なのだろうか。
ひとまず、全裸で会話する訳にもいかず、風呂へ入って聞いてみる。
「……その板は何なんだ?」
「はい。我々猫耳族は熱いお風呂が苦手ですので、こうして板でお湯をかき混ぜ、温度を下げる文化があるのです」
「そ、そうか」
「ですから、我々の事は気になさらず、おくつろぎくださいませ」
そう言と、女性たちが手慣れた様子で板を使ってお湯をかき混ぜ始めた。
なるほど。そういう文化であれば、否定する訳にもいかないか。
……俺としては、水魔法や氷魔法を使えば良いと思うのだが、獣人族は基本的に魔法が得意ではないらしいからな。
「ご主人様。お隣、失礼します」
「こ、これはご主人様をお守りする為です。決して、疚しい気持などございません」
姉妹も風呂へ入るのは構わないのだが、何故か俺を挟むようにして入っているのと、やたらと距離が近いのだが。
あと、お湯の中でサワサワと俺の身体を触るのは何故だ!?
周囲に猫耳族の女性たちが居る訳だし、変な事はしない方が良いと思うのだが……これもテイムしてしまった影響なのだろうか。
どうしたものかと考えていると、
「お客様! お世話係のクリスだよ……って、お風呂に入ってる! じゃあ、クリスも!」
先程脱衣所に現れたクリスティーナが風呂へ入ってきて、俺の正面に座る。
周囲で女性陣がお湯をかき混ぜているとはいえ、無色透明なので、お互いに色々見えてしまうのだが。
「……流石はクリスティーナ様。傍に居るだけで発動するというのに、確実に仕留めるため、全裸になるなんて……」
「……クリスティーナ様のスキルが効いたら、一斉に行くわよ……」
「……ただベルティーナ様の護衛二人が、身体を密着させ過ぎな気もするけど、まぁ問題ないか……」
周囲の女性陣が、お湯加減でも話しているのか、何やらヒソヒソと言葉を交わしているが、俺としては温度よりもこの状況を何とかして欲しいのだが。
そんな中で、正面に座るクリスティーナが、何やらソワソワしているように思える。
「……」
「ん? クリスティーナ。どうかしたのか?」
「あ、あの……未だでしょうか?」
「何がだ?」
「えっとね、クリスはお客様の背中を洗ってあげるっていう、お仕事をもらったの! だから、その……早くお仕事がしたくて」
「背中くらい自分で洗えるのだが……いや、わかった。洗ってもらおうか」
クリスティーナが俺の背中を洗うと言うので、やんわりと断ろうとしたら、泣きだしそうになってしまったので、お願いする事に。
風呂から出ると、少し離れた洗い場へ移動し、置いてあった椅子に腰掛ける。
その直後、背後から変な声が聞こえてきた。
「もらっ……うぐっ! ど、どうして!?」
「ご主人様を背後から攻撃しようとした。よって、敵とみなす」
「貴女たちはベルティーナ様の護衛なのでは!?」
慌てて振り返ると、板を持っていた女性の内、二人がテイムした姉妹によって倒されていた。
その一方で、
「な、何してるの!? お客様にそんな事しちゃ、ダメだよ! ……ご、ごめんなさい!」
クリスティーナが大慌てで謝ってくる。
これは、どう判断すれば良いんだ?
「……クリスティーナ様!? す、スキルは……」
「え? スキルって?」
「……な、何でもないです」
別の女性がクリスティーナにこそこそと何か聞いているが、キョトンとしながら小首を傾げている。
とりあえず、倒れている二人を治癒魔法で回復させると、
「凄ーい! 魔法だっ! ……あっ! お仕事をすっかり忘れてた! お客様、身体を洗うね!」
クリスティーナが背後から抱きついて来た。
「……害意はなさそうですね。という訳で、私もご主人様のお身体を洗いますっ!」
「姉様っ!? では、私もっ! そちらの方がお背中で、姉様が胸を洗われているので、必然的に私はここですね」
「ず、ズルいっ! そこは最後のお楽しみなのにっ! じゃあ、私もっ!」
いや、クリスティーナはともかく、二人は何をしているんだよっ!
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