第933話 久々に再会するネーヴ

「父上! おかえりなさいませ!」

「旦那様! 無事で良かった。カスミも、旦那様も支援してくれてありがとう」

「メイリン様、ありがとうございます。しかしながら、シノビとして当然の事ですので、お気になさらず」


 クワラドの街の屋敷から魔法陣で第四魔族領へ戻って来ると、すぐさまメイリンと人形たちに出迎えられ、カスミがその場で畏まる。

 暫く連絡出来ていなかったし、メイリンの事だから捜索隊の準備をしているのかと思いきや、人形たちには普段通り作業を指示して待っていたらしい。

 詳しく話を聞くと、カスミが俺と一緒に行動しながらも、同時に分身で状況をメイリンに報告したいたからこそらしいが。

 いつか分身スキルを鍛えていけば、俺もカスミのように自分で行動しながら分身を任意で別行動させられるよになるのだろうか。


「旦那様。夕食に致しますか? それともお風呂? それとも、私を……」

「いや、今からネーヴの所へ行かないといけないんだ」

「今からネーヴさんの所へ? 確かに旦那様を呼んで欲しいと、連日訴えていますが……」

「え……そうなのか?」

「はい。旦那様がウラヤンカダの村へ分身を一体だけ送られたのが約一週間前の事で、旦那様が自ら足を運ばれたのは、三週間前だそうです」


 う……三週間もネーヴに直接会っていなかったのか。

 これは……物凄く怒っているかもしれない。


「旦那様。とりあえず、今日はネーヴさんのいるウラヤンカダの村で一泊されるのが良いかと」

「そ、そう……だな。そうさせてもらおうか」

「お兄さん。一応言っておくけど、カスミちゃんと会ったのも、三週間ぶりなんだからねー?」


 メイリンからネーヴのところへ泊まるようにアドバイスをもらった直後に、カスミからジト目を向けられる。

 おそらく、サクラやナズナたちとも同じく三週間くらい会っていないのだろう。

 今日は再会したツバキに泣かれてしまったしな。

 ネーヴに会う時も、ツバキと同じ事になりかねないと思いつつ、急いで移動する事に。


「お待ちください! 父上。私もお供させてください」

「サラ! 戻っていたのか。ウラヤンカダの村まで走るが問題ないな?」

「はっ! お任せください」


 東の海で俺の分身と待機していたサラが、メイリンからの指示で戻っていたので、カスミとサラを連れ、離れてくれないレヴィアを抱っこしてウラヤンカダの村へ向かう。

 レヴィアに至っては、ハヤアキツヒメが海底に居るという話もあるので、そのまま付き合ってもらう事に。

 地上では機動力はないものの身体が小さくて軽いので、そのまま東大陸を走り抜けて全力でウラヤンカダの村へ向かうと、すっかり夜になってしまったが、ひとまず到着する事が出来た。


「アレックスぅぅぅーっ! 待ってたぁぁぁっ!」

「ネーヴ。暫く来られていなくて、すまなかったな」

「大丈夫だ! 私は一国の王であるアレックスの妻だからな。待つ事も仕事だ。それに、こうして会いに来てくれたのだから、十分だ」


 村へ入るや否や、ネーヴが抱きついて来たが、ここでずっと待っていたのだろうか。

 ……あ、なるほど。サラが逐一状況をメイリンに報告していて、ウラヤンカダの村に居る人形経由で大まかな到着時間がわかっていたんだな。

 何時間もずっと待って居た訳ではなさそうで安堵していると、まずは村長代理であるネーヴの屋敷へ連れて行かれ、物凄い御馳走が振舞われる。

 ありがたく夕食をいただくのだが、


「……まだかな?」

「……お食事が終わるまでは待たなきゃダメだよ。それに、一番最初はネーヴ様だからね?」

「……この日の為に、幻と言われる精が付く食べ物を調達しておいたからね。久しぶりのアレックス様の……楽しみっ!」


 ネーヴの屋敷に集まっている村人たちや、馬耳族であるジャーダとジョヴァンナ。そしてモニカにそっくりなドロシーがチラチラと俺を見てくる。


「それでは、宴もたけなわではあるが……そろそろ、次の予定へ進もう。アレックス! さぁ、寝室へ行こう! ……あ、分身を忘れずに頼む。村の者たちも首を長くして待っていたのだ」

「お兄さん。頑張ってねー! カスミちゃんは分身さんと遊んでいるからー!」

「……レヴィアたんも分身でいい。レヴィアたんは空気が読める妻」


 ネーヴの言葉で村人たちの纏う空気が変わり……お、お手柔らかに頼む。

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