挿話21 オッサンに囲まれる勇者ローランド

「ローランド様、暑くはありませんかな? ワシの氷魔法で涼を取られますかな?」

「ローランド様、見てください。この立派な魚を。先程、そこの川でローランド様の為に捕まえて参りました」

「ローランド様。周囲を偵察した所、少し北へ行った所に、オークの群れが居りました。少し遠回りになりますが、倒しに行きましょう」


 ローランド様、ローランド様……って、うるせぇぇぇっ!

 俺がローランド様と呼んで欲しかったのは、巨乳美人のモニカからだっ!

 それなのに、どうして名前も知らない七人の脂ぎったオッサンと、よく分からんダニエルとかいう騎士……男だらけのパーティを組まなきゃならないんだよっ!

 あと、そこの魚を取って来たって奴! フンドシ姿で俺の視界に入るのはやめろっ! 魚とかどうでも良いし、気持ち悪いから服を着ろっ!


「ふむ。オークは女性を狙って襲う、勇者としては見逃せん相手ですな。ローランド殿、先程の者に案内させ、オークの群れを殲滅してください」

「はぁっ!? こっちは馬車代をケチられ、毎日無駄に歩かされ続けているんだ。その上、どうして金にもならないのに、魔物を倒さなきゃならないんだっ!」

「徒歩で移動しているのは、馬車の代金を惜しんでいるのではありません。ローランド殿の精神修行の一環です。そして、弱き者を助けるのは勇者の使命。周囲の村へ被害が出る前に、魔物を殲滅しなければなりません」

「だから、どうして俺がそんな事をしなければならないんだよっ! 倒したければ、お前が行けば良いじゃないかっ!」

「ローランド殿……よろしいのですかな? 私の指示に従っていただけなければ、貴殿は犯罪者として世界中に……」


 チッ……出た出た。何かあれば、すぐにこれだ。

 いっその事、こいつらを全員殺して、犯罪者として裏の世界で生きた方が良いのではないだろうか。

 今まではS級冒険者という肩書があり、その上勇者なので、ステラを始めとして、女の方から寄って来たし、グレイスやフィーネのように、声を掛ければすぐにパーティが組めた。

 ところが今は、どこへ行くにもオッサンに囲まれ、街へ着いても宿で寝る以外に何も出来ない。

 どうして、こいつらは夜の街へ繰り出すという、男として当然の行為を理解しないんだ!?


 ……落ち着け。こいつらを殺すと、もう後には引けなくなる。

 最後の手段を実行するのは、もう少しだけ――とりあえず、ダニエルの言う中央神殿とやらに着くまでは我慢だ。

 そこには女の騎士も居ると言うし、このオッサンたちを解散させて、その女騎士をパーティに入れると約束もしているからな。

 この際、多少年齢が俺より離れていたり、胸が小さかったり、顔がイマイチでも良い。勇者を導く立場を口実に、絶対襲ってやる!


「はぁ……クソ面倒臭いが、やれば良いんだろ。やれば」

「えぇ。魔王の眷属たる魔物は、全て根絶やしにする必要がありますからね」

「へいへい。それも勇者の使命なんだろ」

「もちろんです」


 イライラしつつも、オッサンに案内させてオークの近くまで行くと、上位種であるハイオークやオークメイジが居た。


「ふむ……六体ですか。半分私が倒しますので、残り半分をお願いいたします」

「オーク如き……いや、そうだな。半分は任せた」

「承知致しました」


 魔物の強さとして、ギルドがA級として位置づけしているハイオークなんて、俺からすれば雑魚でしかないのだが、面倒臭いのでダニエルに任せよう。

 というか、これまで魔物と遭遇しても、全部俺に倒させやがったからな。

 こいつの実力を見る良い機会だ。

 右半分をダニエルに任せ、俺は左半分を倒す事に。

 剣を抜き、一気に距離を詰めると、


「≪サンダー・ブレード≫」


 先ずはハイオークを一体始末する。

 続けざまにスキルを使用し、二体目のハイオークも倒す。

 その直後、


――CONFUSE


 オークメイジが幻覚魔法を使用してきた。

 ふっ……勇者の加護があるからか、俺は冒険者になってから、これまで状態異常に掛かった事なんて一度も……


「ローランド! 今まで、どこへ行っていたのよ。私、寂しかったんだからねっ!」

「エリー……俺もさ。じゃあ、寂しくさせてしまった分、今日は思いっきり可愛がってあげるよ」

「えぇ、そうね。私も、モニカさんには負けるけど、ステラやグレイスには無い、大きな胸でローランドを気持ち良くさせてあげるねっ!」

「エリー。今夜は寝かせないからなっ!」


 いつの間にか服を脱いでいたエリーが、俺を誘うようにして自らベッドに寝転んだので、その上に覆いかぶさる。

 あぁ……癒される。やはり、女は良いな。

 先ずはエリーの胸を楽しんだら、次はモニカとフィーネも可愛がってやらないとな。


「≪ハイ・リフレッシュ≫はぁ……ローランド殿、正気に戻られたかな?」


 突然オッサンの声が聞こえたかと思うと、全裸のエリーが掻き消え、首から上が無くなったオークメイジが俺に抱きついて……いや、俺が抱きついていた。


「……このクソ野郎がぁぁぁっ!」

「そのオークメイジがメスとはいえ、魔物に欲情するとは……精神修行を倍にする必要がありますな」

「違うっ! これは幻覚魔法を受けたからだっ!」


 勇者の加護はどうしたんだよっ!

 何故、幻覚状態に陥ったんだぁぁぁっ!

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