第216話 やり過ぎシェイリー

「何これっ! 初めてなのに、初めてなのに……もうダメぇぇぇっ!」


 流石にシェイリーの言う鬼畜モードの分身と四人がかりというのは可哀想なので、普通にしたんだが……そもそも鬼畜モードって何だ?

 それはさて置き、ヴァレーリエはドラゴンだからか、体力がかなりあるようで、俺を押し倒す形で二回目に。

 結局、一度も休む事なく七回くらいしたところで、くてっと俺の胸に顔を埋めて抱きついてきた。


「ふっふっふ。竜人族の女よ。アレックスは凄いであろう」

「うん! 本当に凄かったんよ! ウチの指では絶対に届かないような深い所へ届くし、熱いのが何度も勢いよく出てくるし、いつまでも元気だし! 全然ざこじゃないんよ! つよつよなんよ!」


 出会った直後の態度がウソだったかのように、物凄く懐かれてしまったようだ。

 だが、そのすぐ傍で仁王立ちになっているシェイリーが口を開き、


「そうか。では、そろそろお主への仕置きだ。金輪際、アレックスとの接触を一切禁じる。触れる事はもちろん、近付く事も許さぬ」


 一瞬でヴァレーリエの蕩けた笑顔を凍り付かせる。


「そ、そんなっ! 待って欲しいんよ! たった今、こんなにも凄い経験をしたばかりなのに、それを禁止だなんて酷過ぎるんよっ! い、今更ざこ……ううん。アレックス無しで生きていくとか出来ないんよ! それは、ウチに死ねと言っているのと同義なんよ!」

「シェイリーよ。流石にそれは酷過ぎるのじゃ。我も、これからアレックス無しで生きていけと言われれば、泣いてしまうのじゃ」

「シェイリー。私はヴァレーリエがドラゴンになった時も、絶対に旦那様が守ってくれるって信じていたから、大丈夫だよー! だから、旦那様が許すって言ったら、許してあげて」


 シェイリーがヴァレーリエに下した仕置きに対して、ミオとユーディットがフォローに入る一方で、サクラとソフィは俺の判断に委ねるというスタンスらしい。

 しかし、ユーディットが目をキラキラと輝かせながら俺を見つめている時点で、許す以外の選択肢は無いんだけどな。


「ヴァレーリエはちゃんと謝ったし、反省もしているようだ。シェイリー、お仕置きの内容はさておき、これまでの事を水に流して、新たな仲間としてヴァレーリエを迎え入れてくれないだろうか」


 そう言うと、今度はシェイリーが泣き出しそうになる。


「……我はアレックスの為にと、良かれと思って躾をしようとしただけなのに」

「そ、そうだな。うん、ありがとう。だが、種族も違えば、文化や風習も違うからな」

「アレックスは我よりも、竜人族の女を優先するのか。うぅ……泣くぞ?」

「いやいや、誰を優先とかではなくてだな。俺は全員を大切にしている訳で……」

「では、我の事は好きか?」

「もちろんだ」

「我と子供を作ってくれるか?」

「いや、既にそういう事を何度もしていると思うんだが」

「では、子供が出来た際には、ちゃんと我も子供も愛するのだぞ?」


 何だか話が変な方向に進んでいるのだが、シェイリーはウソ泣きだったのか、今や全く泣きそうな表情では無くなっていた。

 というか、むしろニヤニヤ笑っている気がするんだが。


「えーっと、シェイリー。何か話が変わっていないか?」

「いや、躾をしようとしていたのは本当だが、やり過ぎだと言われてしまったからな。なので話題を変え、ここからはアレックスが得た新たなスキルについて教えようと思うのだが……アレックスよ。聞いた話では、兎耳族からスキルを貰ったそうだな?」

「あ、あぁ」

「その中に、ラビット・ナイトというジョブが居たであろう?」

「そうだな。守りと回避が出来る、守り向きのジョブだと言っていたが」

「そのジョブは、戦闘時に守るというより、兎耳族の種族を守るジョブだな。つまり種族を守る為に、妊娠し易くなるスキル……アレックス側から言うと、相手を妊娠させ易くするスキルを習得しているぞ」


 なるほど。

 まぁこれについては、元より責任を取るつもりだったから、今更慌てるつもりは無いが。


「更にフェンサーというジョブから、エイミングというスキルを得ておるな。これは小剣の命中率アップという効果があるのだが……小剣は突く為の剣。つまり……まぁそういう事だ」

「え? どういう事なんだ?」

「皆まで言わせる気か? ヴァルキリーというジョブから得た、チャージというスキルがあるであろう? あれは威力を上げるスキルだが、これは威力の代わりに命中率を上げるスキルだと思えば良い」


 とりあえず、シェイリーの言いたい事は分かったが……ん? もしかして、ユーディットは……そういう事なのかっ!?

 ある考えに至った所で、ユーディットに目を向けると、


「ふふっ、もう少し待ってねー。天使族は命の誕生が何となく分かるんだけど、まだ昨日の今日だから」


 そう言って、長いキスをしてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る