第814話 ミオとフョークラ

「では、俺たちは先程話した人攫いの所へ行ってきます」

「アレックスよ。よろしく頼む。あと、帰ってきた暁には、分身がしてくれたのをまた頼む。一突きされる度に気を失いそうになる程、甘美な感覚に包まれる。やみつきになりそうだ」


 無事に……その、いろいろあったが、王女を国へ送ったので、ミオ、マリーナ、モニーと共にフョークラたちの所へ戻って来た。


「アレックス様! やっと戻って……むっ! この香り……ズルいです! 私にもして欲しいです!」

「いや、一刻も早く人攫いたちから、攫われた者たちを助けなければ」

「それはそうですが……あっ! そうだ。アレックス様たちがイベールへ行っている間に思い出したんですが、昨日他にも怪しい者を捉えているんです」


 そう言って、フョークラが土の塊の元へ案内する。

 何だろうか。小さな家くらいの大きさはありそうだが。


「あの男たちの仲間と思わしき者が、この小屋に居たので、土魔法で固めて逃げられないようにしておきました」

「なるほど。扉か窓の部分を開けられるか? 中の様子を確認したい」

「お任せください。……どうぞ」


 フョークラが精霊魔法で土の壁の一部を開けると、扉が出てきたので引いてみる。

 何の抵抗も無くドアが開き、中から影が踊り出るが……ナイフを持った女性だったので、たたき落とす。


「なっ……素手で私のナイフを!?」

「≪閉鎖≫」

「えっ!? う、動けない!?」


 結界を女性の身体ピッタリに張って動けなくしたので、一旦この女性は放置。

 小屋の中に人の気配がするので、先にそちらを……と思って中に入ると、下着同然の格好をした、二人の少女が怯えた様子でこっちを見ていた。


「君たち二人は何者だ?」

「あ、あの今出て行った女性は、どうなったのでしょうか?」

「武器を持っていたので、俺のスキルで動けなくした。で、君たちは?」

「それなら……わ、私たちは先程の人たちに攫われて、奴隷にされたんです」

「何だって!?」

「強制的に食事や掃除をさせられていました。えっと、証拠の奴隷紋です」


 そう言って、二人の少女が下着をズラし、下腹部に描かれた紋様を見せてきた。

 過去に見た事のある模様と同じだし、本当の事を言っているのだろう。


「奴隷紋か。以前、ケイトにもあったが、いつの間にか消えていたんだよな。マミやザシャが詳しいんだが、メイリン経由で聞いてもらおうか」

「アレックスよ。わざわざ聞くまでもないのじゃ。奴隷紋は、奴隷の主を殺せば消えるのじゃ」

「そ、そうなのか。確かマミの話では、奴隷の主と魔力で繋がれている……だったかな?」

「その通りなのじゃ。しかし、この奴隷紋は奴隷主の血で描かれておる為、他の者が魔力を辿れぬようになっておるのじゃ」


 なるほど。それは知らなかったな。

 という事は、ケイトの時のように、奴隷紋の魔力を辿って主を探すという事は出来ないのか。


「アレックスよ。心配せずとも、そこに一人何か知ってそうな者がいるのじゃ。我が簡単に吐かせてやるのじゃ」

「あ、そういうのなら、私もやりたいです! 毒系の植物なら任せてー!」

「よく分かんないけど、マリもするのー!」


 いや、ミオの拷問もフョークラの毒も、大丈夫か? 二人とも何か楽しんでいそうなんだが。

 あと、マリーナは遊びじゃないから、混ざらないように。

 とりあえず、俺のところへ来ようか。


「ひぃっ! ど、どうしてこんな所にダークエルフが居るのよっ! それに、残虐で有名な狐耳……」

「ほぉ。こんなに可愛らしい我が残虐とな? 何か別の種族と勘違いしておるようなのじゃ」

「ねぇねぇ、マリはー? マリの事は何か言ってくれないのー?」


 マリーナを抱っこして少し離したのだが、自分だけ何も言ってくれないと、頬を膨らませる。

 うん。むしろ言われない方が良いと思うな。


「じゃあ、お望み通り、最初は私からいくねー! ダークエルフ特性のお薬……飲み易くて美味しいから、グイッと全部いっちゃおうねー!」

「や、やめ……っ! ……の、飲んでしまった。お、教えてくれ! この毒は一体どういう毒なんだ!? 解毒薬は!?」

「待つのじゃ。まだ我の番がまだなのじゃ。そんな簡単に諦めてどうするのじゃ」


 いやあの、別に拷問する趣味はないから、相手が白状するなら、それで良いのでは?

 ただ、残念ながらミオが暴走気味で、俺には止められそうにない。

 だが、奴隷を扱うような者たちだ。

 流石に命まで取るようなら庇うが、それまでは俺も助けるつもりはないから、頑張ってくれ。

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