第490話 アレックスの弟子!?

「さて……小川の先が獣人族の村だという話だったな」

「え? どちらへ?」

「あぁ、ちょっと獣人族の村へ行ってくる」

「お、お待ち下され! 逃がさ……こほん。気絶している村の娘たちの選択も聞きたいですし、一晩泊まっていってくだされ」


 良い情報を聞いたので、すぐに獣人族の村へ行こうとしたのだが、長老に止められてしまった。

 獣人族の村へ行き、ノーラの話を聞いたら戻ってくるつもりだったのだが、相応の事をしているので、村長の言う通り、一晩泊まっていく事にした。


「しかし、ただ泊めてもらうだけという訳にはいかないな」

「え? な、何を!? 正直な所、何もせずに何処かでジッとしてもらうのが一番ありがたい……」

「まぁ聞いてくれ。俺はエルフの女性……今は妻なのだが、その妻と一緒にゼロから村を作ったんだ。妻の助けが物凄く大きいのだが、俺一人でも農作業くらいは出来るぞ」

「えーっと、王様なんですよね?」

「あぁ。ゼロから国が出来た。まぁ任せてくれ。あ、魔物退治でも良いぞ。言ってくれれば、請け負おう」

「そうまで仰るのなら。では、誰か案内を……お、男限定で誰かにしてもらおうか」


 村長が周囲を見渡し……何故か男たちが下を向いて目を逸らす。

 女性にならともかく、男にここまで嫌われてしまうとは。

 どうしたものかと思っていると、十代前半といった感じの少年が手を上げる。


「村長ー! オレが案内するよー!」

「おぉ、やってくれるか。メルヴィンなら男だし、問題ないじゃろ。…………問題ありませんな!?」

「何も問題無いと思うが?」

「実は両刀とか……いや、何でもありません」


 村長が何を言いたいのか分からず、メルヴィンと呼ばれた少年と共に首を傾げる。


「じゃあ、村長。あとはオレに任せて! さて、先ずは畑を耕すんだ! 王様、ついて来てくれ!」


 そう言って、少年が走り出したので、慌てて俺もついて行く事に。

 とりあえず、王様という呼び方はやめてほしいのだが。


「……あいつ、もしかして自分の仕事を押し付けたいだけじゃないのか?」

「……まぁあの者を娘たちから離せればそれで良い。あの者が本当に国王なら和解金をたんまりもらい、もしも嘘だったら、村で十年ほどタダ働きしてもらおう」

「……村長。その場合、この村が奴の子供だらけに……いや、何でもない」


 後ろで村長たちが何か話し合っているようだが、ひとまず俺たちはメルヴィンの後をついて行く事に。

 ちなみに、ラヴィニア用に大きな桶を借りている。

 流石にラヴィニアを一人残していく訳にはいかないからな。


「……師匠。凄いな。そんなに大きな桶……しかも、奥さんと水がたっぷり入っているのに、軽々持ち運ぶなんて」

「まぁ腕力と体力はあるからな。しかし、その師匠というのは何だ?」

「へへへ……よくぞ聞いてくれました! 師匠! オレも師匠みたいにハーレムを作りたいんですっ! 先ずは何から始めたら良いですか!?」

「いや、ちょっと待ってくれ。何か大きく勘違いしていないか?」

「何がですか? あ、大丈夫です。師匠が囲っている村の女には手を出しませんよ。そもそも、人間の女に興味無いんで。俺も師匠と同じで、ケモナーっていうか、けもみみでモフモフで尻尾のある獣人ちゃんのハーレムを作りたいんですっ!」


 えーっと、メルヴィンが凄い事を言いだしたが、既に勘違いだらけだからな?


「あのな。俺はハーレムなんて要らないんだ。ただ、俺と親しくなった女性を守りたいだけなんだ」

「でも、その結果奥さんが三桁居るんですよね?」

「パパはねー、凄いんだよー! 別の大陸にあるパパの村は、住んで居る人全員がパパの奥さんなのー! あの村だけで数十人居るんだー!」


 ニース!? おそらくウラヤンカダの村の事だろうが、あの村は……あー、ニースの言う通りか。


「師匠、すっげーっ!」

「まだあるよー! 獣人族だとー、兎耳族さんの村人も、子供以外全員パパの奥さんだもんねー!」

「う、兎耳族っ!? あ、あの性欲お化けと言われる伝説の!? 男が遭遇したら、死と引き換えにこの世のものとは思えない快楽を味わえるという……あれ? でも、生きてる?」

「ふっふっふー。パパが兎耳族さんに負ける訳ないでしょー! パパが本気を出したら、逆に兎耳族さんたちが気絶するくらいで、メロメロなんだからー!」

「うぉぉぉっ! 師匠っ! まずオレは何をすれば良いですかっ!? やっぱりアレですか!? アレを鍛えるべきですかっ!?」


 あの、ニース? 人形やメイリン経由でいろんな情報が伝わっているのだろうけど……火に油を注いでどうするんだよ。

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