第794話 大宴会

「それでは、アレックス様のご訪問を祝って、乾杯!」


 マーガレットの挨拶で、宴が始まった。

 正直言って、何の宴なのかはわからないが、立食パーティが始まっている……俺が泊めてもらうはずの部屋で。

 いや、無料で泊めてもらう訳だし、食事に温泉まで提供してもらうのだから、何一つとして文句を言うつもりはないのだが……この宿の従業員が集まり過ぎではないだろうか。

 ……ちなみに、本当にどうでも良い余談だが、グレイスは未だに戻って来ず、結局結衣に頑張ってもらってしまっている。いつも本当にすまない。


「アレックス様。この温泉のおかげで人が増え、各地から様々な人が集まっております。本日の料理も、有名なお店で修行を積んだ、我が宿の料理長が気合を入れて作っておりますので、どうぞお楽しみください」

「あ、あぁ。ありがとう……うん。確かに、旨い。河が近くにあるし、魚料理がメインなのか?」

「はい。それに、後ほどアレックス様にしか出さない、スペシャル料理も出て参りますよ」


 そう言いながら、マーガレットがもたれかかって来る。

 いやまぁ、既に関係があり、妻の一人なので何も言わないが……とりあえずマリーナやニース、モニーの前ではやめような。

 ……いや、流石にそれが分かっているから、大部屋が二つあるのだろうが……うーん。


「アレックスー! ごはん、美味しい!」

「そうか、それは良かった。マーガレットに感謝だな」

「うん! ありがとー!」


 マリーナがマーガレットに笑顔を向けると、


「お嬢ちゃん。向こうの部屋に、美味しくて甘いデザートやジュースが用意してあるわよ」

「甘いデザート!? マリ、行ってくるー!」


 マーガレットに誘導され、マリーナが早くも隣の部屋へ。

 そして、その様子を見た従業員の女性たちが、ギラッと俺に目を向ける。

 いやあの、早くないか!? とりあえず、せっかく用意してくれたっていうスペシャル料理? を食べてからにしないと、料理長が泣くぞ?


「そちらのお嬢さんも、どうかしら。とっても美味しいわよ」

「ふっ、そんな子供騙しに引っかかるとでも? 甘いデザートよりも、父上のアレの方が美味しいに決まっているわ! だから……私も混ぜてくださいっ!」


 マーガレットから声を掛けられたモニーが、土下座する勢いで頭を下げる。

 だが、モニーは絶対にダメだ。


「モニーはマリーナを見ていてくれないか?」

「それはつまり、マリーナ殿を見ていれば参加しても良いと?」

「いや、そんな訳ないだろ」

「うぅ……では、せめて今晩は父上と一緒に寝させてください!」

「まぁそれくらいなら……」

「約束ですからね? 分身じゃなくて、父上が来てくださいよ!」


 そう言って、モニーが隣の部屋へ。

 まぁ約束だし、マーガレットたちには分身を残して、俺は向こうの部屋へ行くか。


「ふふっ、アレックス様ったら。娘さんたちを別部屋に移動させて……早く楽しみたいんですね?」


 あ、今のはそう捉えられるのか。

 俺が急かせているみたいに思われたけど、違うからな!?

 これだけ狙われていて、分身を出すのが回避出来なさそうだから、せめてマリーナやモニーが巻き込まれないようにしているだけだからな!?


「……ママー。マーガレットがパパに大事な用があるみたいだし、ニースも向こうの部屋に行っているねー」

「それなら、ニナも行くよー。ニースが頑張ったお話をもっと聞きたいからねー!」

「うんっ! ママ、行こーっ!」


 って、ニースまでっ!? じゃあ、もう誰も残っていないのか!?


「アレックス様。宴もたけなわではございますが……」

「いや、始まったばかりだと思うんだが」

「本日のメインディッシュ……アレックス様を皆で頂きたいと思います! 皆さん、アレックス様に愛していただいた思い出を糧に、今まで頑張ってきましたが、その想いを遂にぶつける時がやって参りました! この時をどれ程待ち望んだが……アレックス様ぁぁぁっ!」


 一瞬でマーガレットが全裸になり、部屋に居る従業員の女性たちも全員がほぼ同時に服を脱ぐ。


「……アレックス。レヴィアたんに一体分身は残しておく事。ここまで来るの頑張った」

「アレックスー! えへへー、楽しみだねー!」

「ひ、ひぃっ! こ、これがインキュバスの真の力なのっ!?」


 マーガレットたちに混ざって、レヴィアやトゥーリアも裸になり……誰か変な事を言っていたような気もするが、


「はぁ……≪分身≫」


 ここに居る全員を相手にすべく分身を出し、俺は隣の部屋へ行ってマリーナやモニーと過ごす事にした。

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