第174話 襲撃
「アレックスはん。一先ず結果が出たで」
レイが、俺の魔法人形のアレを使って薬が作れるかどうかを調べると言い、一体の人形が生贄……もとい、頑張ってくれたそうだ。
で、今はその人形のパートナーに慰めてもらっているのだとか。
……余程過酷だったのだろう。
「結論から言うと、アレックスはんの人形のアレでも、薬は作れるけど、アレックスはんので作った時よりも、効果は落ちてまうわ」
「なるほど。じゃあ俺の人形は連絡役かな」
「いやいや。アレックスはんのには劣るけど、それでも普通に薬を作った時よりも効果は高いねん。これはこれで、有効活用させてもらうで」
これはつまり、単に薬師部隊の犠牲者が増えただけと言う事か!?
くっ……せめて、被害に遭う人形が楽しいと思える工夫をしなければ。
新たな材料が手に入って喜ぶレイと、俺とメイリンの三人で話し合いを行い……とりあえず今の方法は却下となった。
レイの人形に慰めてもらっている俺の人形が、メイリンに泣きついているそうだ。
話し合いの結果、各人形の家に専用の容器を配り、俺の人形が各パートナーに協力してもらってアレを出し、数日に一回で良いので提供してもらうという事になった。
俺の人形は五十体程いるので、それでも十分な量が確保出来るだろうという事と、流石に一人が攻められ続けるというのは辛いだろうしな。
とりあえず、ニナたち鍛冶部隊に密閉出来る小さな容器を作ってもらう為、新たに南東エリアに作った生産エリア、鍛冶工房へ。
といっても、ニナは鍛冶魔法で鉄器を作るので、工房というより倉庫に近いけど。
「ニナ、ちょっと良いか?」
「うん、いいよー! お兄さん、どうしたのー?」
「ちょっと頼みたい事があってさ」
レイから聞いた、アレを回収する専用容器の形をニナに伝え、快諾してもらったのだが、
「作れるんだけど、そんな小さな器って、何に使うの?」
「れ、レイに頼まれたんだよ。薬を作るのに使うそうだ」
「そうなんだー。こんなに小さいのを沢山……薬を作るのって、やっぱり大変なんだねー」
い、言えない。
アレを入れる為の容器などとは。
まぁ嘘は言っていないので、良しとしよう。
一先ず、ニナに依頼を済ませたので、俺も開拓作業に移ろうとしたところで、
「旦那様っ! 訓練場に居る子たちから、緊急連絡ですっ! ネーヴ殿との訓練中に突如魔物が現れ、交戦中との事っ!」
「訓練場に魔物がっ!? とにかく、急いで行ってくる!」
想定外の事態に。
ここで魔物が現れたという事は、シャドウ・ウルフが壁を越えて来たという事だろうか。
仮にそうだとしたら、今訓練場に居るのは攻撃魔法班だから……聖属性魔法が使えないエリーの人形たちだ。
俺の人形が一体だけ居るものの、どれだけ耐えられるか。
全力で走り、訓練場へ到着すると、
「≪雲雀殺≫」
ネーヴが何かのスキルを使い、訓練場にだけ大雪が降っている。
その雪の外側で、エリーの人形たちが中に向かって雷魔法を放っていた。
「ネーヴ。状況は!? 突然魔物が現れたと聞いたのだが」
「ま、魔物と言われれば魔物のようなものだが、何と言えばよいか……」
何故かネーヴの歯切れが悪いと思っていたら、真っ白な雪の中から、大きな影が飛び出して来る!
「≪ディボーション≫」
すぐ様パラディンの防御スキルを使用し、ネーヴや人形たちを守ると、
「ネーヴっ! 何故分からないっ!」
大声で叫ぶ大男が現れた。
「≪シールド・チャージ≫」
「ぐっ……何だ!? この力はっ!?」
「≪サンダーボルト≫」
ネーヴに迫る大男を盾を使って吹き飛ばすと、すかさずエリーの人形たちが雷魔法で追い討ちをかける。
だが、
「≪締雪≫」
大男が白い壁を生み出し、雷魔法を防ぐ。
なるほど。これで魔法攻撃を防いでいたのか。
一旦、人形たちに魔法を止めてもらい、先ほど同様に盾で突撃して壁を壊すと、魔法攻撃を再開してもらう。
人数が多い分、手数でこちらが上回るので、防御が不利だと感じたのか、再び大男がネーヴに向かって行こうとする。
それを止める為、剣を抜いたのだが、
「≪ホーリー・クロ……」
「アレックス! ま、待って欲しい。彼は……」
ネーヴが俺に抱きつき、攻撃スキルを止められてしまった。
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