第480話 玄武探しの航海再開

「えぇーっ! アレックスさんは、船で行っちゃうのっ!? しかも、私たちは乗れない程に小さな船っ!?」

「そうだな。十人が限界といったところだろう。それに、俺たちの仲間が危険だから、早く助け出さないといけないんだ」

「うぐっ! 我らアマゾネスの守り神、天后様。どうにか、私たちもアレックスに愛してもらえるようにする手はないだろうか」


 ラヴィニアに抱きつかれ、サマンサが天后に訴えかける。

 というのも、逢瀬スキルを使って魔族領側が大変な事になっているが、分身が八体しか居ないので、それほど腰に負担がなく、時間もないのでこのまま出発する事にした。

 とはいえ、アレは出続けてしまうのだが、その……結衣が全部飲んでくれると。

 玄武の事がなければ、こんな状態で移動なんて絶対にしないのだが……仕方が無い。


「そうですね。出来れば私もアレックスと一緒に行きたいと思っていますの。しかしながら、船の定員を遥かにオーバーする人数が乗れば、如何に私の力を使っても、沈んでしまいますの」

「そんなぁ」

「ですが、サマンサのいう通り、アレックスのアレは欲しいですし、逢瀬スキルは女性側が妊娠している事を自覚していないとダメだし……そうですね。では、こうしましょう!」


 そう言って、天后が手を空に掲げる。

 リディアが船に乗っても大丈夫なように、揺れを押さえてくれた時と同じだが、また何かしてくれたのだろうか。


「これで、大丈夫ですわ」

「天后は一体何をしたんだ?」

「今、この崖の下に泊まっている船の位置を転移地点といたしましたの」

「……どういう事だ?」

「あの船が、この海の上にある限りは、いつでもあの場所へ戻れるようにいたしましたの。もちろん事が済みましたら、元の場所へ戻る事が可能ですわ」

「つまり、モニカの転移スキルの船バージョンという事か」


 モニカとクララが使える転移スキルは凄く便利なのだが、本人を除くと俺しか使えないのがネックだったからな。

 それが船ごと転移出来るようになるというのは、かなり凄いと思う。

 とはいえ、場所が海の上に限定されるのと、モニカのスキルのように、両方の位置を変更出来る訳ではなさそうだが。


「これなら、アレックスの船が泊まったところで、私が船を転移させれば一件落着ですわね」

「おぉっ! 流石は天后様だっ! 我らはこの地を動かなくとも、アレックスが毎晩来てくれるという訳か」

「あ。そちらの竜人族の方は、海竜種と見受けられますが、船を何処かに泊めたら、速やかに船へ乗ってくださいね? 船に乗って居ないと、転移スキルの対象となりませんので」


 天后の説明で、レヴィアがわかったと頷き、改めて出発する事に。


「では、アレックス。夜にお呼びしますわ」

「アレックスさん。ちゃんと戻って来て下さいね」

「アレックスー! チェルシーちゃんが待っているからねー!」


 天后とアマゾネスたちに見送られ、かつ結衣に頑張ってもらいながら船へと戻る。


「あなた、おかえりなさい。途中から、私一人になってしまったから、状況がわからないんだけど、教えてくれるかしら? とりあえず、この船にもの凄い魔力のコーティングを感じるんだけど」


 レヴィアたちを呼んだため、暫く一人にしてしまっていたラヴィニアに事情を説明し、早速出発する事にしたのだが、


「あなたー! 今の話からすると、これまでみんなであなたに愛してもらい、今も魔族領に居る方たちは愛してもらっているのよね? それなら、結衣さんの代わりに、私にしてください!」

「あー……そ、そうだな。ラヴィニアだけ仲間外れみたいな形になってしまっているもんな」

「うふふ……では、レヴィアさんが休憩されるまで、お願いいたしますね」


 そう言ってラヴィニアが抱きついてきたのだが……リディアやミオたちが羨ましそうに見てくる。

 何というか、分身しろ……という無言の圧が掛かっているようだ。


「レヴィアたんは頑張って泳ぐから、アレックス……後で、ご褒美よろしく」

「えっ!? あ、あぁ、そうだな」

「あなたー! では私に……っ! やっぱり、あなたは凄く素敵よぉぉぉっ!」


 ラヴィニアは水が近くにないとダメなので、甲板でしているのだが、家の中から皆の視線がキツい。

 そう思って居ると、


「アレックスー! いってらっしゃーい! ……って、ズルいっ!」

「アレックスさん! 夜は私たちの番ですからねーっ!」

「やっぱりチェルシーも、一緒に行きたかったよーっ!」


 崖の上からアマゾネスたちが見送ってくれて……益々視線がキツくなってしまった。

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