第527話 滝の裏の洞窟
レヴィアとラヴィニアが、それぞれ訳あって動けないので、プルムとニースの三人で転移……と思ったのだが、暇だからとミオがついて来た。
「アレックスの姿をしたプルムも良いのだが、せっかく本人が居るのじゃ。我はアレックスのそばに居るのじゃ」
「ニースもー! パパと一緒が良いのー!」
「プルムもー! お兄さんのアレが美味しいもん」
一人だけ若干発言がおかしいが、四人で船から降り、昨日俺とニースで掘った通路を進んで行く。
坂を下て少し歩くと、滝の横へ。
そこで俺が出しておいた石の壁を消すと、滝の裏へ辿り着いた。
「あちゃー。真っ暗だねー」
「大丈夫だ。……≪ライティング≫」
持って来た小型の盾に証明を灯すと、真っ暗な洞窟の中を進んで行く。
念の為、全員にパラディンの防御スキルを使用し、ダメージを肩代わりした状態にしたので、余程の事がない限り大丈夫だろう。
そう思っていたのだが、
「お兄さん。ここ……ちょっと暑いよー」
そう言って、プルムがうずくまる。
「大丈夫か? 俺は平気なんだが……ニースは大丈夫か?」
「うん。ドワーフは寒さには弱いけど、暑さには強いから」
「我も問題ないのじゃ」
ニースもミオも平気だと言うが、プルムは辛そうにしているので、俺が治癒魔法を使い、ミオに結界魔法を使ってもらい、この場で待機してもらう事に。
「出来るだけ早く戻る。少しだけ待っていてくれ」
「うん。まぁお兄さんが濃厚なアレをくれたら、すぐに回復出来そうだけどね」
ミオの結界に守られているからか、プルムは大丈夫そうだな。
再び歩き出して気付いたのだが……この洞窟は少しずつ下っているな。
大きな滝でかなり位置が下がったのに、そこから更に下がるのか。
「しかし、アレックスよ。この洞窟は長いだけで、何も無いのじゃ」
「そうだな。正直言って、洞窟だから魔物の巣窟という可能性さえあると思っていたのだが」
「……だが、ここへ来て、ようやく変化があったようなのじゃ。前を見てみるのじゃ」
ミオに言われて見てみると……洞窟の中なのに、明るい?
穴が空いていて、外と繋がっているのか?
「ふむ。明るくなるにつれて、暑くなってきたな。それに、空気が薄いのじゃ。これ以上は危険かもしれぬのじゃ」
「なるほど。ニースはどうだ?」
「ニースは平気ー!」
ミオが危険というなんて、どうやら相当暑いようだ。
だが俺は一切暑さを感じない。
とはいえ、もうこれ以上は止めておいた方が良さそうだな。
「わかった。では、ミオとニースはここで待っていてくれ。何故か洞窟が明るくなっているし、この明るい原因だけ確認してくるからさ」
「むっ!? アレックスが行くのであれば、我も行くのじゃ!」
「いや、無理はしないでくれ。それに、確認したらすぐに戻るからさ」
「待つのじゃ! ……こ、これで大丈夫なのじゃっ!」
そう言って、ミオが前方に結界を張る。
どうやら前から熱気が来ているようで、先程暑いと言っていたプルムを覆ったように、前方を覆う事でその暑さを防いだようだ。
俺としては何があるか確認したいだけなので、ここで待っていてくれれば良いのだが……ミオが離れようとしないので、三人で結界を張った場所まで進んでみると、
「アレックス! これはマズいのじゃ! 逃げるのじゃ!」
「なるほど。確かにこれは、ここに居る必要性は無いな」
「そんな事を言っている場合ではないのじゃ! 戻るのじゃ!」
そう言って、ミオが走りだそうとしたところで、俺たちの目の前に居る、明かりの正体……溶岩が噴きあがる。
「ここに生物が入って来たという事は……ついにあの滝が枯れたのか」
「ほぅ。溶岩が人の姿になって喋るのか。もしかして、悪魔か?」
「ふふ……だったら、どうする?」
「ここで仕留める!」
「面白い。俺はラーヴァ・ゴーレム。原初の炎より生まれた……ごふっ! ……は? いや、俺……溶岩なんだが。どうして素手で殴るんだっ!?」
ミオの結界から出て、自らラーヴァ・ゴーレムと名乗る魔物を殴ると、何故か物凄く驚かれた。
「いや、流石に剣は傷みそうだったからな」
「剣が傷みそう……で、素手で溶岩を殴るとか、おかしいだろっ!」
「あー、俺は炎による攻撃は一切効かないスキルを持っているんだ。という訳で、お前を倒すまで殴り続ける!」
「ちょ……待ってくれ! 炎が効かないって言っても、俺は溶岩なんだが! それを殴ってダメージって……ぐふぅっ!」
悪魔が戦いを挑んで来たので、動かなくなるまで殴る事にした。
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