第701話 モニカの隠れ場所
ひとまず隠れんぼうは終わりだとディアナに告げ、視点を各分身に順に切り替えていくと……居た!
モニカが俺の分身を二体と共に、どこかの家に居る。
ここはどこだ?
というか、勝手に人の家に入って何をしているんだよ。
「ディアナ。この村で無人の家は何軒くらいあるのだろうか」
「うーん……わかんないよー! 誰かに聞いてみるねー!」
ディアナが豹耳族の人に話を聞き、対象の家を一軒ずつ回って……
「~~~~っ!」
声を殺したモニカの声が聞こえてきた。
「ふむ。皆で同じ場所に固まるのではなく、個別に隠れてするのが正解だったのじゃ」
「いや、正解じゃないから。そもそも、こういう事をする為ではなく、復興の為に……っ!」
何度目かの結衣の頑張りによって、ようやくモニカを見つけたので、分身を解除する。
「ふぅ……ご主人様。ありがとうございました。ディアナ殿も、ありがとう」
「ん? ……あ、思い出した。そういえば、モニカにウチの家で休んで良い? って聞かれて、いいよって言ったんだったー……でも、休むって言いながら汗だくだけど、何をしていたのー?」
「ふふ……とっても良い事だ。この半壊で、外から見られるかもしれず、声が誰かに聞かれてしまうかもしれないというスリリングな状況がとても良いスパイスでな。もちろん、ご主人様のアレがあってこその話だが」
「にーに。モニカの話が難し過ぎるよー! 何を言ってるのー?」
ディアナが眉をひそめながら俺を見つめてくるが、俺に聞かれても困るのだが。
「それより、そろそろ村も片付いただろう。最後に、ガレキを捨てた穴を埋めて、白虎探しを再会しようか」
分身たちに掘った穴を埋めてもらい、全ての分身を解除すると、豹耳族の村長だという男性がやってきた。
「アレックスさん。この度は本当にありがとうございました」
「ディアナの故郷ですし、力になれて良かったです」
そう言うと、頭を下げていた村長が顔を上げ、ディアナを見つめる。
「……ディアナは、村には帰って来ないのかい?」
「うーん。家に誰も居ないもん。それなら、にーにと一緒に居るー」
「そうか……残念だ。村としては、人口を……こほん。ではアレックスさん。ディアナを頼みます」
うーん。豚耳族の村といい豹耳族の村といい、女性が消えてしまった村は危険な兆候があるな。
白虎の救助も重要だが、ミオ曰く太陰の力でこうなっているらしいので、同じ様な村を出さない為にも、こちらも調べないといけなさそうだ。
「ところで、俺たちは白虎と魔族領を探しているのだが、何か知っている事はないだろうか」
「白虎様ですか。残念ながら、我々は白虎様にお会いした事はありませんが……より近しい虎耳族なら何か知っているかもしれません。ただ、我々の村を襲った事もありますし、話が聞ける状態にあるかはわかりませんが」
残念ながら、恨みをもっている虎耳族のところへ案内は出来ないという話もあったが、村の場所は教えてくれた。
ただ、あくまで以前の虎耳族の村の場所であり、今は何処に住んで居るかはわからないという話だったが。
「ありがとう。何か手掛かりが得られないか、ひとまず行ってみる事にするよ」
「今はただの廃墟ですが、あの外道な虎耳族の村があった場所です。お気をつけて……そして、ディアナの事をよろしくお願いいたします」
「あぁ。ディアナは俺が責任を持って守ろう」
一旦、ディアナを故郷に帰す事は保留という事にして出発しようとしたのだが、村長から待ったが掛かる。
「す、すみません。ディアナは家族が……父親が帰ってきたら、この村に戻ってくるのですな?」
「え? うん。パパが居るなら……」
「わかりました。では、我々はこれから全力でディアナの父親捜しを行います。その後、父親が見つかった後にアレックスさんと連絡を取る手段はありますかな?」
連絡を取る方法か。
カスミたちが居てくれたら、何かしら方法があったのかもしれないが、西大陸には連れてきていないからな。
「ファビオラ。西大陸で郵便なんかは……」
「うーん。私の故郷辺りだと、駱駝耳族が定期的に回って郵便物なんかも運ぶんですけど、この辺りは無さそうかなと」
村長にも聞いてみたものの、やはり郵便などといった仕組みはないらしい。
「どうしたものか。白虎を助けた後で良ければ戻って来るが……」
「それではいつになるかわかりませぬ。我々としては、一刻も早くディアナに村へ戻って来てもらいたいのです」
「ひとまず南へ向かうから、そっちにある街や村で俺を探してもらうしかないかな」
「うむむ。名前だけでは探すのは困難ですし、せめて似顔絵でもあれば……」
「似顔絵……は無理だが、これはどうだろうか。≪偽造≫」
天空から得たスキルで、俺そっくりの動かない人形を作り出す。
これなら、俺と感覚が繋がっていないし、放置しておいても大丈夫だろう。
「おぉ、ありがとうございます。では、ディアナの父親を見つけた後、この像を基にアレックスさんを捜す事にします」
何とか村長が納得してくれたので、改めて虎耳族の村があった場所へ出発する事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます