第183話 興奮するタバサ

 シェイリーの所で俺の新たなスキルが判明し、メイリンがそれぞれの人形を二体ずつ作成した所で、ツバキが話しかけてきた。


「アレックス様。メイリン様の人形たちは毛皮を繋ぎ合わせた物を着ておりますが、もしも布があるのでしたら、私が服を作りましょうか?」

「え!? 作れるの!?」

「我らの国の服で良ければ。あと、ニナ殿に裁ちバサミの作成をお願いしたいですが」


 話を聞くと、シノビのスキルではなく趣味に寄るものらしいが、何にせよ服が作れるというのは有り難い。

 一先ず、服に関してはツバキに任せる事にして、早速ニナにハサミを依頼する事に。

 それからメイリンを除いて、皆にはそれぞれの作業に移ってもらい、国印について相談をしてみた。


「国印ですか……確かに必要ですね。ニナ殿に作ってもらうとしても、そもそものデザインを考える必要がありますね」

「あぁ、そうなんだ。俺はそういったデザインなんて出来なさそうだから、メイリンに頼めるか?」

「ま……任せてください。私のセンスをお見せする時ですね。た、ただ、念の為に他の皆様からもデザインを募ってみます」

「すまないが、頼むよ」


 若干、困っていたようにも思えたので、メイリンも得意ではないなかもしれないが、皆に相談するのが良いのかもしれないな。

 続いて、先程思いついたスキルの活用の為、ネーヴの所へ。


「ネーヴ。首尾はどうだ?」

「アレックス。……そうだな。陣形や連携については順調だ。また、魔法攻撃班についても問題はない。しかしながら、私が近接戦闘を得意としておらず、モニカ殿の力を借りたいと思っていたところだ」

「なるほど。ならば、俺が協力しよう。その手の事に役立つスキルを得たんだ」

「スキルを得た? ふむ……一体どんなスキルを?」


 一先ず、ネーヴに自動行動スキルの事を話す。

 感覚は俺と繋がっているので、行動内容を変える必要があれば、遠慮なく言って欲しいと伝え、先ずは実際にやってみる。


「えーっと、子供に指導するくらいの弱さで、剣は使わず素手で……こんな感じか?」


 自動行動の設定を行うのは初めてなので、先ずは何となくの感覚で設定し、新たに呼んだ防御班を相手に戦ってもらう。

 防御班は、俺の人形が三体とリディアの人形が三体という、攻めて来る相手を止める事に特化した部隊だ。

 俺の人形がリディアの人形を庇う様にして立ち、三方向から俺の分身を囲む。

 一先ず、最初にネーヴが人形たちに指示を出しており、後は見守るだけだ。


「とぉっ!」

「たぁーっ!」

「石の壁っ!」


 俺の人形が木剣で攻撃し、リディアの人形が壁を出して守る。

 だが、俺の分身が木剣を片手で受け止め、素手で石の壁を殴って粉砕し……


「って、ストップ! ……おかしいな。子供相手の弱さにしたんだが……あんな威力で殴ったら、俺の人形でも大怪我を負うって」

「……アレックスは、素手で石の壁を粉々に出来るのか。流石だな」

「いや、そんなの出来ないって……たぶん。試した事はないけど」


 色んな魔物を食べている内に、筋力が上がっていたとか?

 いやいや、流石にそこまで凄い事にはなっていないと思う。

 とりあえず、自動行動を更に弱く設定し……うん、良い感じになったので、後はネーヴに任せて開拓作業に移る事にした。

 とりあえず、メイリンから石の壁を広げて欲しいと言われているので、人形たちと共に東エリアを拡張していると、


「アレックス様。人形からの報告で、小屋からアレックス様の名を呼ぶ声が聞こえて来るとの事です」

「あー、タバサだな。分かった。ここの作業が終わり次第、小屋に行こう」


 サクラが呼びに来たので、きっちり石の壁を閉じて、小屋へ向かう。


「アレックスさん! アレックスさんってば! 返事をしてくださいっ!」

「すまない。外で作業をしていたんだが……」

「作業をしていた……じゃないですよっ! アレックスさん! 一体何をしたんですかっ!?」

「それは、国の話……だよな?」

「そうですよっ! はっ……まさか、それ以外にもあるんですか!? フィーネちゃんを妊娠させてしまったとか、そちらで知り合った女性に手を出してしまったとか」

「え……いや、とりあえずフィーネは妊娠したりはしていない……ぞ?」

「では、そっちで知り合った人には手を出したんですねっ!? 例えば、スノーホワイトさんとか」


 スノーホワイト? ……あ、ネーヴの別名だったか。

 ネーヴには何も……うん、何もしていない。


「いや、何もしていないが、よくその名を知っていたな」

「知っていたな……って、独立国の公文書にその名前が書かれていましたけど。一体何があったんですか? どうして、魔族領の真ん中に、他国の偉い人が居るんですか? どうして独立国なんて話になったんですかぁぁぁーっ!」


 タバサが物凄く興奮しているが、何処まで話して良いのだろうか。

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