第217話 おめでた

「そ、そうか。ついに……」

「待って待って。さっきも言ったけど、私のお腹の中に命が宿ったのは昨日だし、まだどうなるか分からないんだけど……それより、もっと早くから旦那様の子供を身篭っている人が居ると思うんだー」

「え? そ、そうなのか?」

「うん。本人が言ってないのに、私が勝手に言う訳にもいかないから、言わないけどねー」


 まぁ、これまで何度もしてきているし、あり得る話か。

 だが、それはそれとして、ユーディットはこれから安静にしてもらわないとな。


「まぁあり得る話であろう。同じ種族同士は妊娠し易い……というか、特殊な兎耳族を除けば、異種族間は妊娠し難いからな。だが、今回アレックスが得た二つの孕ませスキルにより、異種族はもちろん、人間なら尚更妊娠する可能性が高くなったと言えるであろう」


 いや、孕ませスキルって。

 もう少し言い方があると思うんだが。


「な、なんと。つまり私も、ご主人様の子が既にお腹の中に居るのか!」

「あ、あの……とっても言いにくいんだけど、モニカは未だじゃないかなー?」

「ふっ……モニカ殿は、後ろが好きだからな。分かっているとは思うが、そっちでは子供は出来ないぞ」


 モニカがパァっと顔を輝かせた直後、ユーディットとサクラの言葉で沈んでいく。

 まぁ、サクラの言う通りなので、何とも言えないが。


「くっ……ユーディット殿! サクラ殿には……サクラ殿のお腹に、ご主人様の子は宿っているのか!?」

「いや、聞くまでもない。私は未だだ。シノビに伝わる避妊薬を服用しているからな」

「な、何故だっ!? サクラ殿はご主人様の子が欲しくないのか?」

「欲しいに決まっている。そこに居る私の人形サラを見ていれば尚更だ。だが、拙者はシノビ。妊娠中は任務が出来なくなる故、シノビを引退するまでは……もしくは、ツバキがシノビとして成長するまでは、子を成す事は出来ない。……まぁ子を作る行為は、もちろんするが」


 考え方は人それぞれなので、俺がどうこう言うつもりはないし、その辺りは各人の意思を尊重しようと思う。

 ……と、そんな話をしていると、ずっと俺に抱きついていたヴァレーリエが身体を起こす。


「異種族でも妊娠させるスキル……という事は、私も子供が出来るかもしれないの!? というか、既に出来たかも!?」

「我や竜人族は少し特殊だからな。アレックスの二つの孕ませスキルをもってしても、確率は低いかもしれぬが、可能性はあるだろうな」

「じゃあ、アレックス! もう一回しよっ! ううん、子供が出来るまでするんよ! ウチはアレックスの子供を産むから! もう一人はイヤなんよ!」


 そう言って、ヴァレーリエが再び俺の上で動こうとしてきたので、一旦止める。


「大丈夫。ヴァレーリエがここに居たいのなら、ずっと居れば良いさ。俺からヴァレーリエを突き放す事はないからさ」

「アレックス……ありがとう。大好きっ!」


 そう言ってヴァレーリエがキスしてきて……俺の身体が光った。

 この数日で大量にスキルが増えたな。

 とりあえず、残りのスキルについてもシェイリーに教えてもらおうと思ったのだが、


「じゃあ、それはそれとして、早速アレックスの子供を作るんよ!」

「わ、私もっ! 私もご主人様の子が欲しいですっ!」

「我もなのじゃ。孕ませスキルとは……流石はアレックスなのじゃ」


 結局、さっきの続きが始まってしまった。


 ちなみに、後でシェイリーから教えてもらったのだが、ビーストキラーというスキルを得ており、これで獣と獣人に対する攻撃力が大幅に向上しているのだとか。

 ミオやボルシチがすぐにダウンしていたのは、このスキルのせいだろう。

 あと、兎耳族の裁縫師というジョブから得たという採寸スキルは、女性の身体を見ると、各部位のサイズが数値化されて見えるのだとか。


「ご主人様。どうぞ、私の胸をご覧ください。そして、サクラ殿の胸と比較していただければと」

「くっ……やはりモニカ殿は死にたいようだな」

「ふふっ、では勝負するか? 胸の大きさで」


 モニカの言葉でサクラが言葉を失う。

 いや、モニカの胸が大きいのは知っているから、もうそれで良いのではないだろうか。

 ただ、何気なくモニカとサクラを見ていると、スキルの効果なのか、それぞれの数値の他にGとCという文字が表示されているのだが、これは一体何を意味しているのだろうか。

 そして、つい先ほど貰った、


「アレックス……それ、ウチのフレイムタンなんよ! えへへ、ウチとお揃いのスキル……嬉しいんよっ!」


 ヴァレーリエのスキルで、手から炎の剣が出せるようになってしまった。

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