第313話 人魚族のラヴィニアから得たスキル
「アレックス様。木材はこれくらいあれば十分です」
「わかった。じゃあ、戻ろうか。ソフィ、頼む」
「承知しました。では、戻りますね」
木こりのジョブを授かっている熊耳族の少女に、ソフィとシーサーと共に壁の上へ戻って、北西エリアの森へ。
それなりの量の木をシーサーに運んでもらい、東の休憩所へ戻る為に魔導列車へ向かっていると、
「アレックス。ちょっとだけ良いかしら?」
途中で眉をひそめるエリーが待っていた。
「エリー、どうかしたのか?」
「うん。メイリンさんから聞いたんだけど、アレックスの昔の恋人が現れたって聞いて……」
「ん? 誰の事だ?」
「ラヴィニアさんっていう、凄く綺麗な人だって」
あー、サクラの人形から伝言ゲームになり、歪曲されてエリーに話が伝わっているのか。
「ラヴィニアは初対面だ。さっき会ったばかりだし、そもそも人魚族だったぞ」
「人魚族!? アレックスは人魚族の人と恋人関係にあったの!?」
「いや、違うから。そもそも、俺とエリーは十五歳でジョブを授かった時からパーティを組んで一緒に居ただろ? その間に、人魚族と出会った事なんてあったか?」
「無い……というか、人魚族って天使族並に珍しいから、私は未だに会った事が無いわね」
「だろ? ラヴィニアが色々と勘違いしているんだよ。本人には何度も伝えたんだけどな」
「けど、そのレアな天使族の人たちも、今となっては普通に見るようになっちゃったのよね。最近も、天使族のアーシアさんっていう人が来て、アレックスが居ないって伝えたら、また来るって言ってすぐに帰っちゃったしさ」
俺が居ない間に、そんな事があったのか。
アーシアといえば、俺の愛人になりたい……などと爆弾発言を残していった少女だが、何をしに来たのだろう。
宣言通り、愛人になりに来た……とかでは無ければよいのだが。
「とりあえず、誤った情報だっていうのが分かって安心したけど……その、エッチな事はしたのよね?」
「う……す、すまん」
「別に良いんだけど、また天使族さんたちみたいに、レアな種族が大集合したりしないわよね?」
「そ、それは大丈夫じゃないか? 人魚族は空を飛んだりしない……というか、むしろ海や川しか移動出来ない訳だし」
「なるほどね。わかった。アレックスから直接話が聞けて良かった。じゃあ、私は家に戻って安静にしているけど、無理し過ぎないようにね」
「あぁ、ありがとう」
エリーが俺にキスして、家に戻って行くと、
「アレックスー!」
入れ替わりでネーヴが走って来た。
「メイリン殿より話は聞いた。人魚族の少女を娶ったとか」
「ま、まぁ……間違っては居ない、かな」
「という事は、新たなスキルを得たのだな? 早速、シェイリー殿の所で新たに得たスキルを教えてもらおうではないか」
「えっ!? ネーヴ!? 急にどうしたんだ!?」
ネーヴがシェイリーの所へ行くなんて珍しいと思うのだが、強引に手を引かれてシェイリーの所へ。
シーサーには待っていてもらい、ネーヴ、ソフィ、熊耳族の少女に俺の四人でシェイリーの所へ行って事情を話すと、
「よし、わかった。というか、ネーヴの気持ちも分かった。さぁアレックスよ。いつも通り、スキルの事を知りたければ、我らと愛し合うのだっ!」
やっぱり、この展開に。
シェイリー相手に抵抗しても無駄だと分かって居るので、素直に分身スキルを使ったのだが、ふと疑問が湧いたので聞いてみる。
「あれ? ネーヴの気持ちって?」
「アレックスよ。女の気持ちを察してやるのだ。いつもアレックスは風呂で皆と楽しんで居るが、温かい風呂に入れぬネーヴは寂しく思っているのだ。ここなら思いっきり出来るし、沢山愛してやるのだ。我は分身で良いぞ」
そういう事か。
確かにネーヴは、後半組の風呂に混ざっていないし、その後はフィーネに眠らされるし……このまま放っておいたら、ケイトたちみたいに暴走していたかもしれないのか。
ウララドの街の三人は大変な事になったからな。
理由を付けて俺をシェイリーの所へ連れて来るくらいだから、ネーヴも限界が近かったのかもしれないと思い、しっかり満足させる事に。
それから暫くして、かなり乱れたものの、今は抱きつきながら甘えてくるネーヴの頭を撫でていると、シェイリーが口を開く。
「さて、約束通りアレックスが新たに得たスキルを教えてやろう。かなり良いスキルを得たようだぞ。……不老長寿(弱)だ」
「不老長寿!? え!? えぇっ!?」
「いや、効果は弱だから完全に不老という訳ではないぞ。そうだな……ざっくりだが、普通の人間族の倍くらいの寿命になるのではないか? とりあえず、我や天使族の少女など、長寿の者を遺して逝って欲しくはないからな。この手のスキルは積極的に集めていくべきだな」
シェイリーはサラッと言って来たが、寿命が人間の二倍って……えぇぇぇっ!?
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