第162話 シノビの秘術
シェイリーが解析を始める前に、先ずは昼食にしようという事で、家へ帰ると既にリディアが準備してくれていた。
「むっ! また見知らぬ猫耳の幼女が増えているが、何やら変わった魔力を宿しているな。……獣人族ではないのか?」
「あぁ、色々あってな。元はミオが召喚した式神だったんだが、何故か突然こうなってな」
「ふむ。体内からアレックスの魔力を感じるし、下着姿だし、もしや既にこの幼女とも……」
「違うっ! 断じて違うからなっ!?」
「まぁ構わぬが……どうやら、この幼女はジョブを授かっていない様だ。つまり、人間でいうところの未成年となる。気をつける様に」
いや、何の注意だよ。
すぐ側にノーラとムギが居るから突っ込まないけどさっ!
「お兄ちゃん! 見てみてーっ! ほら、ムギがフォークを使えるようになったんだー!」
「おぉっ! ノーラ、ありがとう! ムギも頑張ったんだな」
「……人間の食べ方は難しいニャー。でも、凄く美味しいニャー」
うむ。リディアが作った料理だからな。
次は服を着てくれると助かるんだが。
「そうだ。ムギに色々と教えてもらっているところに悪いんだが、ノーラにやって欲しい事があるんだ」
「いいよー。なぁにー?」
「西の広場で、シェイリーが集中出来る家を作って欲しいんだが」
「分かったー! えっと、だけど、お昼からムギちゃんはどうするのー?」
「んー、ミオに頼むか」
ムギは、元々ミオの事を知っている訳だし、問題ないだろう。
「ミオ様、宜しくお願いしますなのニャ」
ムギがペコリと頭を下げると、
「任せるのじゃ。アレックスが悦ぶポイントや、弱点をしっかり教えるのじゃ」
「あ、人選変更。ユーディット、頼む」
「何故なのじゃっ!? この者は、身体の大きさが我とほぼ同じなのじゃ。この身体の小ささならではの、攻め方を……」
「ムギ。ユーディットが色々と教えてくれるから、一旦ミオの言葉は忘れるように」
ミオから危険な感じがしまくったので、教師を変える事に。
ムギが猫の姿の時に可愛がっていたし、ユーディットなら大丈夫だろう。
「……こう、床でゴロゴロ出来る感じにして欲しいのだ」
「ゴロゴロ? シェイリーが集中する為のお家なんだよね?」
「そうなのだが、ゴロゴロはしたい。疲れた時に、そのまま後ろへ倒れ、寝れるような感じだな。なので、椅子の要らない低いテーブルが欲しいのだ」
「ゴロゴロ出来て、低いテーブルで……が、頑張るね」
シェイリーとノーラがイメージの擦り合わせを始めたので、俺は食事の後片付けをしていると、サクラに呼ばれた。
「どうしたんだ?」
「あの、そろそろ本格的にツバキをどうにかしようと思いまして」
「あー、そうだな。人形経由で小屋を使って良いと伝え、作物も届けさせているけど、一人で居るのは寂しいだろうしな」
「そう、寂しいはずです。おそらく、自分で自分を慰めていると思われますので、やはりアレックス様のアレで、わからせるしかありません」
サクラは一体何を言っているのだろうか。
とりあえず、メイリンとサクラが洗脳? されている訳ではないという事を伝えなければならないのだが、どうしたものか。
「とりあえず、そのサクラの言う、わからせる……っていうのは無しだな」
「一番手っ取り早くて確実なのですが……」
「ダメだってば」
「……分かりました。出来れば使いたくありませんでしたが、そうも言っていられないので、シノビの秘術を使います」
「ん? 何をする気なんだ? それに秘術って……前に奥義を使っていなかったか?」
「あれは、拙者と分身とで同時攻めを行う房中術の奥義です。今回は、長き年月を共に過ごし、互いの事を分かっている者――つまり家族などにしか使えないのですが、拙者の感情をツバキに送るという術です」
サクラの感情を、ツバキに送る?
……いや、意味が分からないんだが。
「すまない。どういう事なんだ?」
「つまり、拙者がどれだけアレックス様の事をお慕いしているかを口で説いても、今のツバキは聞く耳を持ちません。そこで、拙者の感情をツバキに送る事で、拙者がアレックス様を前にして想い抱いている感情を、ツバキも感じる事が出来るのです」
「えーっと、つまり、サクラが感じた事を、ツバキも感じる事が出来るという事か?」
「はい。その術を使った後に、拙者がアレックス様大好き! と感じれば、ツバキもアレックス様大好き! と感じ、拙者の深層を覗かせる事が出来るかと」
なるほど。
いくら口で言っても伝わらないから、サクラの心を丸ごとツバキに見せるといった感じか。
「聞く限りでは有効だと思うが、サクラは良いのか? その、自身の感情が全てツバキに見られてしまうのだろう?」
「構いません。血を分けた実の妹ですし、アレックス様にご迷惑をお掛けしているのも事実。拙者の心くらいでアレックス様にお掛けしてる迷惑が解消出来るのであれば、安い物です。という訳で、拙者はこの術の準備に取り掛かります」
「準備?」
「はい。ツバキとは数年振りに会っておりますので、先ずは行動を共にし、互いの事を分からねばなりません。半日程、ツバキをからかって……こほん。観察して参ります」
そういうや否や、サクラがどこかへ駆けて行く。
上手くいって、サクラとツバキが仲良く過ごせるようになれば良いのだが。
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