第787話 人魚族の棲家へ行くメンバー選定

 マリーナとプルムが落ち着いたところで、レヴィアが目を覚ましたので、モニカの事情とこれからの事を説明する。


「……わかった。人魚族の棲家へアレックスを連れて行く」

「いつもすまないな、レヴィア」

「……大丈夫。お礼は身体で払ってもらう」


 いや、その発言はどうなんだ?

 とはいえ、陸路で行くには厳しい場所なので、レヴィアに頼るしかないんだが。


「アレックスよ。すまぬが、今回は我は白虎の所にいようと思うのじゃ」

「あー、そうだな。病み上がり……という表現が正しいかどうかはわからないが、まだ白虎は本調子ではないだろうし、他の魔族に狙われるような事があったら困るからな」

「うむ。すまぬのじゃ」


 シェイリーは元より、ランランの傍にもソフィやが居るし、白虎の傍にも誰かが居た方が良いだろう。


「うーん。ミオは守り主体だろ? それなら私も付き合うよ」

「え? 待って欲しいですの。ザシャさんが行くなら、私も行かなければなりませんの」


 続いてザシャとシアーシャも白虎のところへ。

 ザシャはともかく、シアーシャは陽の光が苦手だし、白虎のところなら丁度良さそうだな。


「という事は、人魚族のところに行くのは誰になるんだ? レヴィアは必須として……」

「マリもアレックスと一緒がいい。美味しいの欲しい」

「それならプルムもー! プルムもいっぱい食べるー!」


 えーっと、マリーナとプルムはアマゾネスたちが引いているから、ほとぼりが冷めるまで暫く連れ出しておこうか。


「はいはーい! 私たちも行くよー! 泳ぎは得意だもん!」


 そう言って、海獺耳族のトゥーリアとルクレツィアが近付いて来た。

 あと、グレイスは必須だよな……と思っていると、そのグレイスから待ったが掛かる。


「アレックス様。人魚族のところへ行くにあたり、一つ問題があります」

「問題? レヴィアが居てくれれば大丈夫な気もするんだが」

「その通りなのですが、レヴィアさんに運んでいただく船がもうボロボロなので、耐えられないかと」


 あ……そうだった。

 今は水に浮かせて天后の力で転移させてもらうのが精一杯で、レヴィアが引いた途端に大破してしまいそうだ。

 何か船に代わる物が必要だが、前もニナとノーラが数日掛けて作ってくれたから、今から船を用意するのは無理か。

 確か、シーナ国の港町クワラドで船が売っていたような気もするが、物凄く高かったんだよな。

 とはいえ、今は物資を空間収納に格納出来るから、大きな船は必要ない。

 それなら……いっその事、買うか。クワラドなら魔法陣で行けるからな。

 そう思ったところで、モニーから待ったが掛かる。


「父上、少々お待ちを。実はニアとノースからご報告があるのです。こちらへ来てください」


 ニアとノースから? アマゾネスの村に滞在してくれているニナとノーラの人形だが、何だろうか。

 モニーに案内されてついて行くと、海へ降りる階段の先に、今までよりも一回り大きな船が泊めてあった。


「パパー! メイリンママからたのまれて、あたらしく、つくったのー!」

「すごいでしょー! ほめてほめてー!」

「おぉ! 二人共、大変だっただろ。ありがとうな」


 しゃがみ込んで、ニアとノースを抱きしめると、二人がギュッと抱きついてきて……って、しゃがみ込んだ俺の背後から、誰かが抱きついて首を舐めてくるんだが。


「父上の隙だらけの首……美味しい」

「おい、モニー……」

「こほん。ニアとノースが数日掛けて頑張っていたのです。もっと褒めてあげてください」


 いや、うん。二人は褒めるけどさ。もう今更どう取り繕っても、恰好は付かないぞ? モニー。

 とりあえずモニーには背中から降りてもらい、ニアとノースを抱きかかえたまま皆のところへ。

 暫く二人を抱っこしたまま、出航準備を進めていると、


「なるほど。アレックスは小さい子が好き……つまり、マリも好き。アレックス、マリも抱っこー!」

「……それならレヴィアたんも。アレックス、抱っこ」

「でしたら、私も当てはまりますね。父上、抱いてください」


 マリーナとレヴィアが何か言っていたが、今はニアとノースを褒める時間だから、後にしてもらおう。

 二人はこの後も一緒に行動する訳だし。

 あと、モニーは一人だけ言葉がおかしいので、ちゃんと言葉の意味を学ぶように。

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