第207話 何が起こるかお見通しなメイリン
先頭を俺とツバキが。左右を兎耳族の戦闘職の者が。
兎耳族の子供たちや、子供を抱く者、魔法を使うプリシラたちの家族やリディアを中心にして、最後尾はツバキの人形ツキとユーディットという隊列で進み、一先ずリザードマンの村までやって来た。
「アレックスはここに住んでいるのか?」
「いや、まだ西だ。ここはリザードマンたちの村で、友好的な関係にあるから安心して欲しい」
リザードマンの長、ヌーッティさんを見つけたので、大勢でやって来た理由と、エルフではなく兎耳族だった事を説明しておく。
エルフの事はともかく、大勢で移動して侵攻と間違えられても困るからな。
「なるほど。壁の上に移住ですか。羨ましいですな。我々も出来る事ならそちらで暮らしたいのですが、水辺でないと生きられませんからな」
「俺たちとしては、魚や布を交換してもらえるから助かるが……そうだ。先程説明した移住で、東に行った所へ無人の家が幾つかあるが、兎耳族たちの元居た家なので、発見しても変に警戒しないようにしてくれ」
「それから、あの辺りは私たちが仕掛けた、動物を捕獲するための罠が残っている可能性があるから、それには気を付けて欲しい」
俺とパメラから兎耳族たちの集落の跡地の説明をして、再び歩き出そうとしたところで、
「お待たせしました、マスター」
「ソフィ!? それにサクラも! どうして、ここへ!?」
「ツキより連絡を受けたメイリン様から、アレックス様を手助けするようにとの指示がありました」
ソフィと荷車を引く運搬用ゴーレムのシーサーと、サクラが現れた。
「ツキ、いつの間に?」
「いえ、私は定期的にこちらで起こっていた事をメイリン様へご報告していただけです。兎耳族の方々がこちらへ来るだろうと、メイリン様がかなり早い時点で予想されたのではないかと」
なるほど。
流石はメイリン……だが、この後どうなるかは俺も予想が出来る。
きっと、メイリンとエリーが拗ねるんだろうな。
一先ず、元々は荷物の運搬用だが、幼い子供たちとプリシラを乗せて出発する。
リザードマンの村からは、道が一直線なのと、子供たちの足に合わせる必要がないので、かなり早く進む。
あっという間にトンネルを抜け、東の休憩所へとやってきた。
「アレックス様。こちらでエリー殿が昼食を用意して待っているとの事です。新たな住人となる兎耳族の方々の分も用意すると聞いておりましたので、どうぞ」
サクラの案内で、兎耳族たちも東の休憩所へ。
「凄いな。こんな壁がある事も知らなかったし、壁の上に家があるのか」
「あぁ。だが、ここはリザードマンの村との交易の為の中継地点で、俺たちが暮らして居る場所は、もっと西なんだ」
「ま、まだ更に西へ行くのか」
「そうだな。だが、この壁の中なら魔物も現れずに安全だから、この辺りを兎耳族の場所として、自分たちで開拓してみるか? もちろん、俺たちも協力はするぞ?」
「アレックスが普段暮らして居る場所から、ここが遠くなければそうしたい所だが……先程の話では、おそらく相応の距離があるのだろう? ウチらはアレックスの傍に居たくて移住したのだから、もう少し近くにして欲しいな」
そうだった。すっかり移住の目的を忘れてしまっていたが……これから大丈夫なのだろうか。
とりあえず、遅めの昼食の為に休憩所の中へ入ると、
「旦那様っ! お帰りなさいませっ!」
「アレックス!? おかえりっ!」
「お兄ちゃーん! おかえりー! ボク、寂しかったよー!」
メイリンやエリー、ノーラたちが抱きついてくる。
それは構わないのだが、その後に抱きついて来たミオが非常にマズい事を言う。
「ほぉ。事前に聞いてはおったが、あの兎耳族がこんなにも……ふふっ、全員アレックスのアレから離れられなくなったのじゃな? まぁ我も同じなのじゃが……それよりも、アレックスは酷いのじゃ! せっかく楽しんでいたのに、あと少しというところで分身を消したのじゃ! 昼食が済み次第、この中途半端なもやもやした状態を解消してもらうのじゃ!」
「むっ!? アレックス。今の話からすると、食事が終わったら皆で……」
「違うぞっ! 今ミオが言ったのは、その……訓練だ! 俺の分身とミオは戦闘訓練をしている最中だったんだ!」
すぐ傍にノーラも居るし、兎耳族の子供たちも居る。その上、パメラたちの目の色が変わった為、全力で誤魔化す。
エリーの作ってくれた昼食を皆で食べながら、これからの事を考え……うん、課題が山積みだ。
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