第780話 火の四天王ゲーアハルトの確認

 魔族のよって全裸にさせられてしまったモニカに近付いてしまったため、冷たい目と共に注意され、慌てて空間収納から服を取り出す。


「モニカ。俺のシャツで済まないが使ってくれ」

「……感謝する」


 そう言って、モニカが俺の服に袖を通し……ひとまず、全裸よりはマシな状態となったので、改めてゲーアハルトの討伐について確認する。


「モニカ。火の四天王を倒した確認をしたいのだが、エクストラスキルは得ただろうか」

「……うむ。私は、光魔法を使えるようになったらしい。マジック・ナイトである私には使えない属性の魔法なので、戦いの幅が広がりそうだ」

「そうか……ありがとう」


 モニカがエクストラスキルを得たので、ゲーアハルトを倒したのは間違いなさそうだ。

 ひとまず、自分の首が刎ねられた姿を晒しておくのはちょっと嫌なので、偽造スキルを解除し、俺の人形を消す。


「これで……第二魔族領についても、一件落着かな」

「アレックスさん。助けてくれて、ありがとうアル」

「白虎が無事で良かったよ。しかし、まさか地下に魔族領があるとは思わなかったが」

「私は金の力を司るアル。だから、鉱山の中に住んで居たアル。ただ私も、棲家がドワーフ族の墓地になっているとは思わなかったアル」


 あ、白虎は死者に関係する力などを持っている訳ではないのか。

 となると、白虎の棲家が墓地になっていた理由は、ドワーフ族の王族たちに聞いてみるしかない。

 ただ金の力を司ると言っていたし、先程俺の人形を貫いたのも、鋭利な岩ではなく、金属だったのかもしれないな。


「では、一旦ドワーフ族の街へ戻ろうか」

「それなら、私も行くアル。この地から遠く離れる事は出来ないアルが、ドワーフ族の街という事は、地中の中アル。それなら大丈夫かもしれないアル」

「しかし、その姿で街へ行くのは……」

「勿論、人の姿になるアル。これは戦闘用の姿アル」


 そう言うと、白虎の姿が白く輝き……褐色の肌に白髪の幼女になっていた。

 髪の毛を左右でおだんご状にしており、深いスリットの入った短いスカートという独特の服装だ。


「これで問題ないアル」


 そう言って、白虎がミオの横に並ぶが、シェイリーやランランと同じく幼い容姿なのだろうか。

 まぁ街に入る分には、白虎の言う通り問題なさそうではあるが。

 これで、改めて街へ戻ろうという話なったのだが、意外なところから待ったが掛かる。


「……待ってもらいたい。緊急事態のため仕方が無いとは思うが、私はこのシャツ一枚で街へ入るのだろうか」

「む? 乳女にしては、露出を抑えている方だと思うのじゃが?」

「……何をいっているのだ? このような破廉恥な姿で露出を抑えているなどと、どこをどう見れば、そのような言葉が出てくるのか」


 モニカの言葉を聞いて、ミオ……だけではなく、ザシャやシアーシャも首を傾げる。

 いや、モニカが言っている事は正しい。正しいのだが、普段のモニカの言動のせいで、当たり前の事を言っているモニカのセリフがおかしく感じてしまう。


「乳女よ。一体どうしたのじゃ? 先程の戦いで頭でも打ったのか? おかしな事を言っておるのじゃ」

「ミオ。この女性は何もおかしい事を言っていないアル。普通アル」

「いや、普通ではないのじゃ。……はっ! アレックスよ。先程のゲーアハルトが憑依していて、乳女の振りをしているという可能性があるのじゃ!」


 なるほど。ゲーアハルトを倒した確認は、モニカが光魔法を得たという証言しかない。

 俺のエクストラスキルの話に、適当な事を言って話を合わせただけという事も考えられる。


「アレックスよ。先程のセオリツヒメのスキルは使えぬのか?」

「周囲に魔物の気配は……しないか。だったら、少し弱めに発動してみよう。≪清祓乃水≫」

「何っ!? アレックス殿! 私を疑って……くっ!」


 先程の半分以下の水が流れ、浄化の水がモニカに流れていく。

 少しして水が引くと、びしょ濡れになって肌にシャツが張り付いたモニカが近付いて来て、


「……アレックス殿。これまで行動を共にした私を疑うというのは悲しいな。それとも、このようにシャツを張り付かせて、私の身体を視姦するのが目的か? そうであれば、軽蔑する」


 先程よりも更に冷たい目を向けられる事になってしまった。

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