第433話 六合教の魔術師?

「話す……何でも話すから、そのシャドウ・ウルフを何とかしてくれ」

「いや、お前が出したシャドウ・ウルフだろ」

「それはそうだが……あぁぁぁ、お願いしますぅぅぅっ!」


 床に座り込んだ男が、そのまま後ろへズリズリと下がっていき、壁にぶつかり……半泣き状態に。

 とりあえず、シャドウ・ウルフを俺の横まで下がらせてやった。


「で、シャドウ・ウルフを召喚とは、どうやったんだ?」

「六合教の奴らです! 奴らが、いざという時の為にどうだ? と持ちかけて来たんです。だから、どうやったか方法までは分からないんですっ!」

「それは、六合教の司祭か?」

「いえ、司祭とは違う魔術師風の男です。名前は聞かされていなくて……本当なんですぅぅぅっ!」


 ふむ。シャドウ・ウルフを一歩前に出したら本気で怯えているし、どうやら本当の話をしているようだな。

 しかし、六合教にそんな奴が居たのだろうか。

 ……あー、カスミが潰した王都ベイラドの闇ギルドとかに居たなら、わからないな。

 シャドウ・ウルフを街の中に召喚だなんて危険過ぎる事は、絶対にやめさせないとな。


「あと、お前たちは他の街――ウララドやエリラドで呪われた装飾品を売らせ、女性を攫ったりしていたな。この呪いの品は、どうやって作ったんだ?」

「そ、それを知っているという事は、もしかして各地の支部を潰している謎の男というのは……」

「あぁ、俺の事だ。で、どうやったのか説明してもらおうか」

「そ、それは……」

「シャドウ・ウルフに、ちょっと遊んでもらおうか」

「ま、待ってくれ! そうじゃない。言わないんじゃなくて……これも六合教から回された品なんだ。呪いや魔法に関するものは、全て六合教からなんだ! 言い淀んだのは、何でも六合教だから、信じてもらえないのではないかと懸念しただけだ」


 また六合教か。

 とはいえ、六合がその手のアイテムなどを作るようには思えない。

 仕方ない。クララが目覚めたら六合教の教会へ戻り、司祭から聞き出すか。


「さて……各街の闇ギルドがやっていた悪事をこの目でしっかり見てきている。その何れも、お前が元凶なんだよな」

「そ、それは……ち、違うっ! 俺は指示をしただけで、実行したのはそいつらで……」

「尚悪いっ! ……あ、しまった。≪ミドル・ヒール≫……生きてるか?」

「うぐ……」


 普段は手加減して殴るところだが、それに気付いたのが殴る直前で、いつもより少し強めに殴ってしまったが……大丈夫のようだ。

 それから、闇ギルドがある街を全て喋らせた。

 各街を回っていると、かなり時間がかかってしまうが……どうしたものか。

 それは後で皆に相談する事にして、こいつらをどうするかだな。


「お前と、壁際で倒れている四人が闇ギルドの幹部だな? 自警団に突き出しても良いのだが……どうせ、自警団の団長や副団長あたりに、闇ギルドの息がかかっているのだろう?」

「……な、何の事でしょうか? ……そ、そうです! この街の自警団の長も、我々の同志ですっ! だから、シャドウ・ウルフは……シャドウ・ウルフはぁぁぁっ!」

「わかった。とりあえず、自警団のトップを潰してくる。この街の地図はあるか? ……あの壁に掛かっているのがそうか」


 壁に張ってある地図をはずして懐に入れると、倒れている男たちを引っ張って来る。

 闇ギルドの長が漏らして床が濡れているが、それはさておき、五人を一ヶ所に固めると、


「≪閉鎖≫」


 結界スキルで動けないようにしておいた。


「今から、自警団の長を潰してくる。お前たちは、それまでここで動くな……というか、動けないので待っているように。あと、見張りとしてシャドウ・ウルフを置いて行くから」

「えぇっ!? シャドウ・ウルフは勘弁してください……あぁぁぁ、待って! 置いてかないでぇぇぇっ!」


 闇ギルドの長が奥で喚いているが、完全に無視してクララをおんぶしたまま部屋を出ると、


「お兄さん! 見て! 触って! ほらほら、ちょっとだけで良いからぁぁぁっ!」

「お願いっ! 先っちょだけ……ほんの少しだけでも良いから触ってよぉぉぉっ!」


 通路の横にある牢屋の中で、数人の女性が全裸になって、鉄格子の隙間から大きな胸を……いや、何をしているんだ?


「すまん。出来るだけ早く戻って来て助けるから、少しだけ待っていて欲しい」

「男……待って! 挿れてぇぇぇっ!」


 変な叫び声を掛けられながら闇ギルドを出ると、地図を……って、これ現在地はどこなんだ?

 街の入り口とかではなく、闇ギルドの場所に印がしてある訳でもないので、早速迷子になってしまった。

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