第87話 たまには真面目に開拓

「おぉ、やるじゃないかゴレイム」


 シェイリーが社へ帰った後、ノーラに人形たちの家を作ってもらうため、先ずはゴレイムと共に森へやって来た。

 ニナに頼んでゴレイム用の大きな斧を作ってもらったのだが、その斧のおかげか、木を切り倒し、東エリアへ運ぶまでをゴレイムが単独で実施出来る。

 しかも、動作はそれほど速くないものの、一度に数本の木を運べるので、結果的にゴレイムに任せた方が早そうだ。


「メイリン、ゴレイムを頼む。あと、必要以上に木を切り過ぎないように注意してくれ」

「はい、分かりました。ですが、旦那様はどうされるのですか? 妾と一緒に居てくださらないのですか?」

「東エリアの壁の拡張をしてくるよ。壁の外の魔物は聖属性以外効かないから、俺が居ない状態での拡張は禁止にしているからさ」


 とはいえ、ニナの人形が鉄の剣を沢山作って、順次俺の人形たちに渡していってくれているし、モニカが戦闘訓練をしてくれているので、そのうちシャドウ・ウルフにも勝てそうな気はするが。


 東エリアに到着すると、五組分の家や畑を増やす為、リディアや人形たちと協力し、かなり広めに拡張していく。

 ただ、広くする分時間がかかり、途中でシャドウ・ウルフが来てしまったので、俺がサクッと倒すと、


「あ、アレックス様!? い、今のは、あの地獄の魔物、シャドウ・ウルフでは!?」


 人形たちが暮らす東エリアを見て回っていたサクラさんがやって来た。


「ん? 地獄の魔物……っていうのは知らないけど、シャドウ・ウルフには違いないが?」

「あの魔物を一撃で……流石はメイリン様が夫と認めたお方。アレだけでなく、戦闘も強かったのですね」

「……あの、サクラさん。どうして、そんなにくっついて来るんだ?」

「アレックス様。拙者の事はサクラとお呼び下さい」

「……サクラ。そんなにくっついて居ると……」

「ムラムラしちゃいますか? 宜しいですよ? メイリン様には黙っておきますので」


 何を勘違いしたのか、サクラが胸を押しつけて来た所で、


「ちょっと、サクラさん! そういう事をするのは夜にって、さっき話したばかりじゃないっ!」


 人形たちに魔法を教えていたエリーが走って来た。


「確かに昼食の際、そのような話となったが、仕方ないではないか。アレックス様の勇姿を目の当たりにして、濡れてしまったのだから」

「何の話よっ! ……いや、説明しなくても良いわよっ!」


 よく分からない事を言うサクラをスルーし、壁の拡張を終える。

 しかし、東エリアは本当に広くなったよな。

 まぁ俺たちよりも人形たちの方が多いし、小さいとはいえ、一組ずつに家や畑を作っているからな。

 あと、人形たちの家がある北側――北東エリアは壁だけ広げ、何も無い空き地にした。

 ここは訓練場という事で、モニカやエリーが人形たちに戦闘技術や魔法を教える場所となっている。

 最近では人形同士で訓練をしているみたいだし、筋力は無いものの、結構強くなっているようだ。

 

 だが、暫し訓練の様子を見てみると、俺の人形は守りのエキスパートであるパラディンのはずなのに、攻撃はともかく防御がおろそかだった。


「よし。防御の基礎を教えよう」


 盾は無くとも、剣を用いた防御の術もあるからな。

 訓練場へ行くと、鉄の剣で攻防……というか、互いに攻め合っている二体の俺の人形に声を掛ける。

 三組目のアレスリーと四組目のアレフォに剣を使った攻撃の受け流し方や、ちょっとしたコツを教え、軽く模擬戦を開始。


「お、飲み込みが早いな。いいぞ。じゃあ次は、モニカに習った攻撃を見せてもらおう。俺は防御しかしないから、好きなように攻めてみろ」


 アレスリーとアレフォ、二人同時に攻めて来るように言うと、以心伝心と言った感じで、見事な連携攻撃を仕掛けて来る。

 これなら地下洞窟に入っても問題なさそうだ。

 だが、まだ俺が盾を使う程では無い。

 二人から放ち続けられる斬撃を軽く防ぎ続け、


「お父さんは、強過ぎます」

「僕たちの剣が届く気がしないんだけど」

「はっはっは。だがモニカに教わっただけあって、筋は良いぞ。このまま訓練を続ければ、防御特化の俺より、きっと強くなれるだろう」


 最後まで全ての攻撃を防いでしまった。

 子供相手だし、一撃くらい受けてやるべきだっただろうか?

 いや、でも訓練だしな。


「いつかお父さんに一太刀浴びせてみせますので、また稽古をつけてくれますか?」

「勿論だ。いつでも掛かって来い」


 そう言って、その場を離れると、次はリディアを誘い南側の開拓へ。

 お父さんと呼ばれるのは、流石に早すぎるかな? と思っていると、


「アレックスさんは、何人子供が欲しいですか?」


 リディアが微笑みかけてくる。

 と、とりあえず、そういう事は夜にするという事で、日暮れまで開拓を頑張った。

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