挿話128 アレックスを待つマジックナイトのモニカ

 フェリーチェ殿とノア殿、そしてプルム殿の分裂プルム・フォーと共にリス耳族の村へ向かうべく、西へ。

 北の大陸のほぼ真ん中辺りにある、ワブルトンの街へ来た所で、突然ノア殿が空を見上げ、キョロキョロと周囲を見渡し始めた。


「ん? ノア殿。一体、どうしたんだ?」

「あ、メイリンママけいゆで、ユーリちゃんから、れんらくがあって、アレックスパパがくろいくもをさがしてほしいって」

「ご主人様が黒い雲を探している? ……あれではないか?」

「ホントだー! ちょっとまってね。メイリンママにつたえるからー!」


 このメイリン殿のスキルは、本当に凄いと思う。

 こうして別の大陸に居るというのに連絡が取れ、遠く離れたご主人様とやり取りが出来るのだからな。

 まぁ私一人なら、転移スキルで移動も出来るのだが……今の転移先は六合殿の教会だからな。

 くっ! 転移先がご主人様の居場所なら、この身体の疼きを止められるというのに。

 少しすると、ノア殿の話が終わったらしく、再び歩きだす。


「ん? ご主人様の黒い雲とは何だったんだ?」

「えっとねー、アレックスパパが、くろいくもをさがしているらしくてー、ここにあるよー! って、いったら、ここへきてくれるんだってー!」

「な、何だと!? そんな大事な事を……い、いや、そんな事よりも、遂に会えるっ! ご主人様に会えるぅぅぅっ!」

「モニカさん、よかったねー!」

「うむ。この数日間、どれだけ辛かった事か」


 なまじ、ご主人様と姿が殆ど同じプルム・フォー殿が居て、しかもフェリーチェ殿と至るところで交わっているから、お腹の奥が熱くてたまらなかった。

 だが、私の身体はご主人様の為のもの。

 ご主人様の分身スキルのように、感覚が繋がっておられて、分身を悦ばせる感覚がご主人様にも伝わるのであればともかく、そうでなければ似て異なる者だと、交わらなかった。

 その為、もう欲求不満が凄くて……だけど、ご主人様が来てくれるのであれば、この身体の疼きから解放されるっ!

 やっと……やっとだぁぁぁっ!


「そ、それで、ご主人様はいつ頃来られるのだろうか」

「そこまではわからないけど、すぐにでも、こっちへむかうみたいだよー!」

「おぉぉ! な、なんと……ではまず、宿を押さえなければ! あと服を……特に下着を新品に替えなければ!」


 この旅の間、村の宿で自ら服を洗濯しながら過ごしてきたが、久々にご主人様とお会いするのだ。

 私の身体を引き立たせる最上の服を用意しなければっ!


「フェリーチェ殿! 聞いての通りだ。今日はこの街で最高の宿に泊まり、服を買いに行くのだ!」

「なるほど! やはり、アレックス様の分身……同時に三本、いや四本というのを是非してみたいし、早速宿を探そう!」


 ふふ、分身はいくらでもフェリーチェ殿に譲ろう。

 私はご主人様ご本人を……いつもリディア殿やレヴィア殿に取られていたからな。

 私だって、ご主人様本人とあんな事やこんな事がしたいのだっ!

 それから、街の人たちに話を聞き、この街で一番の宿へ来たのだが、


「すみません。当日のご宿泊は受け入れておらず、事前にご予約いただいたお客様しか泊まれないのです」

「そ、そこを何とかならないだろうか」

「申し訳ございません。他のお客様の手前、一部の方だけを特別待遇という訳にはいかないのです」


 残念ながら、門前払いにされてしまった。


「くっ! 一体どうすれば……」

「あの、モニカさん。私は、その辺の物陰でアレックス様と……というのでも燃えるのですが」

「それは、わかる。いつ誰に見られるか分からないという緊張感と、屋外という開放感という最高の状況ではあるのだが、それだとご主人様に断られてしまうのだ」

「それは……非常に残念です。では逆に、もの凄く狭くてボロい宿の一室で、くんずほぐれつ分身たちと密着し合うというのはどうでしょうか」

「それだっ! よし、今度は逆に一番酷い宿を探そう!」


 ボロい宿の中に、最高の女である私が居るというギャップで悦んで貰うのだ!

 街中を探し、馬小屋という最悪の宿を見つけ……こんな、殆ど屋外と変わらないような場所でご主人様と出来ると考え、物凄く燃えて来たっ!


「モニカさん、見てください。ベッドがワラですよ! 壁なんて、あって無いようなものですし、私たちの声がきっと街中に……最高ですっ!」

「よし! 次は聖母と見間違えるのではなかという、最高の服を……ふふふ。このギャップでご主人様を……」


 フェリーチェ殿と共に、ご主人様を迎える準備をしていたのだが、


「あ、フェリーチェに、モニカ。メイリンママけいゆで、ユーリちゃんからでんごんだけど、まぞくりょーっていうのが、あっちでみつかったから、もうこっちにこないって」

「……モニカさん。私、ここでプルム・フォーさんと泊まりますけど、モニカさんはどうします? 一緒にします?」

「……うわぁぁぁっ! ご主人様のバカぁぁぁっ!」


 ノア殿の言葉で絶望する事になってしまった。

 期待させて、落とすのはダメですよ、ご主人様。

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