第449話 ビーストテイマーの武器
プライベートビーチでの激しい戦いが終わり、魔法陣で魔族領へと戻ってきた。
ちなみに、聖女の力で異常耐性を持つクララが、その戦いで限界を超え……とりあえずベッドに寝かせて来たのと、イースとスティがいるから大丈夫だろう。
「しかし、船かぁ。水魔法の使い手は居るから良いとしても、黒金貨はきっついなぁ。そんなん個人が持つような物とちゃうで」
レイに船の話をすると、笑うしかないわーと苦笑いされてしまった。
「ふむ。ならば、その船の持ち主から奪えば良いではないか」
「いや、シェイリー。玄武が心配なのはわかるが、そういうのは無しにしよう」
「しかしアレックスよ。魔王や魔族が蔓延れば、船どころではないのだ。この世界が終わってしまう。という訳で、世界の破滅に比べれば、その商人? の破産くらい小さな事だ」
玄武のピンチだからか、シェイリーが無茶苦茶な事を言っているが……実際、どうしたものだろうか。
「ご主人様。ご主人様の魅力で、その商人をメロメロにしてしまいましょう。ご主人様のアレが貰えるとなれば、船くらい喜んで提供してくれるでしょう」
「モニカ。その商人は男なんだが」
「だ、ダメですっ! 二刀流スキルは発動させてはなりませんっ! さぁご主人様。大きな大きなおっぱいですよー! 揉みますか? 埋れますか? それとも挟みますか?」
転移スキルで戻ってきたモニカは何を言っているのだろうか。
この状況で二刀流スキルの使い所なんて無いのだが。
そんな事を考えていると、フィーネが遠慮がちに口を開く。
「んー、ソフィさんに何か作ってもらうか、ラヴィニアさんに連れて行ってもらうかでしょうか」
「ソフィに何か作ってもらうというのは俺も考えたが、開発に時間が掛かるからな。……しかし、ラヴィニアか。そっちは思いつかなかったな」
幸い水中呼吸スキルというのがあるので、俺だけならラヴィニアに連れて行ってもらうのもありかもしれない。
「あ! アレックスさん! それなら魚系の魔物をテイムして、運んでもらうというのはどうかなー?」
「なるほど。検討の余地はあるな」
「えへへー。僕、テイム頑張るから、是非連れて行って欲しいなっ!」
……コルネリアはビーストテイマーのジョブなのだが、魚系の魔物もテイム出来るのか?
というか、この辺りにシャドウ・ウルフしか居ないから、まだ何もテイム出来ていない気もする。
少しだけでも時間を取って、コルネリアに何かテイムさせてあげないとな。
「ねー、お兄ちゃん。ボクが水に浮く木の家を作って、お魚さんに引いてもらうっていうのはどうかなー?」
「なるほど。大工であるノーラは、船は作れないけど、家は作れるもんな」
「うん! どうやって水魔法で船が進むのかはわからないけど、お魚さんに引いてもらうなら、そーゆーのは要らないよね?」
「おぉー! 確かに! よし、ノーラの案を試してみよう!」
「わーい! じゃあ、まずはボクが小屋を作るから、それで試してみようよー!」
ノーラの案だと、コルネリアにもテイムの経験をさせてあげる事が出来るので、一石二鳥だと考え、即実行する事に。
とはいえ、ビーストテイマーであるコルネリアが魚系の魔物をテイム出来るかどうか分からないし、そもそもビースト――獣以外がテイム出来るのかを確認するため、地下へ降りる事に。
「凄い。この場所って、こんな地下があったんだー」
「あぁ。とはいえ、俺も久々に来るけどな……≪ライティング≫」
盾に明かりを灯すと……うん。久々に来たけど、サソリの魔物だらけだな。
地下は昆虫系の魔物が多いので、コルネリアだけでなく、エリーの人形エルにもついて来てもらって良かったよ。
「≪ディボーション≫……これで、二人がダメージを受ける事はないから、安心してテイムしてくれ」
「そうなんだー。じゃあ、最初は獣系の魔物から試したいけど、ここに獣系の魔物は居るのかな?」
「あぁ、居るぞ。ちょっと素早いが、ウサギの魔物が居るんだ」
「ウサギさん……が、頑張るね!」
あー、今更だけど、コルネリアに可愛い魔物を攻撃出来るのだろうか。
だが、テイムしてもらう為にはやってもらうしかない。
エルが、わらわらと寄って来るサソリたちを魔法で薙ぎ払っていると、素早い何かが寄って来る。
「コルネリア、来たぞ! あれがターゲットとなるアサシン・ラビットだ」
「アサシン・ラビット? えっ!? は、早いよっ!」
「そうか。任せろ……≪閉鎖≫」
結界でアサシン・ラビットの動きを止めると、コルネリアが見慣れない武器を取り出した。
「え、えいっ!」
「へぇ。鞭を使うのか……って、そんな物が何処にあったんだ?」
「武器をどうしようかと悩んでいたら、ビーストテイマーと言えば鞭だって、モニカさんが貸してくれたんだー。秘蔵の品なんだってー」
「……そ、そうか」
モニカは……いや、何でもない。
聞かなかった事にしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます