挿話66 感覚がリンクしてしまったシノビのツバキ

「ツバキ、じゃあ私はそろそろ帰るわね」


 何だったのだろうか。

 昼過ぎにサクラ姉が来たかと思うと、攻撃したりしてくる訳でもなく、日常となっている森の中での修行を暫く眺め、時折アドバイスまでくれた。

 一時的にあの男の洗脳が解けたとか? それとも私の偵察?

 まぁいずれにせよ、あの男の所へ戻るらしい……早く、サクラ姉とメイリン様を正気に戻さなければ。


「あ、そうだ。ツバキ」


 そう言って、帰ろうとしていたサクラ姉が……一瞬で目の前に居た。

 速いっ! 私の動きを完全予測している!? まさか、ずっと修行を見ていたのは、私の動きを観察する為!?

 ここへ来て、ようやく洗脳されているサクラ姉の狙いに気付いたのだけど、


「≪感覚同期≫」


 私の額に触れながら、聞いた事のない術を使われてしまった。


「サクラ姉!? 今のは!?」

「ふふっ、そういえばツバキには未だ教えていなかったわね。まぁその内、分かるわ。どうしようもないくらいに困ったら、アレックス様の所へ来なさい」

「ど、どういう意味っ!?」

「じゃあ、また後でね」


 今度こそ本当に帰って行ったみたいだけど……一体、何だったのだろうか。

 今の所、身体に異常はないが、とりあえず額を水で洗ってみようと、小屋の近くのお風呂へ……な、何っ!? 何なの!?

 胸がドキドキして、身体が疼く。

 だ、だけど、身体が火照っているだけで、普通に動けるようだ。

 でも、何をされたかが分からないのが怖い……いや、怖いはずなのに、何かを好きだという気持ちが上回っている!?

 この胸の中にあるのは……あの男への好意!?

 さ、サクラ姉は、私に何をしたの!? まさか、洗脳!? サクラ姉がそんな事を出来るはずが……。


「あら、ツバキ。何してるの?」

「さ、サラ……」


 お風呂へ向かっていると、サクラ姉の娘のサラが現れた。

 というか、サラと同じくらいの背丈の女の子が十人くらい来ている?


「丁度良いわ。ツバキはこの前のお祭りに参加していないでしょ? たまには、あぁいうので息抜きした方が良いって、父上が皆でツバキを誘って欲しいって言っていてね。こうして、皆で一緒に夕食を食べようと思って来たの」

「そ、そうなんだ」

「えぇ。今日はいつもの房中術の修行とは関係ないから、男は連れて来ていないし、ツバキもリラックスしてね」


 そう言って、サラたちが手際よく簡易のテーブルや椅子を並べていく。

 どうやら、料理なども持ってきているらしく、外で食べようという事らしい。

 とりあえず、修行後なので汗を流したいと伝えてお風呂へ入ると、一生懸命額を擦ってみた。


「くっ……額に何らかの印を記した訳でもないのね。一体、何の術なのよ」


 相変わらず、ドキドキしたまま汗を流し終え、新しい服に着替えると、サラたちの所へ戻る。

 サラたちは普通に食事をしにきているだけで、サクラ姉とは関係無さそうだけど、油断は出来ない。

 謎の術を受けたという事を、一切顔に出さないようにして、何食わぬ顔でテーブルへ。


「この娘がね、リディアさんが作った料理を再現してくれたんだー。凄く美味しいから、沢山食べてね」


 そう言って、いろんな料理を皿に盛り、サラが先に口へ運んで行く。

 うん……毒とかが入っている訳ではなさそう。

 私やサクラ姉の師匠は、毒とかを多用するシノビではなかったからね。

 とはいえ、毒の勉強は死に掛けるくらいにしてきているし、この食事にそういった類が入っていないのは間違いない。

 なので、息抜きだと自分に言い聞かせながら食事を進め、女の子たちと何気ない会話をしていると、


――ッ!?


 い、いきなり私の中に何かが入ってきた!

 大きくて、身体の奥が掻き回されるっ!


「それでねー、あの時の……ん? ツバキ、大丈夫!? 顔が真っ赤だよ?」

「本当だ! どうしたの!?」

「な、何でもないの……だ、大丈夫だから」


 女の子たちが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

 だけど、言えない……き、気持ち良過ぎるからだなんて。

 一体、私の身体に何が起こっているの!? 当然ながら、テーブルの下には誰も居ない。

 というか、自分で触ってみたけど、何も入っていないのに、でも何かが入っている感じがずっと続いている。

 それどころか、物凄く激しく突かれていて、


「~~~~~~っ!」

「ツバキ!? ど、どうしたんだ!? 突然、ビクンビクンと震えだして……まさか風邪か? とりあえず、小屋に運ぼう」


 テーブルに突っ伏した所で、皆で私の身体を運びだす。

 待って。今は、ダメ……ダメダメダメっ! どうしてこんな事にっ!? 欲求不満なのは自覚があるけど、何故こんなタイミングで!?


「よし、ベッドに寝かせよう。ツバキ、汗を掻いているから服を脱がすぞ」

「だ、だめ……今は、ダメなの」

「これ以上、風邪を悪化させてはダメだ。脱がすからな……えっ!? 下着がぐしょぐしょなんだが……あ、そういう事? 男を呼んで来た方が良いか?」

「ち、違うっ! お、お願いだから、見ないでーっ! ……んぁぁぁっ!」

「凄いな。欲求不満が爆発すると、こんな事になるのか」


 その直後、お腹の奥に何かが注がれた感覚があって、限界を超えた私は、サラたちの目の前で熱い液体を激しく出してしまって……うわぁぁぁんっ!

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