第901話 目覚めたアレックス

 目が覚めると、見覚えのない天井が視界に映る。


「ここは……」

「アレックスっ! 良かったのじゃぁぁぁっ!」


 目が覚めると、ミオが抱きついてきた。

 かと思うと、


「アレックスーっ!」

「父上ぇぇぇっ!」


 マリーナやモニー、太陰がミオに続き、モニカやフョークラに、オティーリエたちが立ち上がる。

 どうやら、皆が俺の回りにいたようだ。


「……ここは何処なんだ?」

「王宮の一室なのじゃ。アレックスが助けた王子とデイジーの計らいで、ベッドを借りておったのじゃ」


 ミオによると、唯一生き残った男性がこの国の王子だったらしく、国王が別の存在に身体を乗っ取られていたと聞き、俺を国の恩人だと言っているらしい。


「そうか。しかし、身体が重いな……」

「当たり前なのじゃ! セオリツヒメの……神の力の形を変えて発現させるなど、どれだけ魔力を要すると思っておるのじゃ! 成功したのは奇跡なのじゃ」


 結界で兵士たちを近付けないようにした後、ミオが俺の様子を見ていたらしく、無茶苦茶過ぎると怒られてしまった。

 俺としては、消費する魔力を節約する為に水の量を減らし、かつそれでもモーガンに攻撃出来るように……と、フレイムタンのイメージを重ねて発動させてみたのだが、かえってダメだったようだ。


「そうだ! それより、デイジー王女は……」

「無事なのじゃ。アレックスが眠っている間に太陰が救出しておるのじゃ」

「うんうん。少し衰弱していたけど、フョークラの薬を飲んでぐっすり眠って回復しているし、もう問題ないよー」


 デイジー王女も太陰が助けて無事だったか。

 それは何よりだ。


「……ん? デイジーが眠って回復した……って、今は何時頃なんだ?」

「お昼前だよ。ただ、アレックスが気を失ったのは二日前だけどね」

「二日っ!? 俺は丸一日眠っていたという事なのか!?」

「えぇ。だから、みんな凄く心配していたんだから!」


 太陰に言われ、ようやく状況を理解した。

 丸一日も目を覚まさなければ、みんなが心配するのも当然だろう。

 それから、あの生き残った王子が国を纏めていく事になったという話や、ザガリーの三つの別荘をデイジー王女を筆頭とした、王族で正しい女学校として再建する事になったという話を皆から聞いた。

 女学校は孤児院も兼ねるという事で、トレーシーも新たな学校へ戻る事になったそうで、ひとまず安心出来るだろう。

 そして一番驚いたのが、フョークラから聞いた話だ。


「ブレアが騎士団長に!?」

「えぇ。今回の事で、この国の騎士団が腐りきっている事がわかりましたから」

「それはまぁ、確かに」

「ブレアさんが元々悪を許さぬ正義の騎士であった事が有名なのと、アレックス様と共にメリナ商会を潰していった事が評価されたようです」


 なるほど。まぁブレアなら、汚い賄賂などで信念は揺らがないだろう。

 きっと正義に燃える騎士団を再興してくれるはずだ。


「えっと、それで……ですね。新たな騎士団長となり、多忙過ぎるブレアさんからの伝言で、時々で良いので、絶対に会いに来て欲しいとの事です。泊まりで」

「……あー、うん。ブレアが落ち着いた頃にな」

「それと、オティーリエさんに向かって行った、腐っていない女性騎士たちや、レイチェルさんの所へ一緒に泊っていた女性騎士たちも騎士団へ復帰しており、アレックス様に是非会いたいと」

「……ぶ、ブレアのところへ顔を出しに来た時に、一緒に会えるんじゃないだろうか」

「そうですね。その時には、是非私もご一緒させていただきたいと思います」


 フョークラが何か期待した目を向けてくるが……いや、その、騎士団長になったブレアは忙しいと思うんだ。

 出来れば泊まらずに、顔を出そう。

 ……うん。それが良いだろう。


「それから、デイジー王女やトレーシーちゃんも、アレックス様に会いたがっておられました。意味は分かっていないようでしたが、夜のお泊りデートがしたいと」

「……ご、五年くらいしたらかな」


 何となくこの街へ残っていると、マズい事が起こりそうな気がするんだが。


「まぁアレックス。この街については、私が見ておくから大丈夫だよ」

「そうだな。太陰、宜しく頼む」

「うん。だから、時々ミオに呼んでもらいたいのと……そうそう。ミオの事を宜しく頼むからね?」

「ん? あぁ、もちろんだ」

「本当に本当に頼むよ?」


 何故か太陰に念押しされ……ドワーフの国へ戻る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る