第789話 久々の北大陸探検
絶壁を斜め上に掘り、大きな河の南側の地上へ。
この辺りは、第一魔族領を探していた時にも来た事がない場所だが、河にそって真っ直ぐ西へ進めば良いだけなので、迷う事はないだろう。
「河に落ちないように、少し離れた所を進もうか」
グレイスが船を空間収納で格納してくれているので、安心して西へ。
暫く進むと、大きな森が見えてきた。
どうやら、森の中を通るしかなさそうなので、念には念を……と、全員にパラディンの防御スキルを使用しておく。
「アレックス。レヴィアが居るから、魔物は寄って来ないと思うよー?」
「そうそう。この魔力を少しでも感じた魔物は、絶対に遠くへ逃げちゃうよー」
トゥーリアとルクレツィアが軽口を叩いているが、何が起こるかは分からないからな。
そんな二人とは対照的に、マリーナが森の前で足を止める。
「マリーナ。魔物は心配しなくて良いぞ。俺が必ず守ってみせる」
「んー、そうじゃなくて……アレックス。木がいっぱいだけど、これは何ー?」
「普通の森だと思うが……もしかして、マリーナは初めて見るのか?」
「木は見た事あるよー。けど、こんなに沢山生えているのは初めて見るー」
「……答えたくなければ答えなくて良いが、マリーナの故郷はどの辺りなんだ?」
俺の問いに、マリーナが小首を傾げ……
「海……かなぁ?」
自信なさそうに答えてくれたが、俺も何と言えば良いのだろうか。
マリーナの海月族というのは、生まれながらにして水中呼吸スキルを持っている種族なのだろうか。
ユーディットの天使族が、全員聖水生成スキルを持っているみたいに。
そんな事を考えながら歩いて行くが……うん。マリーナの歩みが遅い。
背丈が小さく、元々歩くのが遅い上に、初めて見るという森に興味津々なようで、キョロキョロと周囲を見渡しては、髪の毛の触手で時折木の実を採っていた。
「マリーナ。すまないが、抱きかかえるぞ」
「わーい!」
モニカが待っているし、ニナを故郷に帰してあげたいし……という事で、マリーナには悪いが、抱きかかえて進む。
いや、歩くのが好きではないのか、喜んでいたけどさ。
「……アレックス。ズルい」
「プルムもー!」
「じゃあニナもー!」
えーっと、このやりとりは、さっきもしなかったか!?
モニーとニナが替わっただけで、ほぼ同じなんだが。
「……って、モニーはどうしたんだ!?」
「あれ? 先程までは、すぐそばに居たはずなのに……」
「手分けして……いや、はぐれると危ない。全員で戻るぞ」
最後尾のグレイスが周囲を見渡すが、モニーは見つからない。
何かから攻撃されたのであれば、パラディンの防御スキルで分かる。
だが、今は俺が痛みを受けていないから、攻撃された訳ではなさそうだ。
という事は、道に迷ったのか!?
細い獣道しかないから隊列が縦に伸び、かつ森の中なので前の者を見失い易い。
それに加えてモニーはまだ子供で……くっ! 完全に俺のミスだ。
「モニー! どこだー!?」
「……乳女なら、置いていくけど、モニーなら仕方ない。探す」
「いや、流石にモニカでも探してあげてくれよ」
レヴィアに突っ込みつつ、皆で戻っていると、
「父上ー……」
遠くからモニーの声が聞こえた……気がする。
「今のはモニーの声じゃないか? モニー! 返事をしてくれー!」
「私にも父上のアレをくださーい!」
「アレックスー! 上だよー!」
マリーナに言われて見上げると、高い木の上から吊るされた網の中に、モニーが閉じ込められていた。
「モニーっ!」
「父上! 下着を着けていないのにスカートなので、見上げてはダメです!」
いや、こんな時までふざけなくて良いのだが。
しかし、かなり高い木だな。
木登りスキルがあるから登る事は出来るのだが……上の方まで登った時に、俺の重みに耐えてくれるろうか?
流石に斬り倒すのはマズいしな。
「アレックスー。マリに任せてー!」
何をするんだ!? と思ったら、マリーナの髪の毛の触手がぐんぐん伸びていく。
おぉ、マリーナの触手は身長を軽く超えて伸びていくんだな。
そのまま触手がモニーの網にたどり着き、木の枝から外された。
「マリーナ、ありがとう」
「どういたしまして……ごめん。重いよー」
「うひぃぃぃっ!」
って、モニーが入っている網が落下した!?
俺がキャッチを試みても良いが……
「プルム! 頼む!」
「はーい!」
プルムがモニーの落下地点で大きく膨らみ、クッションとなって何とか事なきを得た。
「た、助けてくださったのはありがたいのですが、もう少し優しくしてくださると嬉しいです」
ひとまずモニーが無事で良かったが……一体誰の仕業なんだ!?
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