第586話 心の中で謝るアレックス

「アレックスさん、ありがとう! 娘からは、妊娠間違い無しの、凄いプレイ……こほん。凄い量だったと聞いたぞ。いや、おかげでこの村も助かるよ」

「ははは……そ、それは良かった」

「そこで、どうだろうか。玄武様を助けるという目的があるのは知っているが、もうこんな時間です。空き家が一つあるので、是非泊まって行ってくれないだろうか」

「そ、そうだな。時間も時間なので、甘えさせてもらおうか」


 理屈は分からないが、魔物や魔族は夜の方が狂暴になる。

 なので、冒険者だって夜になる前に街へ帰り、翌朝から狩りをするのが普通だ。

 シェイリーと共に魔王へ戦いを挑んだ玄武を捕らえ、かつレヴィアの本気の一撃を弾くような相手と戦うのなら、流石に夜は避けるべきだろう。

 明日こそ……明日こそは玄武を助ける。

 心の中で玄武に謝ると、ユーリと共に夕食をいただき、風呂へ入る事に。


「パパー! おねーさんたち、おもしろかったよー!」

「あー、遊んでもらっていたんだったな。どんな遊びをしたんだ?」

「えっとねー、じんとりゲームってゆーので、あそんだのー」


 陣取りゲームか。いわゆるボードゲームってやつだろうけど、俺も子供の頃に近所の友達と一緒に遊んだな。

 ただ、残念ながら俺は弱いのだが、いろいろと考えるのは楽しいよな。


「俺が子供の頃は、チェスをしていたんだが、ここではどんなゲームだったんだ?」

「えっとねー、りょーちけいえいものだよー!」

「領地経営もの? な、何だか凄いんだな。ちなみに、どういうルールなんだ?」

「んーとね、それぞれが、きぞくなんだけどー、メイドさんとかー、まちむすめとかー、おどりこさんとかー、いろんなおんなのこと、こどもをつくって、どっちがより、はんえいするかっていうのをきそうのー」


 プレイヤーが貴族で、様々な女の子と子供を作って、繁栄するかを競うゲーム……って、大丈夫なのか!?

 考え方が危なくないか!?

 一夫一妻制だって言っていたじゃないかーっ!

 風呂でユーリと話していると、


「アレックスさん。お背中をお流し致しますね」

「アレックスさーん! クロエが洗ってあげますー!」

「えへへ、アレックスさん。くっつきに来たのー!」


 オリヴィア、クロエ、シャーロットの三人がやって来た。

 当然、三人とも全裸で……いきなり来たから、ユーリがちょっとビックリしていたじゃないか。


「三人共。もう夜だし、家に帰った方が良いんじゃないのか?」

「いえ、大丈夫です。もちろん、父と母に許可は取っておりますので」

「というか、お母さんが行っておいでーって言ってくれたもんねー!」


 オリヴィアとシャーロットの母親は何を考えて……いや、考えている事はわかるんだけどさ。


「クロエは……」

「はい。クロエは、確実に子供を授かるように、一晩中してもらいなさいって、お父さんとお母さんに言われたので、大丈夫です」


 何一つ大丈夫な要素がないと思うんだが。


「あ、パパー。ユーリはそろそろ、おへやでねるねー! おやすみー!」

「いや、まだ風呂へ入って、そんなに時間は経ってない……って、とりあえず、身体を拭こう。待ってくれ」


 ユーリは一人で着替えられないので、身体を拭いてあげ、服を着せて、布団が敷かれてある寝室へ連れて行く。

 当たり前のように、オリヴィアたちがついて来ていて、俺がユーリを布団に寝かせると、三人掛かりで風呂へ連れて行かれる。

 だが、ユーリが眠る部屋の扉が閉められる直前に、


「あ、そうだ。パパー、リディアが、じょーきょーをおしえてーだってー! じゃあ、こんどこそ、おやすみー!」


 こんな言葉が聞こえて来た。

 リディアに状況を伝えるのであれば、ユーリからメイリン経由で伝えてもらいたいのだが……逢瀬スキルを使うしかないか。


「すまない。俺のスキルで仲間たちと連絡を取るので、暫く俺が動かなくなる。別に死んでいる訳ではないから、心配しないでくれ」


 水中呼吸スキルはあるものの、万が一俺が窒息したら困るので、一旦リビングへ戻ると、そこで逢瀬スキルを使う事に。


「凄い……そんなスキルがあるんですねー」

「アレックスさんはパラディンなんですよね? クロエも、そんな格好良いジョブが良かったなー」

「シャロはどんなジョブを授かるのかなー? 楽しみー!」


 一瞬、変な言葉が聞こえた気もしたが……逢瀬スキルで俺の意識がリディアの所へ行ったので、ハッキリとは聞こえなかった。

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