第48話 リディアとノーラとアレックス

 リディアに続いてノーラともキスする事になってしまったが、あくまでもリディアはエクストラスキルの為で、ノーラは無邪気に俺たちの真似をしただけだと、自分を戒める。

 そうでなければ、先程リディアの行為を俺への好意だと勘違いしてしまったように、同じ事をしてしまいそうだからな。

 とはいったものの、


「ん……。お兄ちゃん……もっと……」

「ノーラさんっ!? もうアレックスさんが光ったのですから、それくらいにして、代わって下さいっ!」


 ノーラが暴走気味なのだが、大丈夫か!?

 とりあえず、ノーラに一旦離れてもらい、リディアを制して考える。

 身体が光った時の感覚からして、これは新たな魔物を食べた時に発動するエクストラスキルで間違いないだろう。

 だが、何故舌を入れられると発動するんだ?


「あ……体液か」

「え!? 愛え……ど、どういう事ですか!? アレックスさん」

「ん? あぁ、俺の魔物を食べると強くなるというエクストラスキルなんだけど、どうやら魔物以外にも有効らしく、さらに唾液でも発動するみたいなんだ」

「あ、だ……唾液ですね。ビックリしました」

「そうだな。俺も驚いているよ。こんなスキルだったなんて」


 ただ思うのは、このスキル……強い魔物を食べればより強くなるらしいのだが、果たしてリディアとノーラの唾液の場合、どうなるのだろうか。

 それと、このスキルで一番強くなったと思ったのは、初めて発動した時……アサシン・ラビットを食べた時なんだよな。

 で、次いでオークキング。こっちはS級だし、妥当なんだけど、どうしてアサシン・ラビットが一番強くなったんだろうか。

 ……知らない内に、アサシン・ラビットの前に俺が何か食べていたのか?


「ねぇ、お兄ちゃん。もっとチューしよー」

「待った。とりあえず、エクストラスキルの発動条件が分かったから、もう大丈夫だぞ?」

「それはリディアお姉ちゃんの話でしょ? ボクはお兄ちゃんが好きだからチューしたいのー」

「いや、ノーラ……っ! 一旦落ち着こう。これで最後だ」

「……ふぅ。じゃあ今は、さっきので最後ね。また後でね」


 そう言いながら、ノーラが抱きついてきた。

 ……微妙に、これまでしがみ付いていた時よりも、顔が近い気がするのだが、一体どうしたものか。


「リディア。とりあえず、新しい畑に作物を植えて、小屋に戻ろうか……リディア?」

「わ……私も、アレックスさんともっとキスしたいですっ!」

「わっ! リディアお姉ちゃん!? 強引過ぎるよっ!」


 リディアと俺でノーラを挟み込む形になりながら、キスをされてしまい、ノーラが苦しそうなので一旦離れる。


「リディア。さっきも言ったが、スキルの事なら……」

「お兄ちゃん、鈍過ぎるよー。リディアお姉ちゃんも、ボクと一緒で、お兄ちゃんの事が大好きなんだってば」

「えぇっ!? そ、そうなのか!? だが、さっきは……」


 ノーラの言葉に驚きつつ、リディアに目を向けると、


「さ、さっきのは恥ずかしかったからです。わ、私はアレックスさんの事が好きなんですっ!」


 顔を真っ赤に染めたリディアが再び走り寄って来た。

 それを予想していたかのようにノーラが俺から離れ、リディア思いっきり抱きつかれながらキスをされ、


「ねー、二人とも。そろそろ、小屋に戻ろうよー。あと、ボクもお兄ちゃんの事が好きだから、リディアお姉ちゃんが独り占めしちゃダメだからねー?」


 暫くしてから、ノーラが俺とリディアの間に入って来る。


「とりあえず、収拾が付かないし、ノーラの言う通り、一旦戻るか」

「……はいっ! アレックスさん」

「うん。ごはん、ごはんー」


 来た時と同じように、ノーラが俺にしがみ付き、リディアと手を繋いで小屋に向かって歩きだす。

 ……しかし、今回の件もあってか、ノーラはリディアと親しくなったように思えるが、これで良いのだろうか。

 普通は、その……男女は一対一というか、少なくとも俺はそうあるべきだと思っているのだが、二人はどう思っているのだろう。

 そんな事を思っていると、


「あ、言い忘れてたけど、ボクはお兄ちゃんを独占しようとは思ってないからね? ボクは、大好きなお兄ちゃんと一緒に居られればいいんだもん」

「え、えーっと、私は……いえ、だ、大丈夫です。ノーラさんと三人で、一層アレックスさんとの仲を深めていければと……」


 俺が悩んでいるように見えてしまったのか、ノーラやリディアから先に言われてしまった。

 一先ず、経緯はどうあれ、二人は俺を好きだと言ってくれているのだから、俺は全力で二人の想いに応えていこう。

 一応、俺の心も決まったところで小屋へ着き、


「おかえりなさいませ。ご主人様。先ずはお食事に致しますか? それとも、お風呂ですか? もしくは、この私を……おふっ!」

「どうして、そこでモニカさんは脱ごうとするのよ! ふぅ……あ、もうお昼ご飯出来てるわよ」

「おかえりー! お兄さんたち、遅いよー! 見てみてーっ! エリーたちのお陰で、いっぱい鉄が手に入ったんだー!」


 モニカ、エリー、ニナの三人に出迎えられる。

 うん……エクストラスキルの話、どうしよう。

 リディアとノーラの事を考え過ぎて、スキルの事をどう説明するか、少しも考えていなかったよ。

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