第668話 グレイス救出作戦

「≪ミドル・ヒール≫……あ、あれ? 目覚めないぞ? ……≪リフレッシュ≫」

「パパー。あのね、とりあえず、いのちのききからは、かいふくはしたけど……おきあがれるほどの、たいりょくはないとおもうよー」


 軽く蹴りを入れた犬耳? の男性二人に中位の治癒魔法を使ったものの、ユーリから目を覚まさないだろうと言われてしまった。

 ユーリ曰く、命に別状はないらしいけど、暫く眠ったままだろうと。

 うーん。本当に加減して蹴ったんだが、元々貧弱だったという事だろうか。


「ご主人様。ご主人様は獣人に対して……勿論、結衣にもですが、攻撃力が増加するようですので、気を付けた方が良いかと」

「しまった。ビーストキラーのスキルの事をすっかり忘れていた」

「とはいえ、ご主人様が普段からよく発動させているスキルですので、力加減は大丈夫ではないでしょうか?」


 よく発動している?

 結衣がそう言ってくるけど、獣人族に攻撃する事なんて、あまり無いと思うのだが。

 ……たぶん。


「ひとまず、この二人から話を聞く事が出来ないという事はわかった。今はそれよりグレイスだ」

「待った。アレックス、私も行くよ」

「結衣も参ります」


 治癒魔法を使っている間にザシャも到着したので……そうだ!


「ザシャ。闇魔法でこの中を真っ暗にしてくれないか?」

「闇に乗じてグレイスを助け出すの? だけど、あの闇の中では私だって何も見えなくなるから、かえって難しくならない?」

「いや、そうじゃないんだ。俺に考えがあるから、頼むよ」

「アレックスがそう言うなら、わかった」


 扉を開け、ザシャが奥に向かって闇魔法を使用する。

 それから、俺たちは少し下がって扉の外で待つ事に。

 少しすると中が騒がしくなり、扉の奥からよくわからない種族の男が現れた。

 うん、狙い通りだ。ここを根城にしている誘拐犯は、真っ暗でもおおよその位置が分かって、出口へ来ると思ったからな。


「よっ……これくらいで、どうだ?」

「ぐはぁっ! な、何だ!? ゆ、指で弾かれただけに思えたのに、馬車に轢かれたような衝撃だったんだが……って、人間族!?」

「俺たちの仲間を返してもらおうか。言っておくが、今のはただ指で弾いただけだ。喋らなければ、そこで眠っている男たちのように、本気で殴らせてもらおう」

「ゆ、指で弾いてさっきの威力だとっ!? ま、待ってくれ! 人間族の女は返すから、命だけは……」


 先程の倒れている二人が功を奏したのか、男が投降し、両手を上げる。

 もちろん、獣人族相手に本気で殴る気は最初からないけどな。


「この中に俺たちの仲間が居ると思うが、まだ仲間は居るのか?」

「いや、居ません。そこの二人と俺の三人だけです」

「何故、俺たちを狙った」

「に、人間族はこの辺りでは珍しいので、高く売れると思ったからです」


 見た所、正直に話しているようだな。

 ひとまず、閉鎖スキルで動けないようにし、かつザシャに三人を見張ってもらい、俺はグレイスを助けるべく扉の奥へ。

 男が仲間はもう居ないと言っていたが、念の為ザシャの闇魔法をそのままに、俺一人で闇の中を進んで行く。

 尚、男が言うには、グレイスの口と手足を縛って床に寝転ばせているらしい。

 なので、誤ってグレイスを蹴ってしまわないようにと、手探りで進んでいるので……うん。やっぱりザシャに闇魔法を解除してもらってから来た方が良かったかもしれない。

 若干後悔しながら進んで行くと、手に柔らかい何かが触れた。


「んっ! んぅっ!」

「グレイスか? 待っていてくれ。今、助ける」


 闇の中で、女性の身体と思わしき温もりに触れたので、手探りで身体の状態を把握し……うん。これが脚か。


「――っ!? んん~~~~っ!」

「くすぐったいのは分かるが、少し我慢してくれ」


 何とか脚を縛っている紐を解き、次は手……と思ったが、よく考えたらこのままグレイスを抱きかかえて外へ出た方が早いな。

 という訳で、グレイスを抱きかかえると、お姫様抱っこの状態で外へ。


「――っ! んーっ!」


 ……いや、助けに来たんだから、クネクネ動かないで欲しいんだが。

 それから、元来た道を何となく進み、無事に扉から外へ。


「グレイス、お待たせ……って、あれ!? 誰だ!?」


 グレイスだと思って運んで来た女性は、頭にネズミの耳が生えていて……とりあえず、口を縛っている布を外してあげると、


「はぅぅぅぅ~~~~っ! お、お兄さんの指……しゅ、しゅごいですぅぅぅっ!」

「アレックス。その抱きかかえ方は……うん。まぁそこを触られ続けていたなら仕方ないよな」


 何故か女性が変な声を上げ、ザシャに呆れられてしまった。

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