第27話 久々のおんぶと、遂に完成した念願のお風呂

「≪ホーリー・クロス≫!」


 エリーの雷の魔法でゴーレムの動きを止め、ニナが削って、俺が止めを刺す。

 その連携の繰り返しで、三体全てのゴーレムを倒す事が出来た。


「一先ず、皆が無事で良かった。だけど、エリー。洞窟へ一人で行くのはダメだぞ」

「ご、ごめんなさい。その……私がアレックスにしてもらっていた事を、リディアさんもしてもらっていて、それを見た瞬間、気付いたら逃げ出しちゃって」


 俺がエリーにしていた事をリディアにも……って、何だ?

 あ、魔力供給の事か? しかし、精霊魔法を使うのに必要な事だし、仕方が無いと思うのだが。


「えっと、エリーは寂しかったんだよねー」

「さ、寂しい……って、ニナちゃん!? わ、私は……」

「分かるよー。ニナも一人だけ皆と違ったらヤダもん。もう一人ぼっちはイヤだし」

「あ……そっか。ニナちゃんは……それに、リディアさんも……」

「という訳で、エリーもお兄さんに、おんぶしてもらえば良いんだよー。あ、その次はニナの番だからねー」

「え、えっと……う、うん。アレックス、久しぶりに、おんぶしてくれる?」


 とりあえずニナとエリーで話が纏まり、俺がエリーをおんぶする事になったのだが、


「ふふっ……アレックスの背中、久しぶりだね」


 エリーが嬉しそうなので、良しとしよう。


「さて、これからどうするか……ゴーレムなんて、自然に湧くような魔物ではないからな。出来れば、今後この辺りを調べたいと思う」

「そうですね。普通は何かしらの術者が居ないと、ゴーレム何て動かないですからね」

「あぁ、そうだな。とはいえ、一旦戻って装備を整えようか。俺も剣しか持っていないし、エリーも杖を持っていないからな」


 おそらく、エリーがちゃんと杖を持っていれば、本来の魔法の威力が出て、もっと簡単にゴーレムを倒せたのだろう。


「ふふん。ちゃんとツルハシを持っていたニナは偉い。お兄さん、褒めてー」

「そうだな。偉い偉い」

「えへへー、褒められたー。あと、ちゃんと光苔を生やしているから、出入口からこの場所までの道も分かるよー」

「うん、ニナは流石だな」


 一先ずエリーをおんぶしたまま地上へ戻り、一旦小屋へ。

 日も傾いてきているので、リディアが夕食を作ると言ってくれたところで、


「お兄さん。さっきのゴーレムから沢山鉄を手に入れたから、お風呂が作れるよー!」

「おぉっ、遂にかっ! ニナ……頼むっ!」

「うんっ! ニナも冷たいシャワーは辛いからねっ! 大急ぎで作るよー!」


 ニナから嬉しい話があった。

 風呂が出来るのを待つ間、何か手伝える事を……という訳で、俺とエリーは、リディアに頼まれた食材を採る為、二人で畑へ。


「アレックス……今回はごめんね。洞窟の奥まで迎えに来てもらっちゃって」

「そうだな。無事だったから良かったけど、一人で魔物の居る洞窟へ入って行ったのが分かった時は、肝が冷えたぞ」

「ご、ごめん……」

「流石に俺の居ない場所では、エリーを守るっていう約束が果たせないからな」

「アレックス……その約束、覚えてくれていたんだ」

「当たり前だろ。約束なんだからさ」

「……アレックスーっ!」


 何故かエリーが突然抱きついて来て、


「まったく。随分と遅いので様子を見にきたら……何をしているんですか?」


 その直後にジト目のリディアが現れる。


「えっ!? こ、これは、その……虫よっ! 野菜に虫が付いていたから怖くって」

「へぇー……サソリを倒しまくっているのに、野菜に付いているような小さな虫が怖いんですか」

「あ、あれは魔物だもの」

「ふーん……あ、アレックスさん。私も虫が怖いですー!」

「エルフが虫を怖がる訳ないでしょっ! 森に住んでいるのにっ!」


 どういう訳か、リディアまで抱きついてきた。


「もー、お兄さんたちったらー! お風呂の形について相談しようと思ったのに、どーしてこんな所で抱き合ってるのー!? ニナも仲間に入れてよーっ!」


 仲間外れを嫌うニナが、いつものように混ざった所で、小屋へ戻る事に。

 それから四人でお風呂の形について話し合いになったのだが、あまりに複雑過ぎる構造は無理だという事で、俺が足を伸ばしても余裕で座れる大きさの箱型に決まった。

 そこへリディアかエリーに水を入れて貰い、お風呂の下に設けた加熱用の場所に火を出してもらって、お湯にするらしい。


「……という訳で、完成だよーっ! 底にスライドさせる小さな蓋があるんだけど、そこを開けると、石の壁の外にある堀へ、お湯を排出させる仕組みにしたんだー!」

「ニナは凄いな。お湯の入れ替えまで出来るのか」

「うんっ! ニナはお風呂大好きだからねっ! 側面だって、少し角度を付けているから、ぐでーってしながらお湯に浸かる事だって出来るんだよー!」


 ぐでー……っというのは良く分からなかったが、一先ず色んな個所に工夫がされているらしい。


「でもね、一応構造的に多少の考慮はしているんだけど、それでも全体が鉄で出来ているから、加熱中とか加熱直後は、浴槽自体が熱されていて入れないから気を付けてね」

「つまり、先にお湯を張ってもらって、暫くしてから入るって感じか」

「そういう事っ! とゆーわけで、リディアお願ーい!」


 今までのシャワー場の隣にニナが作ってくれた浴槽があり、そこへ水を張って、リディアが生み出した火で下から加熱する。

 リディア曰く、小屋くらいの距離なら、離れていても火を維持し続けられるらしいので、加熱中は浴槽の前に居続けなければない……という事はないそうだ。

 なので、皆で夕食を済ませた頃には、


「おぉっ! 風呂だっ! ニナ、ありがとう!」


 丁度良い感じの湯加減となった、お風呂が出来ていた。


「やったー! じゃあ、お兄さん。早速入ろうよっ!」

「おう、そうだな! ……って、待った。いくら大きい浴槽とはいえ、一緒に入る必要は無いんじゃないか?」

「あ、言われてみれば、確かに。じゃあ、誰から入るー?」

「とりあえず、女性三人からで良いんじゃないか? 俺は後で良いよ」


 これで、今後は先日の大惨事のような事は起こらなくなる。

 そう思っていたのだが、


「あの、アレックスさん。お湯は張ってありますが、私が水を出さないと、身体を洗ったり出来ませんよ?」

「……あれ? 洗面器的な物って無かったっけ?」

「強いて言えば、お鍋でしょうか? 思いっきり、料理で使いましたけど」


 残念ながら、暫く混浴状態でお風呂へ入る事になってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る