第77話 恋愛成就スキルとメイリンの想い

「ご、ご主人様……そろそろ。そろそろ良いですよね? シェイリー殿の所へ……」


 昼食を終えたところで、もう我慢出来ないと言った様子でモニカが催促してくる。

 一先ず現状を確認すると、人形たちの家が四軒になり、それぞれに四組の家族? が住むようになった。

 それに加えて、四組の家族には十分過ぎる広さの畑を作り、小麦や大豆に、キャベツやトマトなど、穀物や野菜をバランス良く生やしてある。

 人形たちは土の精霊魔法を使えるから、作物を大きく育てる事が出来るし、リディアの人形も居るので、その気になれば新たな作物を生やす事も可能だろう。

 水も出せるし、料理も出来る。

 一先ず、衣類や毛布以外は足りているのではないだろうか。

 ただ、衣類の代わりにウサギの毛皮。毛布の代わりにワラのベッドになっているのは、申し訳ないところだが。


「じゃあ、改めて朝に決めた作業に移ろうか。ノーラは、家の代わりに人形たちのテーブルや椅子を頼む」


 ノーラが笑顔で承諾してくれたので、改めて全員で小屋に移動すると、


「皆さん。僕たちに家を作ってくれて、ありがとうございます」

「作物の育成や収穫は、私たちにお任せください」

「めいりんママ、ありがとー!」


 人形たちの四家族全員からお礼を言われ、見送られる事に。

 改めて、俺とエリー、モニカとフィーネで地下洞窟へ行こうとすると、


「ま、待った。わ、妾もそちらへ行こう」

「えっ!? メイリン……その、今日は黒髪の一族の話ではないぞ?」

「わ、分かってる。その……青龍様に聞きたい事があるのだ。人形たちなら、離れていても会話が可能であるし、妾も連れて行ってくれぬか?」

「いやまぁ、俺は構わないが、シェイリーの所へ行くと……その、すぐに話は聞けないぞ?」

「わ、分かっておる」


 顔を赤く染めたメイリンが、シェイリーの所へ行くと言いだした。

 これまでと違って、エリーと一線を越えてしまったし、モニカもフィーネも、そういう事をしてきそうなのだが、メイリンは良いのだろうか。

 一応、今日起こると思われる事を小声で伝えると、


「……き、気にするでない」


 それでも行くという回答が返って来た。

 本当に大丈夫なのだろうか。

 そんな事を思いつつも、メイリンを加えた五人でシェイリーの社へ行くと、


「よく来たな。さて、フィーネよ。先ずは約束通り、ウィッチのスキルまじないについて、我が知っているものを教えてやろう」


 いつもとは違い、真面目な話から始まる。

 どんな効果があるのかと、俺もフィーネと一緒に話を聞いているのだが、どうしてシェイリーの背後……俺の視界に映るところで、モニカは既に服を脱いでいるのか。

 いや、モニカが何をしたいかは分かっているんだけどさ。


「……という訳で、我が知っているウィッチのまじないは以上だ。もちろん、我が知らないだけで、まじないは他にもあるだろうがな」

「ううん。シェイリーちゃん、ありがとう!」

「では、早速一つ使ってみるが良い。そうだな……今は、恋愛成就のまじないが良いだろう」


 シェイリーの指示に従い、フィーネがスキルを使用するが……これは成功したのか?

 特に何も変わった様子は無いのだが、


「さて、メイリンよ。今はウィッチのスキルで、お主の願いが叶い易くなっているぞ。さぁ胸に秘めている想いを吐き出すのだ」


 シェイリーがメイリンに何かを促している。

 すると、


「あ、アレックス殿。その、妾の人形たちのように、妾も……妾も子供が欲しいのだっ! アレックス殿に妻のエリー殿が居るのは承知している。心までくれとは言わぬから、妾にアレックス殿の子供を授けてくれぬか?」


 メイリンがとんでもない事を言いだした。

 メイリンは、風呂でも常に隅っこに居て、チラチラとこっちを見ているだけだったが、人形の子供たちを見て気が変わったという事か?


「メイリン……あのな、流石に恋人でも無いのに子供を作るというのは、マズいと思うのだが」

「アレックスは、妾の事が嫌いなのか? やはり、エリー殿の手前、ダメなのか? しかし、モニカ殿たちは子種を飲んでいるではないか」

「いや、俺はメイリンが好きでもない男と子供を作るのがどうかと思う訳でさ。モニカたちはエリーと同じく恋人関係にあるから」

「なんと、全員がアレックス殿の妻だったのか。では、アレックス殿。妾もアレックス殿の妻にして欲しい」


 そう言うや否や、メイリンにキスされ、


「うむ! メイリンも参加する事となったし、これより全員でアレックスの子種をもらおうではないか」

「ご主人様ーっ!」

「おまじないスキルって、すごーい! メイリンさんとアレックス様が結ばれちゃった。あ、でもキスし過ぎはダメだからねっ!」


 シェイリーの言葉で全裸のモニカが突撃してきて、フィーネが喜びだす。

 ただ、これは恋愛成就と言うのか?

 個人的には疑問だが、フィーネが喜んでいるので、良しとする事にした。

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