第491話 肉体労働に勤しむアレックス
「メルヴィン。とりあえず、やるべき事をやろう。仕事があるんだろ?」
「おっと、そうでした。二人でやればすぐに終わるので、チャチャっとやって、獣人族もヤっちゃいましょう!」
仕事だぞ? 仕事をやるんだぞ!?
メルヴィンによるも、昨日から村で新しく畑を拡張しようとしていたところらしく、拡張する土地の割り振りまでは終わっているらしい。
で、メルヴィンは自分の家に割り当てられた新たな畑を親から任されたらしく、その半分を俺に手伝って欲しいそうだ。
「師匠! 鍬はコレを使って下さい」
「んー……ニース。この鍬、鍛治魔法で強化出来るか?」
「うん、任せてー! 手入れしていないみたいだし、メンテナンスも一緒にしちゃうねー」
そう言って、ニースが俺とメルヴィンの鍬を強化していく。
「え? えぇっ!? 師匠……どういう事ですか?」
「あぁ、ニースはドワーフなんだよ」
「ドワーフ!? あの伝説の!? ……師匠、すげぇっ! まさかドワーフも娶っていたなんて!」
驚くメルヴィンを他所に、ニースが素早く作業を終えてくれて、二本の鍬が新品同様に。
「さて、やるか」
「そうっすね……な、何ッスか!? か、軽く振っただけで、簡単に耕せるっ! す、凄いッス!」
「そうだろ? ニナ……やニースの鍛治魔法は本当に凄いからな」
俺も装備一式を強化してもらったし、メンテナンスもしてもらっている。
今回は船で海へ行くからと、鎧は魔族領に置いてきたが、剣と盾は強化に軽量化、錆防止と至れり尽くせりだ。
「ん? ……って、師匠っ!? も、もうそんなに耕しているんですかっ!?」
「え? 普通にやっているだけだが?」
「いやいやいや、ドワーフの鍬を使っても、そこまでの速さは無理ですって! というか、もう終わりかけているじゃないですかっ!」
「まぁそうだな。……せっかくだから、他の畑もやっといてやろう」
「えぇっ!? その時間でオレに師匠のハーレム道の教えを……って、本当に速いっ! 軽々振っているけど、ドワーフの鍬だって軽くは……というか、速過ぎて鍬の残像しか見えないっ!」
まぁ畑は魔族領でめちゃくちゃ作ったからな。
それに、ここは魔族領よりも土が柔らかくて掘りやすい。
なので、あっという間に全面耕してしまった。
「メルヴィン。次は何をするんだ?」
「えっ!? じゃあ次はオレにアレを……」
「お兄ちゃーん! 王さまー! きゅーけーにしよー!
メルヴィンが何か言いかけたところで、幼い女の子が包みを持ってやって来た。
「あ、ミリア! ちょうど良い所に! ……って、ミリアは女なのに、師匠の所へ来て良いのか?」
「ししょー? ……王さまのことー? んーとね、ミリアはまだ月のものが来てないだろうから、よいだろう……って言ってたよー! よくわからないけどー、お兄ちゃんはわかるー?」
「うーん。何が来てないんだろうなー? 兄ちゃんも分からないけど、それよりミリア。師匠の事は……そうだな。先生とお呼びするように」
「そうなのー? 王さまで先生なんだー! 先生は何を教えてくれるのー?」
「もちろんハーレムの作り方だ」
「ハーレム? 先生ハーレムって、なーにー? ミリアも作れるー?」
ミリアと呼ばれた十歳くらいの女の子は、メルヴィンの妹なのだろう。
メルヴィンの言う事を素直に聞いて、俺の事を先生と呼んでくるが……うん。とりあえず、待ってくれ。
ハーレムの作り方なんて知らないし、教える気もないからな?
適当にごまかしていると、ミリアがメルヴィンに向き直る。
「お兄ちゃん。さっき、ちょーどいぃところにー……って、何の話だったの?」
「あ、そうそう。師匠! 俺の妹ミリアです! ミリアを使って、俺にハーレムの作り方を……獣人たちをゲットするための、アレの方法を教えてください!」
「よくわかんないけど、せんせー! ミリアも教えてほしーい!」
いや、どれをだ!? というか、何の話なんだよっ!
「師匠! お願いしますっ! ミリアで見本を見せてください!」
「せんせー! ミリアで見本? 見せてー!」
「ミリアも、こう言ってますし、師匠! お願いします!」
「お願いしまーすっ! ……って、どうしてお兄ちゃんは、ミリアのスカートを脱がすのー? くすぐったいよー」
これ、絶対ダメな奴だろ。
「却下。そういうのは、大人になってからにしような」
「師匠。この村では、十三歳で成人です。だから、俺はもう大人だよ」
「ミリアは、あと三年で大人ー!」
……うん。ダメ、絶対!
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